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アメリカ育ちのBENIは、J-POPにどうアプローチしたか?「日本の曲は洋楽に比べてポエティック」

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リアルサウンド

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 BENIが6月11日、これまでにリリースしたすべてのオリジナルシングルに加え、累計100万枚に迫る大ヒットとなった『COVERS』シリーズからの人気カバー曲を収録した『BEST All Singles & Covers Hits』をリリースする。

 インタビュー前編では、デビューから10周年の節目を迎えたBENIにこれまでの軌跡を振り返ってもらうとともに、日本とアメリカを共にルーツに持つ彼女の音楽観や、J-POPをカバーすることで見出した日本語詞の特徴などについて語ってもらった。

「歌いたいことが溜まりに溜まっていた」

――オリジナル曲とカバー曲を収録したベストアルバム『BEST All Singles & Covers Hits』が6月11日にリリースされますが、今年はデビュー10周年の節目の年でもありますね。

BENI:いつも次の制作やライブに向かっていて、制作したものを振り返る機会があまりないので、ある意味で自分にとっても、自分の歌と向き合える作品になりました。改めてBENIとしての道のりを辿ると「あの頃はこういうサウンドでこういう気持ちをを伝えたかったんだな」とかわかりやすくて、自分でも「こういう風に成長してきたんだな」っていうことがわかる作品になりました。この間リリースしたシングルでさえ「うわ、懐かしい!」「この頃はボーカリストとしてまだまだだったな」と思うことがあって、それを言ったら5年前の曲なんてもう、聴くのが照れくさいところもあります。でもそれは、自分が一番自分に厳しく歌に向き合っていたからなのかなと思いますね。その頃にしか歌えなかった歌もあると思いますし、音楽ってそういうところがあると思うので、照れくさい反面「この流れがBENIを作ったんだな」って知らせてくれるアルバムです。

――その意味では「もう二度と…」「Kiss Kiss Kiss」など、2009年前後の曲を聴くと、ご自身でも初々しさのようなものを感じますか。

BENI:そうですねー。すごくフレッシュですね。あの頃はBENIとして活動し始めた頃だったので、気持ち的にもフレッシュで、自分のサウンドをいろいろ探していた時期でした。「Kiss Kiss Kiss」は特に私らしいというか、R&Bの、のれるアーバンなトラックと、女心をそのまま歌詞にしている歌のミックスで、それがBENIらしさにつながったかなと思います。この曲がある意味でそのスタートでした。

――たしかに、洗練されたサウンドと、リアリティのある歌詞の組み合わせがBENIさんの特徴であるように思います。当時を振り返ってみて、制作はスムーズに進みましたか?

BENI:けっこうスムーズでした。やりたいことや、伝えたいこと、歌いたいことがはっきりと見えていましたから。だからこそ頻繁なペースでリリースできたのかな、と思います。当時はとにかくいろんな思い…恋愛だけじゃなくて自分に対してのことも、溜まりに溜まっていた時期だったんです。だから、ただのラブソングではない、1人の女性としての心境がそのままリアルに出てて。ラブソングだったら、今聴くと若く感じるなぁ。「好きなのに伝えられない」とか。今だったら全然はっきり言いますけどね(笑)。そういう女の子らしい部分も詰まっていますし、逆にガツガツと「もっとみんなにわかってほしい!」みたいな強い意思もあります。そういう風に、この時期はとにかくいろいろな思いが溜まっていたので、それをスムーズに出していったんだと、いろいろな曲を通して感じました。

「日本とアメリカのカルチャーをミックスしたハイブリッドなものを、私の音楽を通して作りたい」

――今年は、BENIさんにとってデビュー10周年です。これまでの音楽活動の中でターニングポイントとなった出来事はいくつかあったと思いますが、一つ挙げるとするならば?

BENI:童子-Tさんとコラボしたことは大きかったです。初めてコラボしたのは「もう一度… feat.BENI」の一年くらい前に、彼のアルバムに1曲参加した時でした。そのきっかけもミラクルで、彼の子どもが、私が歌っていたディズニー・アニメの主題歌を聴いて、「すごくいい声だ」って私のことを調べてくれたんです。だから今までのヒストリーが全くないまま、素直に声を気に入ってくれたことでスタートしました。運命的な出会いでしたね。私は元々R&BやHIPHOPが大好きなので、フィーチャリングものを当たり前のように聴いてきたんですけど、日本って、「デュエット」はあっても「フィーチャリング」はそんなになかったじゃないですか?「フィーチャリング」はHIPHOP的なスタイルだと思うので、やっと日本でもブームになって、単純に嬉しかったですね。

――特にアメリカでヒップホップの流れを汲んだR&Bが盛り上がった90年代から00年代にかけて、BENIさんはそれらを現地で聴いて育ったわけですよね。そうした音楽体験を持ちつつ、日本のシーンの中でどうやっていくのか。葛藤もあったのでは?

