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山崎あおいが歌おうとする“感情”とは?「深くえぐるっていうよりは、かすり傷を残していく」

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リアルサウンド

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 アコースティック・ギターをかき鳴らしながら、爽やかさと憂いが入り混じったペイルトーンの歌声で、心の景色を綴るシンガー・ソングライター、山崎あおい。ほっこりとあたたかい景色を描きつつも、最後には切なさが胸をひっかいていく歌が注目を集めている。今年1月にリリースしたメジャー1stアルバム『アオイロ』は好リアクションを得て、また新世代ギター女子の筆頭格として、住岡梨奈や新山詩織などと共に特集を組まれるなど、その存在感も高まってきた。今回は6thシングル『ふたりで歩けば』の話を伺いながら、彼女の曲作りについて、感じていること、心の風景についてインタビューをした。人見知りなんです、と言いながらも想いをまっすぐ伝える人懐こい笑顔はとても印象的だった。

「今、やさしい気持ちで接している、このあったかさを忘れないようにしたい」

――「ふたりで歩けば」は初のアニメの書きおろし曲ですね。

山崎あおい(以下、山崎):ずっとやってみたかったことではあったんです。個人的には、映画を観て勝手に主題歌を書くという書き方はよくしていたので、楽しんでできたと思います。

――作品を観て、どんなテーマで書こうと?

山崎:アニメの制作側からは、絆をテーマにと言われていました。絆って言葉は、あまり深く考えたことはなかったので、どうしよう?って考えていたんですけど、実際にアニメを観て、ピンポイントで絆というよりは、観た後にすごくあたたかい気持ちになりました。このアニメは団地の中での友達との出来事や、学校や近所づきあいをあったかく描いているアニメなんですけど、それを観て自分も、小さい頃に過ごしていた街や一緒に育った友達のことを思い出してあたたかい気持ちになったんです。それで、むかし一緒に育ってきた人のことを考えながら曲を書こうと思ったんです。

――あたたかさや懐かしさを描きながらも、ここが山崎さんらしさだなと思うところが、同じ空を見ながらちがう大人になっていくという、切なさやセンチメンタルな気持ちが描かれているってことなんですよね。この切ない感覚はどんなところから。

山崎:今、大学3年生なんですけど、地元の友達も大学の友達もなんとなく就職活動を意識しはじめる時期で。ああ、みんなこうやって別々の道を歩んでいくんだなって最近感じているんです。だったら、ずっと一緒にいようっていう約束をするよりも、今、楽しくて、今、やさしい気持ちで接している、このあったかさを忘れないようにしたいってことを考えていて。今の自分の考えが曲に入った感じですかね。

――大学の話はまた後ほどお訊きしたいと思いますが、テーマが決まってからは曲を書きはじめるのは早いんですか。

山崎:この曲はわりとすらっとできた感じかなと思います。詞は詞、曲は曲でストックがあったりと曲によって作り方はバラバラなんですけど、「ふたりで歩けば」はギターを弾いている時に鼻唄でサビを歌っていて。その鼻唄の中でもう、《ふたりで歩けば》って歌詞が出てきて、そこから広げていきました。

――MVでは、その“ふたり”が山崎さんとアルパカとで描かれていますね。ほのぼのとしたMVですが、なぜアルパカだったんですか?

山崎:面白いMVにしたいなと思って。曲のテーマが絆なので、友達同士、人間同士の物語を描いてもよかったのかもしれないですけど、それはありきたりすぎるなって思ったんです。それで、アルパカに(笑)。登場するだけで面白いと思いますし、関係性的には『アルプスの少女ハイジ』に出てくるハイジとやぎのユキちゃんみたいな、ああいう言葉なしでも通じ合える親友のような関係を描きたくて。なので、MVの中でもベタベタしていない、かわいくてよしよしっていうよりは、お互いがお互いの食事を済ませる感じとか(笑)。そういうMVになりました。

――アルパカと街を一緒に歩いている時の山崎さんの笑顔は、素の表情のようですね。

山崎:そうですね(笑)。監督さんも、演技をしてきれいな映像をっていうよりは、ドキュメンタリーに近い表情を撮りたいと言っていて。だから、ここ使われるんだとか、ここ撮られていたんだっていうところが結構あるんです。すごく歩きましたね、写メ撮られたりして(笑)。

――夕日のなかで歌うシーンも印象的ですが、夕日の光景も曲のイメージとして強かったんですか。

山崎:歌詞の中にも夕日の赤が出てくるんですけど、わたし自身友達について考える時間や、思い出す友達との情景っていうのが、帰り道が多いんです。学校の帰り道、夕暮れの中を歩きながら友達と話す景色だったり、ひとりで帰っていても友達のことを考えるみたいな、そういうのが夕暮れ時が多いかなっていうイメージなんです。

山崎あおい 「ふたりで歩けば」 ミュージックビデオ(Short Ver.)

