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武田梨奈が語る、女優としての次のステップ「アクションだけではない、奥行きのある演技がしたい」

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リアルサウンド

 新進気鋭の監督6人が、注目の若手女優とタッグを組み、東京の街の雑踏で生きるごく普通の女性たちの物語を描いたオムニバスムービー『TOKYO CITY GIRL』が、9月5日より公開される。空手を得意としていて、『進撃の巨人』などの作品でもキレのある戦闘シーンを演じて注目されているアクション女優・武田梨奈は、同作の「夢の寿命」篇に出演。女優になる夢を持って上京したものの、すでに諦めて高円寺の風俗嬢として暮らす女性・咲を演じている。快活なアクション女優としてのイメージが強い彼女だが、本作では明日の見えない日々に悩む同世代の女性の心理を、リアルかつ繊細な演技で描き出しているのが印象的だ。「人生を映画に捧げたい」と宣言するほど、熱心な映画ファンとしても知られる彼女は、この役柄にどのような気持ちで臨んだのか。本人にインタビューを行った。

「格闘シーンがない作品にも起用してもらえるのは嬉しい」

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——今回、武田さんが主演した『TOKYO CITY GIRL』の「夢の寿命」篇では、女優になる夢をあきらめ、高円寺の風俗店で働きながら、同棲中の彼氏と倦怠感のある日々を送る女性・咲を演じています。“アクション女優”として評価が高く、話題作『進撃の巨人』でも派手な戦闘シーンを演じている武田さんにとっては、ある意味では真逆ともいえる役柄にも思えましたが、実際に演じてどう感じましたか?

武田:今回の作品は短編のショートムービーは初めてだったこともあり、ちょっと不安ではありましたが、結果的にリアルに女の子の日常を演じることができたのではないかと思います。これまではやはり“アクション作品で戦う女の子”というイメージが強かったと思うし、実際に『進撃の巨人』のドラマ版では、40分中30分が戦闘シーンという感じでしたが、こうして格闘シーンがない作品にも起用してもらえるのは、ちゃんと演技の部分も観ていただいているということだと思うので、すごく嬉しいです。

——役者としての幅が広がることへの喜びがあった、と。咲のキャラクターについてはどうでしょう。

武田:咲ちゃんは、現状に対して本当は不安や不満もあるけれど、相談できる相手がいなくて抱え込んでいるタイプの女の子で、同世代として共感できる部分はすごくありました。彼女はいまの生活になる前は、役者を目指してずっとオーディションを受け続けて、アルバイトに通って……と、毎日同じ生活を繰り返していました。わたしも小学生〜高校生の頃は、学校が終わったらそのままオーディションに行って、その後はアクション稽古に通うという生活を繰り返していて、どこか遊びにいくこともなければ、友達と過ごすことも少なかった。そういう日々が本当に正しいのか、いつも悩んでいて、将来が不安でもありました。だから彼女が抱える気持ちは、理解できるつもりです。

——劇中の咲は、表面的にはすでに夢をあきらめているけれど、同時に心の底ではあきらめきれない部分も持っているようでした。その心の機微が、演技から伝わってきましたが、演じる上で心がけたことは?

武田:彼女は割と彼氏の佑太(前田公輝)に合わせてしまうタイプで、流されやすい弱さも持っているのですが、佑太が過去の自分と同じように夢を追っているひとを馬鹿にしたりするのには、どうしても乗り切れないところがあります。その微妙なバランス感はやはり難しかったです。できる限りリアルにそれを表現したかったので、その場の雰囲気を大事にして、佑太の“間”に合わせて演じることを心がけました。彼女の流されやすさと、捨てられない純粋さの両面が表現できていれば良いな、と思います。

——武田さんの世代はとくに、学校でもTV番組などのメディアでも、ひとそれぞれの個性を磨くことや、夢を追うことの大切さを説かれてきたと思います。しかし実際は、佑太と咲のように、夢破れて明日も見えない生活を送る若者は少なくありません。このような夢と現実のギャップについて、武田さん自身はどう考えていますか。

