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MAGUMIが明かす“新しい音楽”の作り方「リズムとメロディがうまく混ざると極上のものになる」

音楽

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リアルサウンド

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 日本のスカ・パンクの草分け的存在であるLA-PPISCH。そのボーカル&トランペットのMAGUMI率いる6人組バンド「MAGUMI&THE BREATHLESS」が、3年ぶりのニューアルバム『Demonstration』を5月14日にリリースする。スカ、ラテンからファンク、ロックまでを融合させたサウンドからは、ミクスチャーサウンドの先駆であるMAGUMIの衰えを知らぬ音楽的パッションが伝わってくる。今回のインタビューでは、聞き手に音楽評論家の小野島大氏を迎え、新作の成立プロセスからMAGUMI自身の音楽観に至るまで、じっくりと語ってもらった。(編集部)

「今のバンドのメンバーとはほとんど面識なかった」

――今回もかなりの力作ですね。

MAGUMI:ありがとうございます。

――前作からは3年。

MAGUMI:そうですね。3年間…毎週練習してるんですよ、ウチのバンド。ライヴやりながら曲作りながら、みたいな感じでやってて。それで3年間かかっちゃったかな、と。

――ああ、アルバムを作るから一から曲作り、ではなくて、常に作っていたと。

MAGUMI:ええ、そうですね。新曲作ってライヴやって…の繰り返しで。それで曲が溜まってきたし、マネージャーに北島(レピッシュ時代のマネージャー)が戻ってきてくれるというんで、じゃあこのタイミングで(アルバムのリリース)、ということになりました。

――曲を作ってライヴでやって、そこで得たものをまた曲作りに反映させる。いわばバンドの原点ですよね。

MAGUMI:そうですね。バンドとしては非常に健康的だと思いますね。レピッシュの場合、一番曲作りの期間が短かったのがトッドの時(トッド・ラングレンがプロデュースしたサード・アルバム『KARAKURI HOUSE』1989年)で、2週間で作曲とプリプロ全部やってアメリカに送ったんで。あの時あらかじめできててライヴでやってた曲は「コントロール」って曲だけでしたからね。

――でもそういう作り方だと、逆に勢いが出たりすることもありますよね。

MAGUMI:そういう時もありますね。基本的にミュージシャンってみんなナマケモノじゃないですか(笑)。なんかきっかけとか理由がないと曲作らないですよ(笑)。

――じゃあこの3年間は真面目にバンドをやってたってことですね(笑)。ファーストの『delight』(2011年)はまた違う作り方だったんですよね。

MAGUMI:そうですね。前作はそもそも俺のソロ・アルバムとしてスタートしたんですよね。今のバンドのメンバーとはほとんど面識なかったんですよ。最初にギターのやつ(永井秀樹)が、一緒に何かやらせてもらえませんかって言ってきて。DJばっかやってるのもヒマだったんで(笑)、でレピッシュのカバーをアコースティックでやってみたら、意外と使えるなと。そうしたらキーボードを連れてきて、こいつも使えるなと。じゃあいっそバンドにしちゃうかってことになって。その時ちょうど、そろそろソロ・アルバムぐらい作らないとやばいなってタイミングだったんですよ。それでいろんな人から曲をもらって進めていったんですけど、だんだんバンドのオリジナル曲も出来てきたので、じゃあバンドのアルバムにするかって話になって。それがファーストだったんです。そういう経緯があったので、今回はすべてバンドの曲で行こうと。なので、このアルバムがバンドの最初の<デモンストレーション>かなと。それでこういうタイトルになったんですけどね。

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「簡単ですよ。カッコいいかカッコ悪いか」

――なるほど。じゃあ「こういうバンドにしよう」という明確なコンセプトがあって始めたバンドではない。

MAGUMI:そうですね。やり始めてからは…自分の得意なところは生かしつつ、できるだけ面白いもの、新しいことをやりたいなと。だからコンセプトとしてはレピッシュと同じですね。

――バンドとしてのしっかりとした手応えができてきたのっていつごろですか。

MAGUMI:うーんと、まだウチのバンドは発展途上な感じですね。逆に今回のアルバムを作ることで、やっとバンドがしっかりしてきて、もうちょっと自由なことができるかなって手応えが出てきたかなと。テクニック的にも、みんなの個性的にも。

――その「イケる!」と思った手応えというのは……。

MAGUMI:簡単ですよ。カッコいいかカッコ悪いか。これはカッコいいから大丈夫だっていう。今回はレピッシュのファーストとセカンドと4枚目をやってくれたミキサーの牧野(英司)さんにやってもらったんですけど、それもうまくいったかなと。全面的に信用して任せられるという。

――今作の制作では、どういうことを心がけましたか。

MAGUMI:全員がムダなことをしないよう。今回もトリオ(ギター、ベース、ドラム)に関してはダビングは一切やってないんですよ。音楽的にはいろんなことをやってるんですけど、そこだけは意外と男らしく一貫してる(笑)。

