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実は男性読者向けだった!? 『anan』のアイドル特集号を読む

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リアルサウンド

 “かわいすぎるアイドル”として話題の橋本環奈(Rev.from DVL)を表紙に起用した、『anan』2014年2月5日号。今号のテーマは「秘かにアイドル研究!」。女性誌では珍しい、女性向けのアイドル特集号だ。

 AKB48ももいろクローバーZ、Perfumeといった現アイドルシーンの立役者の多くをあえて外したキャスティング(AKB卒業生の篠田麻里子は登場)。ポップで小奇麗なデザインからも、男性誌の一般的なアイドル特集とは一線を画した編集方針であることは明らかだ。「アンアン選抜!ファッション誌の表紙を気取って」と銘打ち、スタイルの良いモデル系アイドルをモード風に撮影したページなど、女性目線を意識した企画がちりばめられている。なかでも注目したいのは、橋本環奈、モーニング娘。’14に続き、単体で特集されているのがE-girlsであること。EXILEの妹分である彼女たちはルックスレベルの高さとパフォーマンス力、歌唱力で一定の評価を得ているものの、そのスタイリッシュなイメージから“アイドル枠”で語られることは今まで少なかった。女性の支持層が厚いE-girlsが大きく取り上げられていることは、今回の特集ならではといえるかもしれない。

 また、モーニング娘。’14の特集では、撮りおろし写真に加えて、詳細な年表、つんく♂へのインタビュー記事などを掲載。「(anan読者が)職場で人気者になるためには?」という無茶ぶり気味な質問に対し、つんく♂が「自分の弱点をどんどん人に話してしまえばいい」と、保田圭の成功例を引きながら親身に回答する一幕も。女性ファンが多い「モー娘。」記事は、かなり気合を入れて作られている印象だ。

 「女子が好きなアイドルグループBest5」として登場するのは、9nine、乃木坂46、℃-ute、BABYMETAL、東京女子流。このほかにもアイドルに興味のある読者にはおなじみの顔ぶれが続く。上記の筆頭5組のうち、インタビューで音楽やライブ、パフォーマンスの話をフルにしていたのはBABYMETALと東京女子流くらいで、あとは料理や体重に関する話(℃-ute)などの軽めのやり取りが続く。このあたりは女性誌ならではの切り口といえそう。

 ただし、そのほかの特集では「ニッポンの女性アイドルヒストリー」「初心者女子のための徹底解説カタログ」「アイドル戦国時代、次の次は誰だ!?」など、アイドルの歴史を振り返り、ネクストブレイク候補をデータ解説で挙げていく、王道パターンの構成となっている。あくまで“女性向け”をメインに作られている本特集だが、ひとつひとつの企画はやや手堅すぎる印象もあった。まどろっこしい言い方になるが、「本来男性がメインターゲットのアイドルを、あえて女性向けに特集したことの評価が気になる男性向け」の本になっている感もあるのだ。実際、発売後のTwitterでの反応の多くは男性からのもので、「自分たちの好きなアイドルが、女の子たちにはどう受け入れられてるのか?」といった反応。ネットで話題になることを前提としつつ、『anan』の男性読者獲得を目指した、したたかな特集…‥といえば穿った見方に過ぎるだろうか。

 アイドルの絶対数が増えるなかで、女性ファンの獲得はどのアイドルグループにとっても大きな課題。『anan』が先陣を切ったことで、他の女性誌でも新しい切り口のアイドル特集が組まれることに期待したい。
(文=椎名ゆい)