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V系シーンを牽引するシドはどこに向かう? 彼らが若手バンドをフックアップする理由

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リアルサウンド

 2013年で結成10周年を迎えたシド。結成された03年は、90年代の大御所バンドは活動休止や解散してしまい、青春パンクブームのまっただなか。ヴィジュアル系シーン自体はコア層からの支持はあるものの、世間的には「ブームは終わった」という扱いを受けていた。「ヴィジュアル系氷河期」である。

 そんな頃に誕生したシドも、当初はメンバーが安定せず、動員にも恵まれない時期もあったが、歌謡曲的な世界観を持つ完成度の高い楽曲で徐々に口コミで広まり、04年にリリースされた1stアルバム『憐哀』は、初回1万枚を完売。

 インディーズながら05年にはNHKホール、06年には日本武道館ワンマンライブを行い、名実ともにヴィジュアル系シーンの人気バンドの仲間入りを果たすことになる。長らくインディーズとして活動したのち、08年『モノクロのキス』でメジャーデビュー、10年には東京ドーム公演を果たす。the GazettE、ナイトメア、Alice Nineなどと共にゼロ年代以なかばの「ネオヴィジュアル系」人気を牽引した。

 さて、近年のヴィジュアル系バンドの傾向のひとつとして、「インディーズのままでいる」というものがある。大きな理由は良くも悪くも固定ファンの多いジャンルのため。インディーズのままでいたほうが規制も少ない上に、上記のシドのようにインディーズでも大ホールでメジャーバンド並みのセットのライブを行うことだって可能なのである。つまり「メジャー」というフィールドに出なくても活動が成立するということが挙げられる。

 しかし、そのせいかどうしてもシーン全体が縮小傾向にあるというか、「外部に知られている」バンドが少なくなっているように感じてしまうのだ。ゴールデンボンバーのようにインディーズのままでお茶の間に訴求することが出来るケースもあるが、それは稀なケースだ。ZeppTokyoのような数千人規模のライブハウスを満員に出来るアイドルや、非ヴィジュアル系バンドであれば、リアルサウンドの読者のような「音楽ファン」からは知名度を得ていることも多いが、Zeppクラスのライブを行うヴィジュアル系バンドの名前は、あまり知られていないのが現状だと感じる。

 シドはこの閉塞感を知ってか知らずか、自分たちのファンを囲い込むのではなく、若手のバンドをフックアップすることでシーン全体を活性化させるような活動をしている。たとえば12月には1stアルバム『憐哀』収録の人気曲「妄想日記」カバーシングルを、ヴィジュアル系バンドやアイドルグループ10組が同時にリリースするという前代未聞の企画を実行。ランキングが「妄想日記」が溢れかえるという事態になり話題を呼んだ。

 そんな若手アーティスト10組とオーディションで選ばれた新人バンドを武道館に集めたイベント「Visual BANG! ~SID 10th Anniversary FINAL PARTY~」が27日に日本武道館で行われる。シーン自体を牽引するバンドとして10周年を迎え、次の時代を作るための自信と気概を感じるイベントのように思える。それは「ヴィジュアル系氷河期」も「ネオヴィジュアル系人気」も実感しているシドだからこそできることなのではないだろうか。

■藤谷千明
ライター。ブロガーあがりのバンギャル崩れ。執筆媒体は「ウレぴあ総研」「サイゾー」「SPA!」など。Twitter