――バンドのボトムがしっかりしないとバンドは機能しない。

MAGUMI:できるだけ音数を減らそうと思ったんです。各メンバーの音の出し入れも無駄なく、主役が順次変わっていくような、そういうアレンジの作り方にしましたね。メンバーにアレンジの意味を理解してもらいたかったんです。なぜこの6人でやっているのか、どうしてこういうアレンジにしたのか。よくあるみたいに、ずーっとギターが主役で鳴っているんじゃなくて、常に主役はころころ変わっていく。そういうものを作りたくて、リハーサルをしながらアレンジを練っていったんです。

――だらだらセッションを続けてなんとなくできたものでもなければ、勢いに任せて作ったものでもない。すごく緻密な計算のもとに作ったということですね。

MAGUMI:意外とそんな感じでやりましたね。

――レピッシュもすごく緻密ですよね。

MAGUMI:あれは…どっちかというと。長年みんな一緒にやってたから、メンバーがみんなそういうのを理解してたから。だれかがイニシアチブをとらなくても、自然とそうなっちゃう。

――今回はMAGUMIさんが交通整理をして、きっちりアンサンブルを作りこんでいったと。

MAGUMI:ライヴでやってきた曲なんですけど、レコーディングにあたってキーボードがいろいろアレンジを考えてきたんですよ。でも必要ないものは全部却下しました(笑)。でもそういう作業を経て、メンバーも今回で相当自信つけたと思うんです。

「レピッシュをずっとやってて、鍛えられたのはリズム」

――このバンドの特質が一番あらわれているのがタイトル曲の「Demonstration」ですね。スカ、サンバ、ラテン…いろんな音楽がミックスされた、文字通りのミクスチャーロックになっている。面白い曲ですね。

MAGUMI:一番最初にメンバーに、サンバのところを徹底的に練習させたんですよ。こういうふうに弾け!って。なんかね、自分のことしか考えられない人達が集まってるんですよ。バンド全体を客観的に見渡せるようなメンバーがいない。だからどうしても俺がまとめなきゃいけないってところがあって。どっちかというと指揮者的な感じでやってますね、このバンドでは。もともとが細かい人間なんで(笑)。どっちかというとね、レピッシュの時は俺が一番怒られてたんだけど、今は俺が怒ってばっかですからね(笑)。レピッシュをずっとやってて、鍛えられたのはリズムなんですよ。各メンバーがものすごくこだわってたんで、歌もそれに対応しなきゃいけないから。それも現ちゃん(故・上田現)は抽象的なことしか言わないし、とにかく宇宙ばかり見てる人で(笑)、雪好は逆にすごく具体的に「そこの16の裏で入ってくれないと困るんだよなあ」とか言ってるタイプで。その両方に対応してやってましたからね。いやでも鍛えられますよ(笑)。

――レピッシュで一番学んだのはリズムだと。MAGUMIさんの場合、メロディアスな楽曲を朗々と歌い上げるような面もある。そのバランスがMAGUMIさんの個性でもあると思いますが、リズムとメロディの兼ね合いについてはどう考えますか。

MAGUMI:リズムとメロディがうまく混ざった時に極上のものができるんじゃないかと自分では思ってるんですね。よく「そこは後ろ過ぎだよ〜」と言われるんですけど、「だいじょぶだいじょぶ、これはフィルと同じだから」って言ってるから(笑)。

――なるほど。そこはちゃんと計算してると。

MAGUMI:してますね。そうすることでよりメロディが際立つんです。

――なるほど。でもこれを聴いて、MAGUMIという人は非常に真面目できっちりした人だというのがよくわかりましたね。

MAGUMI:出てますかね?

――もちろんはちゃめちゃにふざけたところもあるんだけど、こと音楽を作るということに関してはストイックなまでに真面目だなと。

MAGUMI:(アルバムは)残るものですからね。そこにはすごく執念を燃やしたいかなというのがあって。レピッシュの時はあまり意識もしてなかったですけど、レピッシュみたいに安心して作れる態勢が崩壊すると、逆にそこは妙な執念が出てくる。こんなアルバムを最後にするわけにいかないよ、という。

――これが最後になっても悔いがないように。

MAGUMI:うん……でもこんな、50歳になるまでミュージシャンやってたら、やっぱ死ぬまで作るしかないかなと思いますよ。

――今さら後戻りできないもんね。

MAGUMI:ええ。
(後編【「いつも新しいものを探している」MAGUMIが語る自身の創作スタンスと、音楽シーンの今後】へ続く)

(取材・文=小野島大)

■リリース情報
『Demonstration』
発売:5月14日(水)
価格:¥3,000+税

<収録内容>
1. Beautiful World
2. Parting Dance
3. Q Dub
4. 死角のシルエット II
5. Electric Discharge
6. Demonstration
7. 砂の家
8. 水槽
9. Abracadabra
10. トルコ行進曲
11. Liar
12. Good Bye Sunshine

『Electric Discharge』
発売:5月14日(水)
価格:¥1,000+税

<収録内容>
1. Electric Discharge
2. 死角のシルエット
3. Ghost Town