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「アップテンポでポップなメロディで相手にキュンさせる」

――なるほど、わかりました。それでは、アレンジャーの島田昌典さんとは、どのようにサウンドを詰めていったんですか。

山崎:島田さんにアレンジをお願いするのは初めてで、個人的にはずっとアレンジしていただきたいと思っていた方だったんです。アレンジする前に一度お話をさせていただいたんですけど、わたしはあまり言葉としてこういう音って伝える術を持ってないので、ざっくりと、「各駅停車の電車の中で、夕暮れを見ている感じのサウンドにしてほしい」みたいな抽象的な伝え方をしたんです(笑)。そしたらわたしの理想の音にしてくれたので、伝わったのかなあと。

――いつもアレンジャーさんとのお話はそんなふうに音のイメージを伝えるんですか。

山崎:イメージとしてはっきりしている場合は、こういう音でとか具体的にする場合があるんですけど、今回は雰囲気で作った曲だったので、こういうサウンドっていうよりは、島田さんに託してみたかったというのはありますね。

――「サヨナラ」はどうでしょう。こちらは曲調やサウンドはポップで明るい曲なんだけれども、肝のフレーズが《「またね」じゃなくて「サヨナラ」》というこれもまた切ない状況を描いた曲ですね。

山崎:この、明るい曲調で切ない歌詞を歌うっていうのが、最近の自分のトレンドで(笑)。何曲かそういう曲を作った中の1曲なんです。なので、できるだけサウンドもメロディもポップで明るくて、でも歌詞を読んで聴くとキュンとくる、切ないなっていう曲が作りたいなと。

――そういうサウンドと歌とのギャップは、ちゃんと歌を聴いてほしいという思いもあってこそなんですか。

山崎:バラードで感情を思い切り出してそこに浸るのもいいんですけど、アップテンポな曲でポップな曲で、切ない歌詞だと……何ていうか、自分のなかでエンディング感があっていいというか(笑)。よくわかんないんですけど、今自分の中ではいちばんそれが切ないなって思っていて。悲しいじゃなくて、切ないのほうに持っていくのって、やっぱりポップなメロディなんじゃないのかなって思っているんです。

――なるほど。決して“悲しい”があるわけではないんですね。

山崎:深く感情をえぐるっていうよりは、表面をさらっと触って、かすり傷を残していくみたいな(笑)。そういう曲を書きたいなと思っているんです。そういうかすり傷を作るにはどうしたらいいんだろうっていうなかで現状での答えはアップテンポで切ない曲を歌ってみたらどうだろうというチャレンジですね。

――深くえぐる方が、もしかしたらやりやすさはあるかもしれないっていうのはある?

山崎:そうですね。今のわたしにはそういう方がやりやすいかもしれないですね。きれいなメロディでしっとりしたバラードで、相手の心に響かせることはできるかなと思うんですけど。アップテンポでポップなメロディで相手にキュンさせるっていうのは、歌詞の力やメロディ本体の、素で聴いた時の切なさが大事になってくるんじゃないかなと思うので。わたしの中のチャレンジですね、これは。

――ひねくれてますね(笑)。その感覚は、1stアルバム『アオイロ』以降より色濃くなったんですか。

山崎:『アオイロ』以降というか、たぶん14歳くらいの時に曲を書きはじめて以降ずっと、ひねくれていく方向になっていると思うんです。ひねくれては原点に戻り、ひねくれては原点に戻りみたいなことを繰り返していて(笑)。

