Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
ぴあ 総合TOP > ラルクからスピッツまで……ザ・キュアーが日本のロックに与えた広くて深い影響

ラルクからスピッツまで……ザ・キュアーが日本のロックに与えた広くて深い影響

音楽

ニュース

リアルサウンド

 今回は先月に行われたフジロック・フェスティバル最終日のトリを飾り、全36曲3時間、アンコールだけで40分という超ど級のステージを展開したザ・キュアーを取り上げます。

フジロックのセットリストはこちら

 キュアーというと2008年以降新作のリリースもなく、日本では話題にあがることも少ないので、若い人には馴染みが少ないと思われますが、米英ではいまだアリーナ・クラスの大物ですし、ニュー・ウエーブ以降の耽美的で内向的な英国ロックの流れを語るにあたっては絶対に欠かせないバンドです。

 キュアーはポスト・パンクの嵐が吹き荒れる1978年に結成され、1979年にデビュー。初期は極限まで音を削ぎ落したクールでモノクロームなミニマル・ロックでした。

The Cure「A Forest」(1980)

 それが次第に音がカラフルに、ポップになって、次々とヒット・シングルを飛ばし始めました。この曲は当時のキュアーとしては異色な曲調でしたが、初の全英トップ10入り(7位)となった大ヒット曲。ロバート・スミスことロバスミが「キモカワイイ」キャラクターとして人気を集め始めたのもこのころからです。

The Cure「The Lovecats」(1983)

 そして一般にキュアーの最盛期とされることが多いのが、1989年のアルバム『Disintegration』です。このアルバムでグルーミーでサイケデリックでメランコリックで耽美的なキュアー・サウンドが完成した感があります。今回のフジロックでもこのアルバムから多く演奏され、複雑にレイヤーを重ねたサウンドを見事に再現していました。

The Cure「Lovesong」(1989)

そしてキュアーの中で一般に一番親しまれているのがこの曲でしょうか。ロバスミ自身もキュアーの最高傑作のひとつと認めています。ロック系のクラブイベントでも定番です。

The Cure「Just Like Heaven」(1987)

 いろいろな人がカバーしてますが、なかでもダイナソーJrのこのバージョンは痛快ですね。ロバスミも絶賛していました。

Dinosaur Jr.「Just Like Heaven」

 さて、そんなキュアーに影響を受けた日本の音楽家ですが、実に幅広く、いろんな人たちが彼らへの傾倒を隠しません。
まずはL’Arc~en~Ciel。ボーカルのHYDEが熱心なキュアー・ファンで知られています。特に初期のラルクはキュアーの影響が強く感じられます。

L’Arc~en~Ciel「In The Air (Live)」(1994)

 そして「キュアーは神」「キュアーみたいになりたい」とまで公言するのがPlastic Treeです。彼らは過去にライブで、シングルにもなっていないこの曲をカバーしたほどのキュアー好き。

The Cure「The Kiss」(1987)

 この人たちも、ラルク同様、特に初期はキュアーの大きな影響を受けているようです。

Plastic Tree「痛い青」(1997)

そして意外なところでは、ブランキー・ジェット・シティ、なかでもボーカル/ギターの浅井健一がキュアーに影響を受けているようです。この曲はキュアーの初期の名曲「Boys Don’t Cry」に似ているとされています。

Blankey Jet City「John Lennon」(1998)

The Cure「Boys Don’t Cry」(1979)

 しかし、むしろこういう曲のほうが、深いところでキュアーとの共鳴が感じ取れるようでもあります。ロカビリーやパンクといったマッチョな不良成分と、キュアーに通じる内省的で文学的な繊細さが同居しているのが彼らの魅力です。

The Blankey Jet City「あてのない世界」(1991)

そしてキュアーで洋楽ロックを聞くようになったと公言しているのがART-SCHOOLの木下理樹。彼らの音楽も、表面的な装飾以上の深いところでキュアーの影響がありますが、なかでもこの曲はわかりやすい。

ART-SCHOOL「カノン」(2005)

The Cure「High」(1992)

そして最後に。あのスピッツもキュアーの影響を受けているらしい、という曲を。

スピッツ「群青」(2007)

The Cure「Friday I’m in Love」(1992)

一見アーティスト・イメージもサウンドスタイルもかけ離れているように見える両者ですが、キュアーのポップな面がスピッツにたまたまアピールしたと考えるよりも、キュアーのダークで内向的な一面がスピッツにも潜んでいる、と考えたほうが面白いかもしれません。

 ではまた次回。

■小野島大
音楽評論家。 時々DJ。『ミュージック・マガジン』『ロッキング・オン』『ロッキング・オン・ジャパン』『MUSICA』『ナタリー』『週刊SPA』などに執筆。著編書に『ロックがわかる超名盤100』(音楽之友社)、『NEWSWAVEと、その時代』(エイベックス)、『フィッシュマンズ全書』(小学館)『音楽配信はどこに向かう?』(インプレス)など。facebookTwitter