小沢道成の才気みなぎるひとり芝居『鶴かもしれない2020』が開幕
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EPOCH MAN『鶴かもしれない2020』稽古風景 (c)bozzo
EPOCH MAN 新春ひとり芝居『鶴かもしれない2020』が1月9日(木)から13日(月・祝)まで東京・下北沢の駅前劇場にて上演される。
EPOCH MANは、鴻上尚史率いる虚構の劇団の一員であり、近年は新感線☆RS『メタルマクベス』や別冊「根本宗子」第7号『墓場、女子高生』などで存在感を示す俳優・小沢道成が、自らのやりたい演劇を探求するために立ち上げたソロプロジェクト。脚本・演出はもちろん、舞台美術や制作面までほぼひとりで手がけ、寡作ながら毎回ユニークで良質な作品を生み出し続けている。
童話『人魚姫』をモチーフに本気の恋に溺れた人魚の痛みと祈りをパワフルかつロマンティックに描いた『Brand new OZAWA mermaid!』や、上京以来ずっと同じ部屋で暮らし続ける独身女性の孤独と暴走をハイテンションかつアイロニックに描いた『みんなの宅配便』など、女性の心理を描かせたら天下一品の小沢。その代表作と言えるのが、この『鶴かもしれない』だ。2014年の初演、2016年の再演に続き、今回が3度目の上演。愛する男のために、どんどん泥沼に嵌りこんでいく女の末路を、小沢がたったひとりで演じあげる。
本作の下敷きとなっているのは、昔話の『鶴の恩返し』。命を救ってくれた男のために、自分の羽をむしってまで美しい機(はた)を織り上げた鶴の物語と、現代の東京で出会った若い男女のすれ違いをオーバーラップさせながら、物語が進んでいく。3台のラジカセを使った独特の演出スタイルや、いくつものギミックが仕掛けられた舞台美術など、見どころはさまざまだが、最大の魅力は切れ味鋭い小沢のセリフ術。
愛する男に喜んでほしい。ただそれだけなのに、不器用な女はつい方法を間違えてしまう。女がとった行動は確かにアンモラルかもしれない。だけど、そんなふうにしか愛を表現できない気持ちは、きっと多くの人が共感できるはず。いびつで、過剰で、痛々しい女の愛し方と、それに戸惑う男の本音を炙り出す小沢の生々しいセリフは、大なり小なり修羅場を経験してきた大人たちにはまるで自分に浴びせかけられているようで、つい耳を塞ぎたくなりながらも、どうしようもなく哀れでまっすぐな女に心がシンクロしてしまう。
どれだけ年を重ねても、愛し方だけは上手くならない。そんな愛することが下手で不器用なすべての人たちに観てほしい会心の1本だ。
文:横川良明