YoungBoy Never Broke Again、Roddy Ricch、Lil Romo……DaBabyに続くか、2020年注目のラッパー6組
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・YoungBoy Never Broke Again
・Roddy Ricch
・Kenny Mason
・Lil Romo
・Trevor Daniel
・Rod Wave
2020年が始まったばかりだが、今年注目しておきたいアーティストを今のうちにチェックしておこう。まずは、2018年のトラヴィス・スコット、2019年のダベイビーのようにスーパースタークラスになれるポテンシャルのアーティストを2組予想したい。
ヤングボーイ・ネヴァー・ブローク・アゲイン|YoungBoy Never Broke Again

2020年1月3日付から、Billboardはチャートの集計方法にYouTubeの視聴回数も含むことを発表している(シングルはこれまで計算されていたので、アルバムランキングが対象)。なぜこれを引き合いに出したかというと、YouTubeで圧倒的な再生回数を誇るヤングボーイに有利に働くと考えているからだ。毎週のようにYouTube上だけで5000万回再生を安定して稼ぎ、新曲がなかろうと、Top3を必ず維持。これらの数字を、アルバムに合算すると考えるとかなりの数字が見込めるだろう。
コダック・ブラックが刑務所に4年近く収容されると判決され、ヤングボーイは「Letter 2 Kodak」という曲をリリースしていた。2人に共通しているのは、若い世代から絶大な支持を受けながらも、リーガルプロブレムが付いて回り、継続して思うようなパフォーマンスができていなかった点だ。ヤングボーイなりの覚悟を、コダックを通して表明したのだろう。保護観察処分も解除され、ついに自由となった彼が、どこまでの爆発力を持っているだろうか。2020年は全力でアクセルを踏んでくるに違いない。
ロディー・リッチ|Roddy Ricch

「Die Young」に「Project Dreams」(Marshmello x Roddy Ricch名義)と2018年にヒットを連発。2019年に入ってからもシングルや客演を次々とこなし、着々と準備を整えてきたロディー・リッチ。2020年に突入するにあたり、正しいタイミングで素晴らしい内容のアルバム『Please Excuse Me For Being Antisocial』をドロップした。アルバムリリースが控えめな年の変わり目は、新たなスターが生まれやすい。売上が少なかったにもかかわらず、エイ・ブギー・ウィット・ダ・フーディの『Hoodie SZN』がアルバムランキングで1位をとったのも、2018年のこの時期であった。
『Please Excuse Me For Being Antisocial』は全曲シングルカットできるほどの、高い品質を維持。アルバムランキングでも初登場1位を獲得。ただ筆者はここが彼の頂点だとは思っていない。12月16日に地元ロサンゼルスで行われた『Rolling Loud Music Festival』では、リリースされて間もないアルバム収録曲の「The Box」で大合唱が起きていた。少しかすれた声を巧みに使い、ビートに合わせて哀愁のある歌を乗せていくスタイルは、もはや誰とも比べられないレベルまで到達している。フロウも多様化し、時折フューチャーのようなラップをしたかと思えば、ヤング・サグのようなハイトーンで自由にラップすることもできる。エイブギー・ウィット・ダ・フーディのようなセルフハーモニーを作り出すことも可能だ。聴けば聴くだけ彼の魅力に取り憑かれてしまう。
地元からプロップスを得て羽ばたくであろうアーティストとして、ヒップホップの盛り上がりが特に大きい、アトランタとシカゴから1人ずつピックアップしたい。
ケニー・メイソン|Kenny Mason

2019年アトランタの勢いは、新たな世代に受け継がれるような気がする。J.I.D、EarthGangらを中心に、アトランタのリリカル面が次々と高く評価されるようになってきたが、2020年このスポットを攫うのはウエストアトランタ出身の24歳、ケニー・メイソンであろう。ブレイクアウトシングルになりつつある「Hit」では、お金への執着や、現在の苦しい生活を切実に訴えかける。フロウを何度もスイッチし、高速で駆け抜けるラップセンスは一級品。そしてフックでは、耳に残る特徴的なリフレインを残していく。まるでラップのお手本のような1曲ではないだろうか。まだ曲数もそこまで多くなく、これからどのような手を打ってくるか楽しみなアーティストである。他のアーティストも多く反応しており、デンゼル・カリーも彼のラップを高く評価。J.I.Dに関しては、Revoltのインタビューにて、彼との曲を制作中とまで明かしており、近いうちに大きな注目を集めることになるだろう(参照:『Revolt』)
リル・ロモ|Lil Romo

