デビュー15年の椎名林檎に“変化”の兆し 「花の98年組」はどこに向かう?
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デビュー15周年を迎えた椎名林檎が、積極的に音楽活動を展開している。デビュー記念日となる5月27日には両A面シングル『いろはにほへと/孤独のあかつき』、11月13日には他のミュージシャンとコラボレーションした楽曲をまとめたアルバム『浮き名』と、歴代ライブ音源を厳選したアルバム『蜜月抄』の2枚を同時リリース。ネット上では15周年を記念した特設サイトが開設され、11月18日からは5年ぶりとなる単独ライブ公演『椎名林檎十五周年 党大会 平成二十五年神山町大会』も開始している。11月25日の21時からは、ニコニコ生放送にて24時間にわたる椎名林檎特集番組を放送。番組のフィナーレでは、ライブ公演の一部を生放送することも決定している。
鮮烈なデビュー時から、今なおミュージシャンとしての勢いを失わない椎名林檎は、音楽シーンにおいてどのように位置づけられる存在なのか。そして今後、どのような活動が予想されるのか。音楽ジャーナリストの宇野維正氏は次のように話す。
「1982年は中森明菜や小泉今日子をはじめとする数多くの人気アイドルがデビューした年で、その年のアイドルは“花の82年組”と呼ばれてきました。これは偶然ですが、今から15年前の1998年は、1982年をはるかに超える女性アーティストのビンテージイヤーだったんです。椎名林檎、宇多田ヒカル、aiko、浜崎あゆみ、MISIA、モーニング娘。など、錚々たる女性アーティストが1998年にデビューしています。なかでも椎名、宇多田、aikoの3人は、今なお日本の音楽界におけるトップ3の圧倒的な才能であると個人的には思っています。2013年はそんな彼女らがデビュー15周年を迎える節目の年でした」
”花の98年組“のなかでも、椎名林檎はとりわけ活動の“年数”に大きな意味を置いてきたという。
「椎名林檎は数字に対して強いこだわりを持つミュージシャンで、これまで曲名の文字数がアルバム内でシンメトリーになっていたり、楽曲の長さやアルバムの収録時間にまで意味のある数字を刻印してきました。そんな彼女にとって、5周年や10周年といった節目はとても重要な意味を持ってきました。3枚のオリジナル・アルバムを残している椎名林檎の最初の5年は、能動的に自分の音楽を発表していた時期です。2003年になると彼女はソロ活動を停止し、次の5年は東京事変の歌い手としての活動を中心に行っています。東京事変では一時期、メンバーが作った曲しか収録されていないアルバムを発表したことからもわかるように、表現の動機をバンドに求めていました。その後、デビュー10周年を記念したソロライブ『椎名林檎(生)林檎博’08 ~10周年記念祭~』をきっかけに、ソロ名義での活動がふたたび本格化していきます」
だが、10周年以降のソロ活動は、デビューから5年目までのそれとはまた異なると宇野氏は指摘する。江崎グリコの「ウォータリングキスミント」のイメージキャラクターになったり、NHK連続テレビ小説『カーネーション』の主題歌を書き下ろしたり、TOKIOやSMAPに楽曲を提供したりと、世の中に求められる仕事をこなしていく、いわば職業作家に近いスタンスだったというのだ。そして15周年を迎える今年は、また新たな動きが見られるという。
「先日出たアルバム『浮き名』には、新曲として中田ヤスタカとコラボした「熱愛発覚中」と、バート・バカラックの提供曲である「IT WAS YOU」が収録されています。この2曲に関しては、珍しく受け身ではなく、椎名林檎の側からオファーをかけて実現した曲だと推測できます。彼女は自分の中のルールがしっかりしているミュージシャンで、そのルールが5年ごとに変化してきているのですが、このアルバムで自らほかのミュージシャンにアプローチしたことは、来年以降のより精力的な活動への布石かもしれませんね」
デビュー15周年を迎え、その活動スタイルの変化に注目が集まる椎名林檎。来年以降、ひさびさとなるオリジナルアルバムの発表など、ファンを喜ばせるサプライズが期待できるかもしれない。
(文=編集部)