BENI:小学校の頃からTLCやジャネット・ジャクソン、メアリー・J.ブライジ、アリーヤとかを聴いてきました。日本の小学生が聴くには大人っぽいかもしれませんけど、アメリカではそれが普通にラジオで流れていたから。日本でやる以上、もちろん言葉も違うし、全然違うカルチャーなだけにみんなが求めているサウンドも違います。日本に帰ってきてJ-POPに初めて触れて、その良さを感じました。私の中では両方のカルチャーがフィフティー・フィフティーにあるからこそ、それをミックスしたハイブリッドなものを私の音楽を通して作れたらな、とずっと思っていました。それはカバーをやったときにも全く同じで、「どうせカバーをやるんだったら自分らしいスタイルでカラーを取り入れてやりたい」と思いました。やっぱりバイカルチャーの融合っていうか。

――カルチャーの融合という意味で言うと、アメリカでも生活をしていたBENIさんから見て、J-POPの良さはどんなところでしょうか。

BENI:メロディですね。J-POPは日本語の歌詞を理解できない外国人が聴いても、切ない曲は切なく聞こえると思うんですよ。メロディで気持ちを動かす独特なものを持っていると思います。だからこそ、それを『COVERS』の制作の時に感じました。実際に英語で歌ってもやっぱりいい曲なんだな、と思うのは、メロディにソウルがあるというか、メロディアスなんですよね。ただ、ゆるくフロウするんじゃなくて。そこが一番の魅力だと思います。英語ってすごくフロウな感じがするんですけど、J-POPはいい意味で波があって、エモーショナルですよね。

「日本語の歌詞には聴き手が好きに解釈する文化がある」

――ボーカリストとしては、歌詞の言語によって符割りや歌うスタイルが変化しますよね。英語の歌は単語数も多いですしリズミカルですが、日本語の歌詞にするとどうしても制限があります。日本語と英語で、歌うときの特性の違いは意識しましたか?

BENI:そこは大きいですね。本当に歌詞が少ないんですよ、日本の曲って。逆に言うと、深い意味や背景をこれだけの短い言葉で表現できる素晴らしさでもあります。でもそれを英語にするときには絶対的に言葉が増えるので、自然と付け加えなきゃいけない部分や、自分なりの解釈で「盛る」部分があります。それは実際やってみて気付かされましたね。だからこそ言葉を大切に使っています。

 日本の曲は洋楽に比べて、カジュアルな曲よりもポエティックな曲が多いと思います。だから日本語だと自然に聞こえるのに、英語にするとすごくクサいというか、大げさというか、そういう風に聞こえちゃうと感じました。それをどういう風に自然に表現するか、ということが大切でしたね。日本語だと、オブラートに包んで、あまりリアルな言葉にはしませんけど、英語だと「I love you. I love you. I love you.」みたいな感じになる時もある。英語の「I love you.」には「愛してる」以外にもたくさん意味があって、むしろ直接「愛してる」って言うことは少ないんですけど、それを英語にすると「I love you 以外にないかもなぁ」って思ったり。英語っていうのは本当にストレートにできている言語です。逆に日本語、特に歌詞では遠回しな表現が好まれ、それを聴き手が好きに解釈する文化があるんですよね。

――日本語の歌詞を書くときは、表現を遠回しにしたりポエティックにしたりという努力があったんですか。

BENI:そのスイッチは自然に入ります。もちろん、喋っていてたまに、「あ、これ和製英語だった!」とか、逆に「この言葉をそのままカタカナにしても通じないな」とかごっちゃになる瞬間はあります。スイッチが自然に入るようになったのは最近で、昔は英語の方がメインだったから、そこに関してすごく苦戦してました。まず英語で書いて、それを日本語にして、それが変かどうか、伝わるかどうかまわりに確認したりしていました。

――先程初期の歌詞について、恋愛観に関して「初々しい」と仰っていました。たしかに作品の歴史を辿っていくと、段々と大人っぽい、一言で表現しづらいような人間関係の深みを歌ったりするようになっていると感じました。こうしたものはご自身の人間関係や人生経験が反映していますか?

BENI:そうですね。やっぱりリアルな気持ちから書くことがほとんどなので、それがそのまま曲に出ます。いろんな意味で大人になっていくっていうか、成長が出ている気がします。

―― 一貫して歌詞には意思の強さを感じますが、ご自身ではどう思われますか?

BENI:強いですね(笑)。

――弱い部分も見せられる強さ、と言えるかもしれません。

BENI:まさにそうですね。自分のカッコ悪い部分でも、恥ずかしがらずに素直に表現できるようになりました。

――それはファンからの反応など、世間とのコミュニケーションを取る中でできあがったスタンスですか?

BENI:それももちろんあります。聴いてくれる人を思い浮かべながら制作するスタイルは、ライブをし始めてからより強くなりました。エゴで書くんじゃなくて、その人の気持ちを歌で動かせるか、背中を押せるか、とか、そういう気持ちで作ることが増えましたね。

「私は自分を『R&B歌手』とは思ってはいない」

――ボーカリストとしては、技術面や表現力など、歌のどのような部分を意識して歌ってきたのでしょうか?

