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ホルモンとももクロの共通点とは? マキタスポーツが「人気曲の構造」を分析

音楽

ニュース

リアルサウンド

20140407-makita2.jpg各方面の音楽人から支持・注目を集めるアーティストでもあるマキタスポーツ氏

 ミュージシャン、俳優などでも活躍するマキタスポーツ氏のインタビュー後編。前編【「ポップスには種も仕掛けもある」マキタスポーツが語る“ヒット曲の法則”】で、J-POPを構造分析し始めた理由、パクリ問題について語ってもらった。後編ではマキタ氏ならではの視点から、構造分析をうまく理解できていると思うミュージシャンについてや、現代の音楽シーンについて語ってもらった。

――問題提議をしていくなかで、構造を理解して上手く作っているなと思っているミュージシャンとは?

マキタ:凄いなって思うのはマキシマム ザ ホルモン。彼らがやっているのはハードコアやメタルと呼ばれる音楽なんですけど、その構造を分解して、うまく組み合わせることで、J-POPにしてるんですよね。だからデスボイスの入る曲がチャートで1位になっている(笑)。

 彼らの曲はアトラクション性が豊かで、みんなが楽しめる。ヘドバンをする時間とかも顧客のためにわざわざ設けてるし(笑)。「ここはこういうノリ方、次はこういう流れ」って流れていくことで、ジェットコースター的な曲展開をする。

 これって、ヒャダインが作った、ももいろクローバーZの曲に似ていて、『サビだらけ』といってもいいくらい、楽曲の中の各ブロックが楽しめる状態になっているんです。1曲自体がテーマパーク的に楽しめる構造をわざと作っているんだと思います。サビになったらみんな歌える感じに仕上げてくるのもすごいと思います。

堂本剛は中々まともな批評の場にさらされない

――なぜ彼らはストレートなメタルをやらなかったんでしょうか。

マキタ:メタルってやっぱり特殊な人間が楽しむ音楽みたいになってるじゃないですか。みんな生乾きの黒いTシャツ着てて。そのうえに音楽好きのおじさんっていうイメージ。でも、今の若いバンドでも、メタルが好きで、影響を受けてきたってミュージシャンはいっぱいいると思うんですよ。9mm Parabellum Bulletや凛として時雨などは、そうかもしれません。でも、メタルを好きだというと叩かれるから、公表しづらい雰囲気というか、風潮がある。「メタル原理主義者」という観念に縛られてる方々が、若いバンドに悪い宣伝をして、「俺たちだけのもの」みたいな感じにしちゃうんです。彼らはそういう雰囲気は嫌いだったので、公言していないのかもしれませんね。

 ホルモンはあのPOPとはかけ離れた風貌をしながら、抜群のセンスでメタルを大衆に向けて、ポピュラリティを持って提示したというのは、本当にすごいことだと思いますよ。

 あとは、堂本剛さんも凄いですよ。新譜を聴いたんですけど、人知れずミュージシャンシップを発揮しているというか。しかし、堂本剛さんがちゃんとした音楽をやってるということは、世間のほとんどの人は知らないんだと思います。そうすると、中々まともな批評の場にさらされないんですよ。彼がやっている音楽がいかに素晴らしいかとか、ダメなのかということが議論されない。

 そんな中で、堂本剛さんは作家性を身に着けて、確実に成長している。彼は元々、「街」という、譜割とかがMr.Childrenっぽい音楽から始まっているから、毛嫌いしているリスナーはそういう音楽を聴いて「余芸でやってんだろ」って言ってる人が多いんだと思います。でも実際は、ブラックミュージックの要素を吸収して、ライブでは歌なしのセッションをやったりしている。僕がやっている作詞作曲モノマネ的なアプローチでもって、だんだんミュージシャンとしてのスキルとかを身に着けてきたんです。器用だっていってしまえばそれまでなんですけど、新しいアルバムを聴くと、真似事ではなく、そこにオリジナルを混ぜたいという、彼の作家性を感じます。

既成の音楽業界への危機感

――今のアイドル、ジャニーズが王道をひた走る現在については?

マキタ:とにかく、経済が厳しい時代じゃないですか、みんな財布のひもが固いし、中途半端な人にお金も払わない。だから余裕が見えるような表現ってダメで、サービスを徹底しているものが生き残っているだけだと思います。

 そのサービスを徹底しているのが、アイドルであり、ジャニーズであり、ビジュアル系なのではないでしょうか。逆に、サービスの出来ない人、従来のアーティスト型の人たちってどうするんだろうって思うんですよね。

――表現者としての欲求が強すぎるがゆえに、サービスをしない人とか?