カルボーイ、ポロG(Polo G)など、シカゴから生まれたニュースターたちは、全米に名を轟かせつつある。Netflixのオリジナル番組である『リズム+フロー』では、チャンス・ザ・ラッパーを中心に、シカゴのアンダーグラウンドを掘り起こそうという動きもあった。そして現在進行形で力をつけつつあるのがリル・ロモである。18歳という若さでありながら、ラップの完成度は非常に高い。ポロGのビデオグラファーも務めている、ライアン・リンチによって撮られた「Move Out The Way」は、彼らのライフスタイルを上手く切り取り、まるでG Herboが乗り移ったかのように的確に淡々と言葉を当てはめていく。「For the Set」では、スキー・マスク・ザ・スランプ・ゴッドの隠れた名曲である「Nationwide」の変則的なビートを器用に乗りこなし、本家に負けるとも劣らずの高いスキルを見せつけた。お金への強い執着も見られ、大学へ行くことも明かしており、冷静に状況を捉えているのも好印象である。2020年が彼にとって賭けの年であるとしたら、上がってくる日も近いだろう。
2019年のリル・ナズ・Xブームはまた違った文脈で、2020年に引き継がれると思われる。コロンビアレコードにて、リル・ナズ・X、ポロG、リル・ティージェイをヒットさせるにあたり、重要な役割を担っていたティアラ・ハーグレイブが、2019年9月から<Alamo Records>に合流している。おそらくこれからさらに大きな動きをしてくると見られるが、すでに予兆は出ている。その中から2組紹介したい。
トレバー・ダニエル|Trevor Daniel

まずはこのトレバー・ダニエルだが、彼の広報を担当しているのが、まさしくティアラ・ハーグレイブだと思われる。(参照元:celebrity)YouTubeのキュレーションアカウントから動画を出し続けたことで、「Falling」が1年以上前の曲でありながらTikTokでバズることに成功。ドレイク、XXXテンタシオン、リル・テッカらと、数多くのヒットを手掛けた<Internet Money Records>とも契約を結んでおり、現在ヒットしているチームのかけ算のようなアーティストが出来上がった。肩書きとしてはシンガーソングライターだが、エモラップの系譜を強く引き継いでおり、SoundCloud出身のアーティストである。トピックは恋愛を軸に、恋に落ちてから失恋まで、パーソナルなものが多く、共感しやすい。ただ彼が救いを求めているのは、ドラッグではない。どこにもいかない気持ちを歌の中に落とし込んでいる。
ロド・ウェイブ|Rod Wave

日々の生活に疲弊し、救いを求めているとしたら、ロッド・ウェイブを聴くことをオススメしたい。彼のルーツを辿るとその意味が理解できるだろう。少年時代、父親はハスラーであり、そこまでお金に関しては困っていなかった。ただ父親が逮捕されると、環境が一変する。明日食べる金を稼ぐため、彼自身もストリートに身を捧げるようになった。ドラッグ売買や盗みなどを繰り返し、そこから多くのトラブルに見舞われるようになる。2017年に父親が出所すると、マイクをプレゼントされる。そこから音楽の才能が開花すると、<Alamo Records>と契約し、ストリートから抜け出す道を確保した。
現在20歳でありながら多くのことを経験しただけあり、言葉1つ1つに魂のこもったようなリリックを映し出すのが特徴的だ。力強いラップとハイトーンの美しい声をスイッチする器用さが売りであり、ニューアルバムである『Ghetto Gospel』では、さらに高い解像度で表現することを可能にした。有名になるにつれ、それとともに増える孤独、刑務所に行く覚悟を持ちながらのストリートでの生活など、切っても切れないしがらみに苦しみつつもなんとか前を向こうとするリリックは、多くの人に勇気を与えた。アルバムは“Billboard200”で10位を記録。次作は間違いなくこれを超えるものができるだろう。
■Yoshi
1997年生まれ、学生HIPHOPライター。HIPHOPを中心に最新のトレンドを執筆。HIPHOPメディア、Waffling TV運営。Twitter/ブログ