武田:わたし自身は、たとえ先が見えなくても、それを続けることはとても立派なことで、一番難しいことだとも思っていて。劇中で咲は、夢追い人を馬鹿にする佑太に対して、「続けているだけ、私たちよりマシじゃない」と言うのですが、わたしもそう思う。もちろん、現実が厳しいことはわかっているし、努力ではどうしようもないことだってあることも知っているけれど、やっぱり夢を信じて追い続けている方がいたら、わたしはそれを応援したいです。

「映画をもっとよく知るためには、食わず嫌いはいけない」

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——武田さん自身は、映画がとても好きで「人生を映画に捧げたい」とまで言っていますが、女優業以外ではどんな風に映画と接していますか。

武田:今年の3月には、『第11回大阪アジアン映画祭』で国際審査員を務めさせていただきました。アジアの作品をたくさん観たんですけど、印象深いものが多かったですね。特に感銘を受けたのは、香港映画の『セーラ』という作品で、雑誌記者の女性がタイを訪れて、現地で売春をする少女と交流し、様々な葛藤と向き合うという話です。とても社会性に富んだ作品で、すごく良い内容だったので、日本でも公開してほしいと思っています。エンタメ系の作品に注目が集まりがちな日本では、なかなか見られない種類の作品で、こうした映画がもっと広く鑑賞されるようにするにはどうしたら良いのか、わたし自身も常に考えています。

——具体的にどんな活動を?

武田:数年前から中目黒で『ナカメキノ』というミニ映画祭をやっていて、そこでは毎月100名の方が無料で映画を鑑賞できるんです。多くの人に、映画をもっと身近に感じてほしいというコンセプトのもとに行なわれている映画祭で、まるで『ニュー・シネマ パラダイス』のワンシーンのように、みんなで野外に集まって映画を観たりもしています。また、先輩であり俳優の齋藤工さんは「cinéma bird」という移動映画館をやっていて、彼は映画を観ることができない環境のところを訪れて、さまざまな映画を上映しています。わたしはまだ力不足だけど、いろんな作品に関わって力をつけて、いずれは自分の手でそういう活動にも貢献したいですね。

——なるほど。ちなみに最近、武田さん自身が注目している映画のジャンルは?

武田:最近は今まで避けてきたような作品も観るようになりました。例えば、昔から苦手だったエロやグロをテーマにした作品など。映画をもっと知るためには、食わず嫌いはいけないなと思ったんです。以前、井口昇監督の『デッド寿司』(2013年)に出演する際に、いくつか監督の過去の作品を観て、そのときは「ものすごいものを観てしまった!」という感覚だったのですけど、エンターテイメントとしては素晴らしいとも感じたし、こういう表現も大切なんだって気付くことができました。3年前くらいに、エロをテーマにしたとある映画を観たのですが、それは初っぱなからセックスシーンの連発で、かなり衝撃的でした。自分が実際にそういうシーンに挑戦するかどうかは別として、映画を観ることは経験につながるものだと思うし、そういう作品の情緒を知ることは、演技をする上でも大切だと思うので、幅広い作品を観たいと思っています。

——人間の綺麗なところだけじゃなくて、生々しい部分や、薄暗い欲望にも目を向けていきたい、と。

武田:そうですね。わたし自身、少年っぽいところがあって、本当は『グーニーズ』とか『スタンド・バイ・ミー』みたいな、子供心をくすぐられる作品が好きなんですけれど、映画が表現できることはもっとたくさんありますから。たとえば今回の「夢の寿命」にだって、咲が心に抑え込んでいる欲望を表現するシーンもあります。そうした表現は、今後さらに追求したいな、と。アクションにはもちろん、これからもたくさん挑戦していきたいけれど、それだけではない、奥行きのある演技ができる女優を目指したいです。

(取材・文=松田広宣/写真=竹内洋平)

■公開情報
『TOKYO CITY GIRL』
9月5日(土)角川シネマ新宿他全国順次公開。
監督:山田能龍、藤井道人、志真健太郎、原廣利、山田智和、山口健人
出演:武田梨奈、青山美郷、田中美晴、三浦萌、比嘉梨乃、遠谷比芽子、塚地武雅、前田公輝、小島よしお、高橋健介、蘭次、川村亮介、小西キス、栗原英雄、土佐和成、浅見千代子
配給:アークエンタテインメント
上映時間: 100分
(C)2015 TOKYO CITY GIRL
公式サイト