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――もう1曲の「マスク」はまたちがった視点ですね。

山崎:これも入り口としては化粧品のCMっぽい曲を書きたいなっていうところから入ったんです(笑)。最近、マスクをしてる女子が多いなって思って。もちろん風邪予防の人もいると思うんですけど、すっぴん隠しであったりとか。目元ってメイクでどうにでもなるけれど、口元や鼻のあたりはなかなかメイクで隠せないところであって、マスクで隠しちゃうみたいな。雑だなあみたいな(笑)。思い切り笑ってる顔が恥ずかしいというのも女心としてわかるんですけど、くしゃくしゃに崩れた笑顔も可愛いっていう男心もわかったりして。その両者のかけ合いというか、気持ちの矛盾みたいなところをカップルの会話っぽく書いていったんです。

――そういう、何かあるんじゃないかっていうところに日常的も目がいっちゃうんですか。

山崎:はい。とくに女の子を見てる時は、何でマスクしてるんだろう?とか、何でこんな服着てるんだろうとか、その心理みたいなものを知りたいって思っちゃうんです。それで、曲ができた時は、自分的に気になっていたことの答えが出たなというか。いちばんすっきりする回答を自分で作れたみたいな感じなんです。何であの子は泣いたんだろうとか、何でわたしはこういうふうにもやもやした気持ちになっているんだろうとか、そういう疑問が曲を書くことで、正解じゃなくても自分の中ですっきりする答えが得られればそこで完結っていう感じですかね。

――先ほどの「サヨナラ」の場合の完結したものは何ですか。

山崎:何でこんなに地元に気持ちが戻ってきてしまうのかなっていうのがあったんです。その中での自分のひとつの答えが、「またね」って言ってるからなんじゃないかなっていう。完全にお別れするわけじゃないけど、気持ち的には一旦「さよなら」って言わなきゃいけないものってたくさんあるなっていうところに落ち着いた感じですね。

――地元に帰りたいって思うことも多かったんですか。

山崎:帰りたいですし(笑)、やっぱり地元に帰ると会いたい人がいっぱいできちゃうので。でも、そのたびにゼロに戻っていたら意味がないなって思って。一旦ちょっと頑張らないとって思った気持ちがありました。

――こうやってギターを弾いて歌って頑張っていくんだっていう気持ちが入っているんですね。

山崎:そうですね。

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「来年は山崎あおいとして呼ばれたいって目標もできた」

――「ふたりで歩けば」にもありましたが、今回の作品には学生生活も色濃く映り込んでいると思いますか。

山崎:そうですね。大学生になって、社会に出ていく人を身近で見て感じたことだったりとか。あとは、北海道から東京に出てきていろんな人に出会ったり、その中で感じる孤独、地元の友達に対する気持ちだったり、その時その時の自分を書いているんじゃないかなって思います。

――山崎さんの場合、大学の友達よりも一足先に社会人デビューしている状態でもありますよね。学生である自分と歌っている自分とのバランスはとっているんですか。

山崎:大学ではほんとに、大学生っていう感じで。むしろ超地味なんですよ、学校で(笑)。学校に行っても、誰とも一言も交わさずに帰ってくることも結構あったりして。でもあまり、学校の友達と比べて自分が一足先に社会に出ている感じはしなくて。わたしは好きなことをやって、曲を書いて、歌ってっていう、仕事っていう感じではないじゃないですか。それよりは一生懸命アルバイトしているほうがたぶん、上司からの圧力に耐えるとか(笑)。そういうことを経験してるんじゃないかなって。

――でも好きなことをやるからこそのプレッシャーは相当のあるじゃないですか。

山崎:そういう意味ではあるかもしれないですけど。でも、あと2年もすれば友達たちがどんどん追い抜いていくんじゃないかなって気持ちもありますね。わたしはもう、これを頑張るっていう感じじゃないですか。でも友達はまだ夢と希望にあふれていて、何でもできる――わたしも何でもできるんですけど。すごい悲しい気持ちになるんですよね、友達と将来の話をしてると。

――なんでまた(笑)。

山崎:わたしはどれだけ頑張ってもシンガー・ソングライター山崎あおいっていうところから何か肩書きが増えることはないけど、友達は部長になったり、社長になったりできるじゃないですか(笑)。羨ましいなって。

スタッフ:じゃあ、課長にしてあげるよ(笑)。

山崎:課長(笑)!

