Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
ぴあ 総合TOP > 人間椅子・鈴木研一が最新作を語る「ハードロックはリフが命だけど、リズムひとつで別の曲になる」

人間椅子・鈴木研一が最新作を語る「ハードロックはリフが命だけど、リズムひとつで別の曲になる」

音楽

ニュース

リアルサウンド

140818_ningenisu_a.jpg写真左より、鈴木研一(Ba、Vo)、和嶋慎治(Gu、Vo)、ナカジマノブ(Dr、Vo)

 音楽性を深化させながらハードロック一筋に突き進み、今年、デビュー25周年を迎えた人間椅子。ニューアルバム『無頼豊饒』のリリースを記念し、前編の「人間椅子・鈴木研一が影響を受けた10曲『2010年代も真ん中なのに、70年代HRに惹かれちゃう』」では、バンドを代表して鈴木研一に、これまでの人生で最も影響を受けた10曲を挙げてもらった。後編となる今回も同じく鈴木研一のルーツを探りつつ、最新作『無頼豊饒』について深く語ってもらった。

「ハードロックはリフが命だけど、リズムひとつで全然別の曲になる」

――前作『萬燈籠』は人間椅子のハードな側面が詰まったアルバムでしたが、ニューアルバム『無頼豊饒』は、変拍子の多用もあり、さらに突き進んだ内容になりましたね。

鈴木:8ビートの気持ち良さもあるけど、変拍子は実は気持ちいいんだよっていうのを味わえると思います。今まで人間椅子を聴いてた人も、変拍子の新鮮さがあるんじゃないかな。前から変拍子はよく使ってたけど、特に今回は前面に出したので。

――変拍子を多くしたきっかけは?

鈴木:和嶋くんが、前のアルバムを作ったあとに“次はプログレっぽくしたい”って言ってたんですよ。和嶋くんがプログレっぽいことをしたいって相当難しい曲になるだろうなと思ったら、案の定難しかった。俺、今だに2人の素晴らしいリズム感についていけないところがあるんすよ(笑)。ここ、どうやってリズム取ってるんだろう?って確認しながら練習してますから(笑)。

――(笑)。ちなみに演奏で一番難しかったのはどの曲でしたか。

鈴木:1曲目の「表徴の帝国」ですね。実は三拍子だけど、そう聴かせないような譜割になってるんです。どの曲も変拍子に聴こえるけど、実は大元のリズムは簡単なんです。それを変拍子に聴かせるように、和嶋くんがヘンなリズムでギターを弾いてるんです。なのでよく聴いて、“なんだこれ四拍子なのか”って発見してもらうのも面白いかなって。

――全体をまとめて言うと、リズムのアルバムなのかなと思いました。

鈴木:そうですそうです。ハードロックはリフが命だけど、リズムひとつで全然別の曲になるんですよね。ベースに関して言えば、リズムを作るとき普通にしないで、ちょっとひねってカッコよくしようというのを考えました。

――ベーシックな話ですが、人間椅子の曲作りの流れを聞かせてください。

鈴木:和嶋くんの曲は、できたものを俺らが練習して仕上げていくんです。あと、俺と(ナカジマ)ノブの曲は、リフをこうしたいってとこから3人で作り上げていくんです。

――もっと原点の話で、鈴木さんのベース、ボーカルのスタイルのルーツも聞かせてもらえますか。

鈴木:ベースはやっぱ(ブラック・サバスの)ギーザー・バトラーが大きくて、動きは(キッスの)ジーン・シモンズのつもりなんです。

――それで足を開いて演奏してるんですね。

鈴木:そうなんです。声を“ウッ”ってやるのもジーンの影響ですね。自分としてはちょっと(シン・リジーの)フィル・リノットも入ってるかなって。

――語りっぽい歌い方などは通じるところがありますね。

鈴木:あと、低い音域でメロディが上下するところですね。なので、俺の歌と演奏は、3人の要素でできてます(笑)。

140819_ningenisu_suzuki.JPG

 

「A級バンドも好きだけど、今ひとつ突き抜けないB級バンドがすごく好きなんです」

――(笑)。では、今回鈴木さんが作曲した4曲について聞かせてください。まず「地獄の料理人」はヘヴィなリフで突き進んでいくナンバーです。

鈴木:これは俺の好きなパターンの曲ですね。どうしても“ジャンジャカジャンジャカ”ってフレーズが好きで作っちゃうんですよ(笑)。俺は“ジャンジャカジャンジャカ”にとらわれてる男なんです(笑)。これはマーシフル・フェイトがよく使うパターンなんです。なんか、このアルバムはヨーロッパの人が好きだと思うなぁ。

――コアなメタルリスナーのいる北欧でウケそうですね。

鈴木:俺らデンマーク行ったら、絶対ウケると思うんすよ。行ってみたいです、デンマーク、ベルギー、フィンランドとか。フェスの前座とかで使ってくれたらなって(笑)。

――あと、ブリブリのベースからスタートする疾走感たっぷりな「生まれ出づる魂」は?

