カントリー・ガールズが全うしたアイドルとしての矜持 4人の卒業&グループ活動休止ライブで見せた満面の笑顔
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「最後まで、愛おしくってごめんね!」
2014年11月、カントリー娘。から改名しての再出発。グループの名刺代わりとなる言葉「愛おしくってごめんね」ではじまったカントリー・ガールズは、2019年12月26日、LINE CUBE SHIBUYAにて、この言葉でメンバー4人全員が卒業、グループの活動を休止した。
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『カントリー・ガールズ ライブ2019 ~愛おしくってごめんね~』と銘打たれた現体制4人のラストライブ。オープニングはもちろん1stシングル曲「愛おしくってごめんね」。それぞれメンバーカラーの衣装を纏った山木梨沙、森戸知沙希、小関舞、船木結の4人が右手を頭の上に乗せる茶目っ気たっぷりのお馴染みの振りポーズをキメると、大歓声に包まれた。
「……え? ごめん、怒ってる……?」「もう、あなたって、なんにもわかってない!」……小関と森戸の息の合った寸劇ではじまる「わかっているのにごめんね」。早くも涙腺が危うい小関と、それにつられそうになる船木。その2人を見て目配せしながらフォローする森戸。そして、そんな3人の様子を見守りながら最年長の山木が「若いっていいわねぇ~! 何をしてもカワイイんだもんねぇ~」と、かつてのプレイングマネージャー・嗣永桃子の台詞を口にする。現在の4人の関係性が垣間見えた瞬間でもあった。
カントリー・ガールズはハロー!プロジェクトの中でも特異なグループだ。比類なき強さと強烈な個性を感じさせる他グループとは違い、可憐な少女を連想させるビジュアルと楽曲は、古き良き日本のアイドルアイコンらしくもあり、言わずもがな嗣永から継承した“ももちイズム”を感じる部分でもある。初期のトレードマークであったポニーテールを久々にしてみたという森戸に、Berryz工房の活動停止以来、封印していた“ももち結び”をラストライブで復活させた嗣永と重ねた人も多いだろう。しかし、この日4人が見せたものはそれだけではなかった。スーパーバイザーの里田まいの想い、そして、モーニング娘。から多数のゲストを迎えてきたカントリー娘。の軌跡を、現在の4人のカントリー・ガールズとして存分に見せてくれた。
ロカビリー調の「ピーナッツバタージェリーラブ」から、カントリー娘。に紺野と藤本(モーニング娘。)のオールディーズな雰囲気漂うナンバー「シャイニング 愛しき貴方」へ。こうした新旧入り乱れながらのセットリストはシームレスで、なによりもライブ運びが実に秀逸だった。
この5年間、セクシー対決をしてきたという彼女たち。その集大成ともいえる映像コーナーで笑いを誘い、加入当初、嗣永に「まだ早い」と叱られたと語る船木を含め、5年前と比べてすっかりセクシーさも様になった4人が大人っぽい衣装で披露したのは、カントリー娘。に石川梨華(モーニング娘。)、里田まいが加入して初のシングル「色っぽい女~SEXY BABY~」。当時、石川の艶っぽさが印象的だったこのナンバーを、4人なりのあでやかさで魅せつける。つづく「ブギウギLOVE」「Good Boy Bad Girl」というロックテイストのカントリー・ガールズナンバーも、その余韻を漂わせながらいつもとは違うセクシーな雰囲気たっぷりに魅了した。
「先輩 ~LOVE AGAIN~」での山木、小関の表現力、森戸の順応性と船木のしなやかな歌も聴きどころだった。藤本美貴と紺野あさ美が参加した高い歌唱力を必要とする同曲を、カントリー・ガールズ流に昇華させ、元アンジュルムの福田花音が作詞を手掛けた「傘をさす先輩」へと導いていく。さらにそこから「恋はマグネット」に繋ぐ、時代はバラバラながらも、もの悲しい恋の歌でつなげたセクションは、カントリー・ガールズのボーカルグループとしての存在感と、世代を超えたカントリー娘。からの伝統をあらためて感じることができたハイライトであった。