マキタ:厳しいでしょうね。昔は、のちに「アーティスト志向」という風に分類される方も、テレビの歌番組に出なければいけなかった時代じゃないですか。でも今はそうしなくてもよくなっている。愛のない人たちに出会わなくてもよくなっていて、同人たちのところ、小さい商いでやっていければいいっていう根性でやってるミュージシャンが多い。でもそんな環境では、なかなかスターって生まれてこないと思うんですよね。

 だから、既成の音楽業界には、僕は期待をしていなくて。今までの音楽畑とは違うライン、例えばボカロPとかが、爆発的に売れてたとして、そこから今の音楽業界を変えてくれればと思うんです。

 音楽業界のプロパー的な感じで、ブロイラー化された音楽業界からは、面白いミュージシャンは一切出てこないですよ。

「ヴィジュアル系」は一つのビジネスモデル

――ボーカロイド以外に、既存の仕組みから外れたものがあるとすれば?

マキタ:ヴィジュアル系はシーンが出来ていて、閉鎖的ではあるんですけど、必ず越境者が出てきます。例えばゴールデンボンバーなんかもそう。ヴィジュアルシーンの閉鎖性が嫌だから、ヴィジュアル系バンドとはほとんど交わってないんですよね。でもヴィジュアル畑から一応出てきて、芸能界のど真ん中にいった。この感じって、見ていて痛快だなって思うんですよね。彼らの凄さって、鬼龍院翔君がNSCに通っていたエピソードなんかにも顕著に表れていて。お笑い芸人を目指して入学したけど、1年ですっぱりやめているんです。どうも話を聞くと、「お笑いは面白くなかった。お笑い自体の頭打ち感を感じた」とか。そういう「音楽は好きだけど音楽業界はつまらん、でも創作活動は続けたい」って思うやつが、自分たちでシーンを形成して、そこからマーケットを拡大させれるようにならないと、中々面白いことはできないのではないでしょうか。

 かつてのHi-STANDARDがシーンを牽引して作っていったようなことをやらないと、面白いものなんて生まれづらいなって思うんですよね。

 日本の音楽シーンは、もうしばらくアイドル、ジャニーズが制圧していると思います。それは彼ら、彼女らが「お客様本位の本丸」であって、それをずっと続けてきた人だから。その信用度って、限りなくディズニーランドに近いものを感じます。

 昔、音楽シーンが変わった瞬間って、業界のインサイドからではなく、アウトサイドから来るものが爆発した時だと思うんです。ザ・ブルーハーツとかBOØWYとか。今の音楽業界にはそういう外圧が必要なんだと思います。

 ヴィジュアル系とかはそういうものに干渉しない、独自のシーンを形成しているので、顧客へのサービスに対する徹底を考えつくしているんです。

 ただ、そこで従属してしまう人たちも、シーンが出来上がっているからこそ多いです。かつ、シーンが飽和状態で。ヴィジュアル系シーンを真面目に分析すると、ライブの音像が完全なドンシャリなんですよ。低音と高音しかなくて、中音域の音が出ていない。でも、各々のスキルは低いかって言われると、全く違って。むしろ彼らのスキルは高いし、ミュージシャンシップもある。じゃあなぜそうするんでしょうか?高い音圧の「ドーン」「シャーン」があるだけで、お客さんは「ヤバい」と思うからなんです。だから「そんなことどうでもいい」って現場になってるんですよ。そりゃ生演奏やってる必要ないって、ゴールデンボンバーも出てきますよね(笑)。

 そういうアイデアが許されたのも、ヴィジュアル系ならではなのかなとも思うし。だから音楽性もクソもないと言ったら旧来のヴィジュアル系ファンから怒られたんですけど(笑)。

 大事にしているものもありつつ、それよりも優先しているものがあるから、ゴールデンボンバーみたいな独自の進化を遂げていくんですけど、「ヴィジュアル系」ってそういう進化を遂げてきた分、音楽ジャンルというより、一つのビジネスモデルな気がするんです。だから、音楽的な隙間はまだあるはずなんですよ。そこが面白くならないかなと思いますね。

(取材・文=中村拓海)

■リリース情報
『すべてのJ-POPはパクリである (~現代ポップス論考)』(扶桑社)
発売:1月29日
価格:1200円+税

<収録内容>
第1章 ヒット曲の法則
・ヒット曲を生み出す時代背景
・カノン進行は一発屋を生む?
……など

第2章 なぜCDが売れなくなったのか?
・ファッション化する音楽
・AKB48の曲がヒットする2つの理由
・ももクロのジャンクさは確信犯
・ジャニーズという「ジャンルのすごさ」
・ビジュアル系をビジュアル系足らしめる3要素
……など

第3章 モノマネから発するオリジナリティー
・作詞作曲モノマネはオリジナルなものを生み出す
・オリジネイタータイプとフォロワータイプ
……など

第4章 日本のポップスはすべてノベルティー・ソングだ
・アーティストの非常に「柔らかい部分」
・「ノベルティー・ソング」とは何か
・「人格/規格」という見立てでアーティストの秘密がわかる
・パクリ論争などバカバカしい
……など