鈴木:これは、(モーターヘッドの)レミーを意識して作ったんです。レミーとフィル・リノットを足して2で割ったような曲です(笑)。2人が大好きでできてしまった曲ですね。

――レミーは病気から復活してライブをやり始めて、9月にはモーターヘッド主催の『Motorboat』って船上フェスツアーをやるそうです(笑)。

鈴木:それ面白い!(笑)。レミーってすごい適当じゃないですか。『極悪レミー』って映画見たら毎日スロット打ってて。いつもパチンコ打ってる俺と同じだなって。

――アハハハ(笑)。

鈴木:でも俺分かるけど、あれ、打ちながら曲考えてますよ。俺もパチンコやってて音ガンガン鳴ってるのに、なぜか良い曲が浮かぶんです。浮かんだ曲を外出て電話に録音してっていうので、いつも俺は作ってます。

――なんと、ただ遊んでるだけじゃないと。

鈴木:そう。たぶんすごい集中してるから、心が研ぎすまされてるんですよ。自分を正当化してるわけじゃないですよ(笑)。

――なるほど(笑)。では曲に戻りますが、「ミス・アンドロイド」はタイトなリフの刻み感と、スライドギターのソロが印象的な曲です。

鈴木:俺はA級バンドも好きだけど、アトミック・ルースターとか今ひとつ突き抜けないB級バンドがすごく好きなんです。で、突き抜けない感じで作ろうと思って、これができたんです。真ん中のリフは、和嶋くんに“ウィッシュボーン・アッシュみたいで良いね”って言われて、ツインギターのハモりにしたんです。最後は無理矢理くっつけたような展開だけど、和嶋くんのスライドギターを入れたんです。実は和嶋くん、スライドギターがすごく上手いんです。あんまり弾かないから、これでみんなに聴かせられて良かった。

――そして「がらんどうの地球」は、うねりのあるリフと跳ねたビートが映える楽曲です。

鈴木:これは思いっきり俺のサバス好きが出ちゃった曲ですね。4枚目(『ブラック・サバス4』)の「アンダー・ザ・サン」に似ちゃってるけど、あの曲が好きすぎてこうなっちまいましたってところですよ(笑)。でも、できあがったら結構違う感じになって良かったです。

人間椅子「無頼豊饒」 ダイジェスト

「俺は一生かけてサバスの「パラノイド」や「CHILDREN OF THE GRAVE」に匹敵するような曲を作りたい」

――では、鈴木さんの楽曲以外についても聞かせてください。和嶋さん作曲の「迷信」は、スラッシュメタル的なスピード感が強烈ですね。

鈴木:これ、今回のおすすめ曲です。たぶんライブの最後に持ってくると思います。でも最初、メロディのない時点ではメタリカみたいなリフで、どうやって形にするのかな?って感じだったんですよ。でも、和嶋くんがリフと全然違う感じの歌メロ乗せたら、すごく良くなっちゃった。リフの固まりみたいだけど、最後に良いメロがついたことで急に株が上がりましたね。

――「悉有仏性」のツインリードのリフもインパクトあります。

鈴木:俺の中では、思いっきりユーライア・ヒープの世界だと思ってるんです。重ね録りの素晴らしさみたいな。メインテーマみたいなギターソロは、ギター4本入ってます。和嶋くんがずっとブースに入ってて、ニコニコして“ギター4本重ねた”って出てきて(笑)。聴いたら、やっぱすごかったなぁ。

――「宇宙船弥勒号」はドラムのナカジマノブさんの作曲ですが、サイケ感のあるロックンロールですね。

鈴木:ノブは今までもリフを持ってきてたけど、毎回俺らに却下されてたんです。ふと“こういうのもあるんだけど”って弾いたら、バッジーみたいで良いじゃんって採用になって。ノブは偶然作ったかもしれないけど、オレにしてみたらやられた!って感じのリフでした。

――最後の曲、「隷従の叫び」が、メトロームの音から始まって激しく世界観が変わっていく、まさにプログレ的なナンバーです。

鈴木:和嶋くんがドイツ製のメトロームを買って、それをテーマみたいにしてリズムを作っていったんです。サバス的でクリムゾン的で、和嶋くんの好きな2大バンドの要素が入ってる感じの曲ですね。これもね、変拍子がすごい難しかったです。ライブで再現できるように、一生懸命がんばってやっと弾けるようになりました(笑)。

――『無頼豊穣』はプレイするのが難しい曲が多そうですね。

鈴木:多いんです。だからこそ練習し甲斐があるんですよ。1回ごとに良くなっていくから。

人間椅子「なまはげ」(6/25発売AL「無頼豊饒」より)

