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宇多田ヒカル、ラジオ最終回で藤圭子とのデュエット曲オンエア「こういうのが残ってるのは素晴らしい」

音楽

ニュース

リアルサウンド

 2013年4月よりInter FMで一年間放送されていた宇多田ヒカルのラジオ番組『KUMA POWER HOUR with Utada Hikaru』が、2014年3月18日の放送にて最終回を迎えた。この番組は現在音楽活動を休止し、“人間活動中”の宇多田が、一人で選曲、録音、編集に至るまで宅録で制作していた番組。現在、宇多田の肉声が届けられるただ一つの貴重な場だっただけに、終了を惜しむ声も少なくない。

 ファンには知られた話だが、実は宇多田のDJデビューはアーティストデビューより先である。初めてレギュラーを持ったラジオ番組は、アーティストデビューの2ヶ月前になる1998年10月から放送された『HIKKI’S SWEET&SOUR』(Inter FM)。この番組は今年2月から15年ぶりに再放送されたことでも話題を集めた。宇多田はこの他にもこれまでに2本のレギュラーDJの経験を持ち、今回終了した『KUMA POWER HOUR with Utada Hikaru』は単発番組以外ではおよそ13年ぶりのレギュラー番組となった。同番組を開始するに際し、宇多田は音楽活動休止中に番組を持つことに迷いがあったという。しかし「月一で番組をやることで、もっと紹介したい曲に対して、アンテナを張ることができるし、音楽のことがもっと考えることができるので、自分にとってもいいことかなと思った」と、DJの魅力についても語っている。この番組ではそのコメントの通り、毎回のテーマに沿った選曲の中で、宇多田自身の音楽への思いを語ることが主体になっていった。

 この番組のDJを務めた一年の間に、宇多田ヒカルには大きな出来事が相次いだ。とくに母である藤圭子の訃報に際しては、様々な憶測や過熱した報道が世間を飛び交った。だが一ヶ月の休養を経て番組に戻った宇多田は、落ち着いた声でしっかりと自身の心境、そしてファンへのメッセージを伝えた。この回の収録時は何度もオープニングトークを録り直したというが、嘘偽りなく自らの言葉が伝えられる場所があったことは、今にして思えば彼女にとって大きなことだったかもしれない。

 最終回である今回の冒頭で、番組が終わる経緯について説明した宇多田。番組を始めてちょうど一年で終わることは「区切りがいい」と思ったという。その後は宇多田が「これまでかけようと思って、大事に大事に温めていた曲」を中心に、“デュエット”というテーマに沿ったさまざまな楽曲について語られた。その中では1993年にリリースされた藤圭子と宇多田のデュエット曲、“藤圭子 WITH CUBIC U” の「GOLDEN ERA」も「こっぱずかしいんですけど」という前置きをした上で選曲。父親である宇多田照實も参加したというこの曲について「家族としてこういうのが残ってるというのは素晴らしいことですね、ありがたいです」と少し照れたような声で語り、この日何曲かセレクトされた、恋人や家族の間で制作されたデュエット曲の温かさについても触れた。番組の最後ではリスナーへの感謝とともに、「ラジオが放送されたあと一定期間ストリーミングで聞けるとか、日本の著作権の法律はややこしいんですけど、ポッドキャストにして曲もかけられるっていうポジティブな方向に進んでいくといいなと思っています」と、番組を通して感じた自身のラジオ観についても展開。「ラジオと現代の生活スタイルとか、他のメディアを繋げるような変化があればいいな」と締めくくった。

 音楽活動への復帰時期は今も明確ではない宇多田だが、今回の反響の大きさに、宇多田ヒカルの新しい音楽を待ち望むファンの多さが表れた形となった『KUMA POWER HOUR with Utada Hikaru』。日本ポップス史上最高のセールスとなる765万枚を売り上げた、あの『First Love』から15年の年月が経過しても、宇多田ヒカルというアーティストの求心力は衰えることを知らない。彼女自身が音楽を作りたいというタイミングで、音楽ファンの前に戻ってきてくれることを願ってやまない。
(文=岡野里衣子)