BENI:磨けば磨くほど、もっと形にはまらない歌い方をしていこう、と思うようになりました。スキルがついたとしても、だからといってパーフェクトに歌うのが良いかというとそうじゃないし、カラオケの採点できれいにピッチが合っているようなものよりも、ちょっと崩れているくらいの曲の方が聴いていても伝わります。実際に何度もそういう曲に泣かされました。あんまり考え過ぎない、テクニカルになり過ぎない、という意識は大事にしています。

――そのためには何が重要でしょうか?

BENI:曲を自分のものにして、入り込むことですね。スタジオも雰囲気を重視して、めっちゃムーディにしてみたり(笑)。歌詞が読めないんじゃないかっていうくらい暗めにしてキャンドルを灯したりしましたね。

――パーフェクトに歌うだけでは良しとしないのはどうしてでしょうか?

BENI:一時期はパーフェクトに歌うことばっかり考えてました。あるときにハッと「そこじゃないじゃん!」って気付かされて。「100回くらい歌い直してパーフェクトな歌が録れたとして、たぶん満足するのはBENIだけだよ」っていうような発見があったんです。だからこそ、慣れないことをたくさんすることも、自分の中の意識です。新しいことにチャレンジするために、今までの慣れた環境から一度出る必要があると思っています。そういった意味では『COVERS』も、「どうしようこの曲?」みたいな、自分の曲ではない緊張感や発見がありましたね。

――「粉雪」は印象的ですよね。オールジャンルなので最初は途方にくれることもありましたか?

BENI:もちろんありました。ロック、J-POPからラップまで幅広くやっていたので。でも、ゼロから作るオリジナルと違って、答えがある中で、どうやってそこにいくか考えながらやるのが、すごく新鮮で楽しかったです。

――今回エルトン・ジョンの『Your Song』のカバーが初収録されています。

BENI:この曲は元々好きで、ずっと聴いてきた曲なので歌いやすいというか体が覚えている曲で、スムーズにレコーディングできました。彼の曲は歌詞もそうですけど、本当にいい曲がたくさんあります。中でもほっこりするラブソングが大好きですね。アーティストとして名曲がたくさんありますし、今でも若い人とコラボしたり、そういうチャレンジもするところはリスペクトしています。

――そんなカバーシリーズに取り組んだことで得たものとは?

BENI:さっき言ったことにもつながるんですけど、本当にオープンマインドで曲と向き合うことです。私はワードとして「ジャンル」っていうのも元々好きじゃなくて。私は「R&B歌手」とは思ってはいないので、アーティストとして、歌詞の世界観だったりサウンドだったり、より多くのチャレンジをしたいです。そういうことを試すのは全然ありだなって、よりジャンルを超えた音楽の楽しみ方をしたいと思えた作品でしたね。
(後編 「BENIが考える、これからの音楽の届け方」に続く)

(取材=神谷弘一/構成=高木智史)

■リリース情報

『BEST All Singles & Covers Hits』
発売:2014年6月11日
価格:初回プレス限定盤・豪華盤(2CD+1DVD) ¥5,184(税込)
   アーティスト写真フォトブック、歌詞ブック封入
   豪華版限定特典:全オリジナルシングルのミュージックビデオ集(DVD)、完全撮り下ろしフォトブック
   通常盤(2CD) ¥3,780(税込) ※初回プレス限定・スペシャルプライス ¥2,980
アーティスト写真フォトブック、歌詞ブック封入

〈収録内容〉
【CD. DISC 1】
1. もう二度と…  
2. Kiss Kiss Kiss 
3. 恋焦がれて
4. ずっと二人で
5. KIRA☆KIRA☆
6. サイン
7. bye bye
8. ユラユラ
9. ギミギミ♥
10. Heaven’s Door
11. 2FACE
12. 好きだから。
13. 声を聞かせて
14. crazy girl
15. Darlin

【CD. DISC 2】
1. 永遠 
2. さつきあめ 
3. OUR SKY 
4. Ti Amo
5. LA・LA・LA LOVE SONG 
6. 瞳をとじて 
7. 桜坂 
8. いとしのエリー 
9. 奏(かなで) 
10. 歌うたいのバラッド 
11. Lovers Again 
12. 粉雪
13. 愛唄 
14. YOUR SONG (初収録)
15. もう二度と… Rebirth (初収録)

【DVD DISC 3】 ※VIDEO CLIPS集 
1. もう二度と…
2. Kiss Kiss Kiss 
3. 恋焦がれて
4. ずっと二人で
5. KIRA☆KIRA☆  
6. サイン  
7. bye bye  
8. ユラユラ  
9. ギミギミ♥
10. Heaven’s Door
11. 2FACE
12. 好きだから。
13. 声を聞かせて
14. crazy girl
15. Darlin’
16. 永遠
17. さつきあめ
18. OUR SKY
19. ずっと二人で unplugged version
20. もう二度と… Rebirth

■BENIオフィシャルWEB:http://www.benibenibeni.com/