「恋泥棒」ではじまったラストスパート。カントリー・ガールズ楽曲の世界では“男役”に扮することの多い小関の頬にキスする森戸に「待ってました!」とばかりの歓声が起こる。いつもであれば、「Good Boy Bad Girl」で見せる一幕を、あえて後半の〈あいつは恋泥棒 私が捕まえるんだから〉と息巻く同曲に持ってきたのは確信犯だ。〈パンパンパン パンパンパン パパン~〉ではじまる「リズムが呼んでいるぞ!」のリズム遊び、気品溢れる“山木嬢”、愛嬌を振り撒く“ハッピーちぃちゃん”こと森戸、元プロ野球選手の父・竜也(小関竜也)にホームランを捧げた小関、持ち前の関西ノリでやり切る船木、と各者各様のキャラクターで場内を沸かせると、トドメのキラーソング「浮気なハニーパイ(2015 カントリー・ガールズVer.)」を披露。場内は乱れ打つユーロビートに身を任せながら〈HERE WE GO HONEY PIE 1.2.3.4!〉の掛け声を合図に〈HEY HEY COME ON YO~ 本心でマシ~ンをぶちかませ!〉と、つんく♂ラップの大合唱が天井を突き抜けるほど響いた。
本編ラストは12月4日にリリースされたベストアルバム『カントリー・ガールズ大全集①』からつんく♂作詞作曲の新曲「ずっとずっと」。山木が研修生としてハロー!プロジェクトに入った際に「つんく♂さんの曲が歌いたいです!」と口にしてから5年強。そして、今回の卒業が決まったとき「卒業までにしたいこと」として、あらためて「つんく♂さんの曲が歌いたいです!」と願った彼女。こじらせた乙女心を綴った歌詞と、高音を上顎に這わしていくような音使いのメロディ。歯に衣着せぬつんく♂節が炸裂するこの楽曲を、最後の最後の晴れ舞台で歌いながら、ここぞとばかりに得も言われぬ得意気な彼女の表情が印象的だった。
会場いっぱいの「カントリー!」コールが鳴り響く中、それぞれが麗しいドレス姿で再びステージに登場した4人が歌ったのは、「気ままな片想い」。最初は空耳のような気がしていたのだが、あのコーラスとハモリの聴き馴染みのある歌声は、まごうことなき“ももち”の声だった。ミッツ・マングローブが20歳のときに原曲が作られたものの、「本当のアイドルが唄って初めて完成する」と長年あたためられてきたこの曲は、ミッツ本人が“本当のアイドル”として選んだももちが歌ったことによって完成した。そして今、ももちがアイドルを託した後輩たちの旅立ちという、新たな意味が生まれた楽曲になった。
「今の私たちの気持ちを正直に話しますので、少々厳しいことを言いますが――」
芸能界を引退するももちに向けられた曲「アイドル卒業注意事項」は、卒業する4人からファンへ贈る形にアレンジされて歌われた。“自分の力を試すために旅に出る”船木、“今日までの活動を糧に一般人として生きるのでそっとしておいて欲しい”という山木、“芸能活動は続けていく”と宣言した小関、そして、ハロー!プロジェクトに1人残る森戸は、「今後のカントリー・ガールズメンバーの情報をお伝えできるかもしれないので、気軽に会いに来て欲しい」と語った。それは、いつしかBerryz工房の活動停止の際、今後の進退が明確でないメンバーがいる中で、カントリー・ガールズとしてアイドルを続けていくことを決めていたももちが口にした言葉と同じだった。
さらに森戸の言葉はつづく。スクリーンに映し出されていたメッセージ「おぜちぃで遊びました」をあえて「おぜちぃでデートしました」と読み上げていたことが、“おぜちぃ(小関・森戸コンビの愛称)”の関係性を表しているようで微笑ましかった。加えて、カントリー・ガールズの森戸知沙希と、モーニング娘。’19の森戸知沙希の中の人が同じである、という衝撃的(?)な告白があり、どこか別れの悲しみに包まれていた場内を和ませた。ただ、本人の口から“モーニング娘。’19”の名前を発しなかったのは、カントリー・ガールズメンバーとしての誇りと、そんな自分を観に来てくれたファンへの最後の礼儀だったかもしれない。
本当に本当のラストソングは「VIVA!!薔薇色の人生」。ステージ上の無数の薔薇があしらわれた4本の支柱が4人を彩る中、明るい未来に向かって〈未来しかなくてごめんね!〉と高らかに歌い上げた。
「私たちの卒業を惜しんでくれた全てのみなさん、最後まで愛おしくってごめんね!」
こうして、山木梨沙、森戸知沙希、小関舞、船木結によるカントリー・ガールズは終わりを迎えた。
2017年、他グループをメインとする兼任メンバーと学業との両立を考えたメンバーに分かれた新体制は事実上の活動縮小だった。そして今年3月、梁川奈々美の卒業……、カントリー・ガールズの後期の活動は順調といえるものではなかったのかもしれない。しかしながら、良質な楽曲とアイドルとしての矜恃を守り続け、4人はカントリー・ガールズを思う存分に全うしたのだ。鳴り止まぬ「カントリー!」コールに何度も応えたカーテンコールで見せた、満面の笑顔の4人を見て、そう思った。あのとき〈まことの愛を教えてくれたひと〉、「明日からおもかげ」になる“せんぱい”に向けて〈いつかあなたよりもっと愛されるひとになります。見ていてくださいね。〉と誓った4人が、いま多くの人たちに愛されながら〈明日からはもう おもかげ〉になった。(冬将軍)