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冬フェスCOUNTDOWN JAPANが一人勝ち 人気の秘訣は「快適度」にあり

音楽

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リアルサウンド

 12月28日から31日にかけて千葉・幕張メッセ国際展示場で開催されるロックフェスティバル「COUNTDOWN JAPAN 13/14」(以下CDJ)。前田敦子、きゃりーぱみゅぱみゅ、BUMP OF CHICKEN、マキシマムザホルモンなど人気のシンガーやバンドを揃えたラインナップが実現した今年は、すでにチケットも全日ソールドアウト。過去最大の170組の出演が決定し、最高動員数を記録した昨年をさらに上回る動員が見込まれている。

 なぜCDJは動員を増やし続けているのか? ここ数年のロックフェス全体の盛況については改めて言うまでもないことだが、実は、夏と冬では少し事情が違う。全国各地で様々なイベントが乱立し傾向も多様化している夏に対して、冬はCDJが完全な一人勝ちの様相を呈しているのである。

 動員数の推移を見ればその拡大傾向は一目瞭然だ。

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(※出典:ロッキング・オン発行資料をもとに作成。06/07から3年間開催された「COUNTDOWN JAPAN -WEST-」は除く)

 2010年時点ではまだ当日券も発売されていたが、現在は一般発売の前に抽選が行われ、もはやチケット争奪戦の様相を示している。

 しかし、振り返ってみれば、CDJが初開催された2003年以前には、年越しカウントダウンを含む年末の複数日開催のロックフェスティバルというものは、日本には存在していなかった。もちろん、ジャニーズを筆頭に、福山雅治や浜崎あゆみなど大物アーティストのカウントダウンコンサートは定番化している。内田裕也主催の年越しフェスも40周年を迎えて健在だ。しかし、90年代以前は、そもそも会場が少ないこと、年末年始に稼働するアーティストが少なかったこともあり、若手ロックバンド勢が多く出演する大規模なフェス形式のカウントダウンイベントを開催するのは難しかった事情がある。しかし、そこに進出して「28日からの年末休みをまるまるロックフェスで過ごす」というライフスタイルを提案し、成功を収めたのがCDJなのである。そして、夏休みの各週末に分散して開催される夏フェスに対し、冬の年末休みは期間が決まっているがゆえに、「一人勝ち」の状況が必然的に生まれたということなのだ。

 では、何故CDJは人気を拡大してきたのか? 一つの理由は、いまや名実ともに日本最大級の野外フェスとなった『ROCK IN JAPAN FES.』(以下RIJ)との関連性にある。共に運営はロッキング・オン。ブッキングやラインナップの傾向も共通している。

 今年夏にはRIJのヘッドライナーをPerfumeがつとめ、BABYMETALやでんぱ組.inc、BiSなど女性アイドルグループの出演も実現して波紋を呼んだが(参照:“ゲーム化”する夏フェスで、Perfumeはいかにして勝ち上がったか)、今回のCDJでもその傾向がさらに進んでいる。

 また、12月28日から30日には、くるり、リップスライム、BUMP OF CHICKENがメインステージのヘッドライナーを努めている。大物を揃えた手堅い印象を与える一方、最終日となる31日、メインステージでの年越しカウントダウンはMAN WITH A MISSIONが担当。全米デビューも決まったオオカミバンドを今回のフェスの「顔」とも言える位置に抜擢している。他に比べたRIJの特殊性は「“フェスを勝ち上がる”物語性」にあるわけだが、そのストーリーを継続して感じられるCDJにもリピーターが集まっているわけだ。

 そして、もう一つの大きな理由は、フェスの「快適度」にある。ここ数年、ロックフェスにおいては、その場所でどう快適に過ごすことができるかがフェスの人気を左右する状況が生まれている。ライヴだけでなく、レジャー的な楽しみ方が注目されるようになってきたわけだ。そこにおいて定評があるのがRIJとCDJ。特にCDJでは、眠くなった参加者が休息するためのリクライニングチェアが大量に用意されていたり、ホール一つ分を使った出し入れ自由のクロークが整備されていたり、ホスピタリティの充実が追求されている。

 基本的には自然の中の開放的な空間が用意されている夏の野外フェスに比べ、長時間の屋内イベントとなる冬の年末フェスでは、その場所の過ごしやすさは運営者側の環境整備によるところが大きい。そこでユーザーの満足度を高めたのもCDJが一人勝ちをおさめた大きな理由と言えるだろう。

 では、現在のフェスブームに、この先の死角はないのだろうか? いまや世界的にも音楽ビジネスの中心は興行に移ってきている。独自の進化を遂げた日本のロックフェスの集客は、おそらくこの先もさらに拡大していくはずだ。ただ一方で、UNISON SQUARE GARDENの田淵智也は、先日ツイッターにて「音楽に対してみんなが可処分所得を取りあってるわけで『フェス行くから金ねーわー、ワンマンチケットもCDも買えねーわー』という人間が生まれるのを否定できない社会構造である事をそろそろ誰かが議論しだす頃ではないかと思っている」と発言。音楽的な方向性においても「ライヴで盛り上がりやすい曲」がもてはやされることで、ロックバンドやアイドルの楽曲の傾向が一面的になっているような状況もある。

 フェス偏重の現在の音楽業界のあり方が、果たして音楽カルチャーの充実につながるかどうか? その問いの答えが出るのは、まだまだ先のことになりそうだ。

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」/Twitter