――思うんですが、ハードロックやメタルって、人間力の究極をいく音楽かなって。今の時代、いくらでもプログラミングで音を速くできるけど、わざわざ人力で演奏するってところにグッとくるんですよ。

鈴木:それ、分かります。人間力だけに、その人となりがすべてプレイに出るんです。和嶋くんは几帳面だから、ソロにもその性格が出る。ノブはおおざっぱだけど、ハードロックには、それは良いことなんですよ。几帳面なドラムって、実はハードロックに向いてない。気まぐれで早かったり遅かったりするのがカッコいいんですよ。ライブを観に来てくれる人も、その日その日でどの曲も少しずつ違うからっていうのはあると思いますね。同期系で、打ち込みを聴きながらやってるとそうはならないから。良いとこが消えてもったいないと俺らは思っちゃうんですよね。

――お話を聞いてると、3人の絶妙な関係性が見えてくるなと。

鈴木:アルバム作ってるときもそうなんですけど、3人で上目指すって気持ちでやってるけど、競い合ってる感覚はあります。和嶋くんがこんなに良いリフ考えるならオレもがんばろうって思いますね。俺ががんばると和嶋くんはじゃあもっと良いもの作ろうってなるし、ノブも1曲くらいはなんとがんばろうってなる。あと、今だに上を目指す和嶋くんと、元々のを引きずる俺と、ちょうどいい具合に合わさってます(笑)。あんまり突飛に行きすぎちゃうと、お客さんも俺もついていけなくなっちゃうし(笑)。

――自然と3人のバランスが取れてるんでしょうね。さて、人間椅子は、今年でデビュー25周年となったわけですが、バンドを続けてこれた原動力って何だと思いますか?

鈴木:アルバムを出しても出しても、曲の出来が衰えないんですよ。それは和嶋くんがすごいんだと思うけど、俺もそれについていくためにがんばるし、ノブもそうだし。やっぱり、良い曲ができるうちは、みんなに聴かせたいって気持ちが沸くじゃないですか。できなくなったら考えるかもしれないけど、これがまた良い曲ができちゃうんですよね(笑)。なんで俺らはまだまだ曲を作り続けるのかな?と考えたときに、もっと良い曲ができるはずだっていうのがどこかにあるんです。俺は一生かけてサバスの「パラノイド」や「CHILDREN OF THE GRAVE」に匹敵するような曲を作りたい。それができるまではまだまだやるって感じなんですよね。和嶋くんはビートルズやロバート・フリップが神様だし、自分の中でまだまだもっと良い曲ができるって思ってると思いますよ。

――逆に、ここまで人間椅子が続くと思ってましたか?

鈴木:活動していく中で、俺らは誰かが病気にならない限りこのくらいは続くなと思ってました。たまたま今、ちょっとお客さんも増えてくれてるけど、お客さんがガラっと減ってもやるつもりでいたし。今後も俺らはずっとやりますよ、誰かが死なない限り(笑)。納得いくものがまだまだ作り足りない感じですね。

(取材・文=土屋恵介)

■リリース情報
『無頼豊饒』
発売:6月25日
価格:初回限定盤(CD+DVD) 4800円(税込)
   通常盤(CD) 3086円(税込)

※初回限定盤、通常盤ともに共通のアートワーク

<収録内容>
01.表徴の帝国
02.なまはげ
03.地獄の料理人
04.迷信
05.生まれ出づる魂
06.悉有仏性(しつうぶっしょう)
07.宇宙船弥勒号(うちゅうせんみろくごう)
08.リジイア
09.ミス・アンドロイド
10.グスコーブドリ
11.がらんどうの地球
12.結婚狂想曲
13.隷従の叫び

<DVD収録内容> ※初回限定盤のみ
『バンド生活二十五年~猟奇の果~』 @TSUTAYA O-EAST (2014年1月18日より)

1.新調きゅらきゅきゅ節
2.爆弾行進曲
3.時間からの影
4,怪人二十面相
5.九相図のスキャット
6.ねぷたのもんどりこ
7.品川心中
8.踊る一寸法師
9.相剋の家
10.蜘蛛の糸
11.針の山
12.猟奇が街にやって来る

■ライブ情報
『人間椅子ワンマンツアー「二十五周年記念ツアー ~無頼豊饒~」』

8月20日(水)仙台 LIVE HOUSE enn 2nd
8月22日(金)青森 Quarter
8月24日(日)札幌 Bessie Hall
8月30日(土)熊本 B.9 V1
8月31日(日)博多 DRUM Be-1
9月3日(水)広島 HIROSHIMA BACK BEAT
9月4日(木)香川 高松 モンスター
9月12日(金)大阪 梅田 Shangri-La
9月14日(日)名古屋 Electric Lady Land
9月20日(土)恵比寿 LIQUIDROOM