「風の電話」西田敏行がモトーラ世理奈を絶賛、西島秀俊も「天才的な女優」
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「風の電話」完成披露試写会の様子。左から西田敏行、三浦友和、モトーラ世理奈、西島秀俊、諏訪敦彦。
「風の電話」の完成披露試写会が本日12月26日に東京・イイノホールで行われ、キャストのモトーラ世理奈、西島秀俊、三浦友和、西田敏行、監督を務めた諏訪敦彦が登壇した。
岩手県大槌町に置かれた“風の電話”をモチーフに、少女ハルが広島から故郷・岩手にたどり着くまでの道のりと心の救済を描いた本作。モトーラが東日本大震災で家族を失ってから広島に移り住んだハルを演じたほか、ハルと行動をともにする森尾に西島、豪雨被害に遭った広島で年老いた母と暮らす公平に三浦、故郷・福島の景色に思いを馳せる今田に西田が扮している。
「少女邂逅」「おいしい家族」などで知られるモトーラは、オーディションを経てハル役に抜擢された。「最初、オーディションのために台本をいただいたときは読むのがつらすぎて。小さい頃から親子の話や家族が亡くなる話は悲しくなってしまう。台本も読み進められなくて、オーディションも行きたくないなって最初は思っていました」と正直に告白し、笑いを誘う。この発言に、諏訪は「あと僕が怖そうだったみたいです」と笑みをこぼした。
現場では台本を使用せず、セリフや役者の動きも即興的に撮り進めていく演出方法を採る諏訪。2回目のオーディションで初めて即興演技に挑戦したというモトーラは「初めてだったんですけど、スッと自然に入っていけました。現場でもハルがいる場所や一緒にいる人のことを感じることができました」と振り返る。諏訪は「即興的にやってるんですけど、行きあたりばったりなわけではなくて。そのシーンがどんな形になるかはみんなで共有してるんです。だから即興、台本のありなしという感覚もなくて、みんなと一緒にその場所で作っていくんだという感じです」とこだわりを明かした。
「2/デュオ」以来、およそ23年ぶりに諏訪作品に出演した西島は「映画はほとんど撮り方が決まっていて、台本があって、シーンがあって、監督がカット割りして、それをスタッフに伝えてワンカットずつ撮っていくんです。でも監督はなぜそのように撮らなきゃいけないのかをずっと考えて来られた方。僕が最初にお会いしたときは、初めての長編作で、まさに現場で実験というか、自分のやり方を生み出そうとされていた。そのやり方を確立されて、またご一緒できたのは、非常に感動的な体験でした」と語る。「M/OTHER」以来、約20年ぶりに諏訪作品に参加した三浦も「独特な雰囲気に戻ってきたなと思いましたね」とコメント。
西田も現場を「俺はこれから何を演じるんだろう?と不思議な気持ちになります。ジャズの即興演奏のようで、とっても楽しいんです」と回想する。諏訪曰く、西田とは事前の打ち合わせもほとんどなかったそうで「『よーい、スタート!』を言う前に西田さんの芝居が始まっていて(笑)。でも西田さんがずっと話をされるそのシーンが本当に素晴らしくて大好きです。全部使いたいんですが、すべて入れると3時間になってしまう。泣く泣く編集でカットした部分もあります」と苦渋の決断を明かす。西田は「パドックからすぐ出たい馬状態でしたね」と冗談交じりに振り返った。
西島はモトーラとの共演に関して「本当に稀有な才能。まったく嘘をつかない。特に自分のような普通の人は大勢の前だと取り繕って本来の自分でない姿を見せてしまうこともある。でも彼女は自分が今感じていること、信じていることを言葉にする。天才的な女優だと思う」とコメント。西田も「50年近く芝居をやってますけど、これほど真実を見つめられる眼力の強い表現者に出会ったのは初めて。目と目が合うと、喜びと恐怖がないまぜになった目でしっかりと見透かされる。このすごさってなんなんでしょう。これからも世理奈ちゃんのいろんな作品を観てみたくなった」と絶賛する。最後にモトーラが「今日は来てくださってありがとうございます。ハルと一緒に旅を楽しんでください」と語り、イベントを締めくくった。
「風の電話」は1月24日より全国ロードショー。
(c)2020映画「風の電話」製作委員会