――いいですね(笑)。今、同年代のシンガー・ソングライター同士、“ギター女子”という括りで一緒に活動することも増えていますよね。こういう状況は刺激にはなっているんですか。

山崎:そうですね。まあでも、たぶんわたしも含めてお互いがお互いに無関心なところがあるんじゃないかなと思っていて(笑)。ギタ女同士でバチバチとライバル心があるということもないし、かといってみんな集まってライブしようぜ!みたいなノリもないし。お互いがお互い、「あ、ギタ女ですねわたしたち」くらいな雰囲気があるんじゃないかなって。

――一緒に頑張っていこう!っていう関係でもないんだ。

山崎:そういうテンションを持っている人たちだったら、たぶんみんなバンドをやってると思うんですよね(笑)。ひとりで、マイペースで曲を書いてやっていたいっていう性格の人が、ギターを持って歌う感じだと思うので。そこは、そういうものなのかなあと思ってます。

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――“ギター女子”っていうのは、さっき言っていた肩書みたいなものですよね。それは、言われてどうなんですか。

山崎:そうか、っていう感じですね。何々系女子みたいな括りはたくさんありますけど、ギター女子ってその中でもめちゃくちゃ広い括りじゃないかなと思っていて。女子か男子かで言えば女子に分類される子たちが、ギターという楽器を持てばみんなギター女子で。自分はカテゴライズされたくないとか、逆にギター女子に入りたいって気持ちはないんです。

――そこまで堅苦しさを感じたり、活動を狭めてしまっているわけではないんですね。

山崎:逆に広げてくれたんじゃないかなと思っていて。今年の夏は、ギタ女という括りで憧れていたROCK IN JAPAN FES.のステージに立つ経験をさせてもらったので。山崎あおいという名前だったらまだ早かったかもしれない経験を、ギタ女っていう枠でさせていただいて。それでまた、来年は山崎あおいとして呼ばれたいって目標もできたので。そういう入り口としては、ありがたいところだなと思います。

――同年代だからいろんな話をしたり、意識してるのかなと思ってました。

山崎:個人的には仲良くなりたいところもあるんですけどね。でも、みんな人見知りなので難しいんです(笑)。でもイベントで会ったら積極的に話しかけるとか、連絡先だけは聴いておこうっていうのはあります。11月に住岡梨奈さんと2マン・ツアーをするんですけど、ライブに向けてLINEしたりとか(笑)。あとは、井手綾香ちゃんと遊んだりとか、ですかね。井手ちゃんは社交的なんですけど、相手が社交的ならそこにペコペコついていくみたいな感じで(笑)。人見知り同士だとなかなかつらいものがありますね。

――小さい頃からそんな感じですか?

山崎:小さい頃はわりと何でも言えたんですよ。小学生の頃はほんとに活発で。手を上げた回数を正の字で書いていったらクラスでナンバー1みたいな子だったんですけど。思春期を迎えたあたりからちょっとおかしくなって(笑)。ある日、「自分、心の中で独り言いいすぎじゃないかな」って思って。その最悪なタイミングでギターに出会ってしまいました(笑)。

(取材・文=吉羽さおり/撮影=下屋敷和文)

■リリース情報
『ふたりで歩けば』
発売:2014年11月19日
価格:初回限定盤 ¥1,700(税抜)
   通常盤 ¥1,200(税抜)
<CD収録内容 初回限定盤、通常盤共通>
1. ふたりで歩けば
2. サヨナラ
3. マスク
4. ふたりで歩けば (Instrumental)
5. サヨナラ (Instrumental)
6. マスク (Instrumental)
<初回限定盤のみ>
(DVD)
「ふたりで歩けば」(ミュージックビデオ&メイキング)
バースデイライブ 「AOI SUMMER CAMP 2014」 Live at 札幌cube garden 2014.8.29
「スクランブル」「カランコロン」「恋の予感」「深呼吸」「花火のあと」

■ライブ情報
『住岡梨奈×山崎あおい ACOUSTIC LIVE 2014秋 「one×one」』
11月13日(木) 札幌KRAPS HALL
11月24日(祝・月) 東京キネマ倶楽部
11月26日(水) 梅田AKASO
11月30日(日) 名古屋CLUB QUATTRO

『2ndワンマンライブツアー』
3月4日(水) 宮城・仙台 LIVE HOUSE enn 2nd 
3月9日(月) 東京・TSUTAYA O-EAST 
3月11日(水) 大阪・CLUB QUATTRO UMEDA
3月12日(木) 愛知・NAGOYA CLUB QUATTRO
3月14日(土) 福岡・イムズホール 
3月20日(金) 北海道・Zepp Sapporo

■オフィシャルHP
http://yamazakiaoi.jp/