WEFUNK城田寛治✕SPEEDSTAR RECORDS小野朗が提示する、音楽とダンスの新たな関係
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“ストリートダンスとライブバンドの融合”というコンセプトのもと、2006年から本格的な活動をスタートさせたWEFUNK。ホーンセクションを交えたビッグバンドがソウル、ディスコ、ヒップホップ、J-POPのカバーやオリジナル曲を演奏し、その生々しいサウンドに乗って、ストリートダンサーたちが個性的なダンスパフォーマンスを繰り広げるーーそんなWEFUNKのステージは、音楽とダンスの新たなエンターテインメントの形として注目を集めている。日本のダンスカルチャーの盛り上がりを背景に活動の幅を広げてきたWEFUNKは、2015年1月にSPEEDSTAR RECORDSからミニアルバム『LOST GOVERNMENT』をリリース。メジャーレーベルとタッグを組んだことで、このプロジェクトの可能性は大きく広がったと言っていいだろう。
2016年1月31日(日)にZepp Tokyoでイベント「WEFUNK WORLD FSETIVAL vol.1」を開催するWEFUNK。このイベントに先がけ、WEFUNKの代表である城田寛治氏とSPEEDSTAR RECORDSレーベル長の小野朗氏、そして、城田氏とイベントのディレクションなどを手掛ける北村亮介氏の対談を企画。まずは城田氏、小野氏にWEFUNKのコンセプトと活動スタイル、今後の展開などについて話を訊いた。(森朋之)
「WEFUNKは生演奏で踊れて、大きなショーとして見せられる」(城田寛治)
ーーWEFUNKは2006年に大学の音楽サークルとダンスサークルの合同イベントからスタートしたそうですね。
城田寛治(以下、城田):はい。僕は音楽サークルに所属していて、ダンスサークルとのコラボレーション企画として、学園祭でライブをやったのが始まりなんです。その延長線上で2009年に(川崎)クラブチッタで第一回公演を開催したのですが、予想以上に反響がよく、「また見にいきたい」「自分も出演してみたい」という声が多かったので、「じゃあ、1年後にもう1回やりましょう」と。その後も少しずつ需要が高まり続け、気づけば年に8回も1000人以上のキャパシティの会場で開催させていただけるイベントに成長していきました。
ーーダンスをやっている方からの反響も大きかったわけですね。
城田:そうですね。大学のダンスサークルも流行っていたし、中学校でダンスが必修科目になったこともあり、ダンスカルチャーが急速に大きくなっていたんですよね。ただ、「プレイヤーは増えているけど、それを発表するバリエーションが少ない」という状況があるんです。ダンスコンテストやダンスバトルの大会などは多くありますが、それ以外の出所がないというか。特に「生演奏で踊れて、それがクローズされた空間のセッションではなく、大きなショーとして見せられる」というコンセプトでやっているのはWEFUNK以外にはあまりないので、「出演してみたい」というダンサーが増えたのだと思います。それがここ5年くらいの話ですね。
ーー背景には日本のダンスカルチャーの盛り上がりがある、と。
城田:気づいたら流行っていたという感じなんですけどね。ひとつ言えるのは、ダンスがカジュアルなものとして受け入れられはじめたのが大きいと思います。例えば大学のサークルという現場でいえば、僕が大学生だった頃、ダンスをやっている人は“尖ったことをやっている”というイメージだったんですよね。実際ダンスサークル自体そんなに大きいものではなかったし、客観的にいえばダンスサークルの人たちは好んでマイノリティーであろうとしているような印象を受けました。でもいまはそうじゃなくて、もっとカジュアルにダンスサークルに所属している人が多くなって、ダンスサークル自体がマジョリティになっているとさえ感じます。
ーーなるほど。WEFUNKは2015年1月にSPEEDSTAR RECORDSからミニアルバム『LOST GOVERNMENT』をリリース。小野さんとWEFUNKの接点はどこから生まれたんですか?
小野朗(以下、小野):城田さんと共通の知り合いがいて、「おもしろいイベントをやってるから、1回見てほしい」と言われたんですよね。初めてライブに行ったのは2011年だったんですが、バンドの演奏だけでも楽しめるし、さらにダンサーが入れ代わり立ち代わり登場して、すごくおもしろくて。ただ、SPEEDSTAR RECORDSとしてどう関わっていけるか?という模索はありました。WEFUNKは実際に会場に足を運んで、体感しないとおもしろさが伝わらない。そうなると映像作品にせざるを得ないんですが、カバー曲も多いし、権利や許諾の問題も出てきてしまう。そこで「WEFUNKのテーマ曲を作って、それを会場で売るということであれば、一緒にやれるかもしれない」という話になったんですよね。
城田:CDをリリース出来たのは、WEFUNKにとってはとても大きかったです。まずミュージシャンにとってはメジャーデビューの機会を得ることになりましたし、ダンサーにとっても「自分たちが踊るために作られた音源がパッケージになる」という前例のない出来事がすごく刺激になりました。その後、さらに話を進めていき「既存のイベントの部分から一緒に取り組んでいきましょう」という話になったんですよね。我々としても、WEFUNKというブランドをさらに大きくするタイミングだと捉えています。
ーーイベント運営に関わることは、SPEEDSTAR RECORDSとしても新しい試みでは?
小野:そうですね。イベントの具体的な運営に関しては、城田さんのほうでやっていただけるので、レーベルとしてはその周辺のことを色々とやっていきたいと考えています。イベントでの物販もそうですし、出演者のなかからミュージシャンやダンサーとして独り立ちできる人がいたら、マネージメントにも関わっていけたらなと。イベントに協賛を付けるなど、WEFUNKが大きくなるための役割を担っていきたいですね。

「スターはあまり生まれていないのになぜか裾野ばかりが広がっていっている」(城田寛治)
ーーダンスカルチャーの広がりを含めて、このシーンにはビジネスとしての可能性もあるというわけですね。
小野:先ほども話に出ていましたが、ダンス人口は増えていますからね。ダンスミュージック自体は以前から一般的になっているし、そこに関わっていけるのはおもしろいと思います。もうひとつはWEFUNKの成り立ち、“参加型”というシステムに興味があるんですよね。ネットが発達したことで音楽以外の分野でも自分から発信する人が増えていますが、WEFUNKはまさに“踊りたい、参加したい”という人たちによって成り立っていて、それがビジネスにもなっているので。
城田:音楽の場合は“まずスターが登場して、その後、シーンが大きくなっていく”という広がり方が多かったと思うんですが、ダンスシーンについては、スターはあまり生まれていないのになぜか裾野ばかりが広がっていっているというイメージを受けました。WEFUNKも同じで、現状、1人で何百人ものファンを集客できるようなスターダンサーがいるわけではないんです。「参加したい、出演したい」というダンサーがいて、そのダンサーを見に行きたいというお客さんがたくさんいるという構造なので。下地は出来てきたので、逆に頂上の部分を作っていかないといけないなと思っていますね。
小野:既に土台があるんだから、注目されるスターが登場すれば、さらにシーンを拡大できるという話はしていますね。
ーーWEFUNKのアイコンになるような存在が必要である、と。将来性のあるアーティストの発掘、育成ということでは、SPEEDSTAR RECORDSのノウハウも活用できそうですね。
小野:そこは活かしていきたいですね。レコード会社としてもマネージメント業務の強化は大きい課題なので。あと、ウチに所属しているアーティストがWEFUNKのイベントにゲストで出演できれば、さらにおもしろい化学変化が期待できると思うんですよね。
城田:そこはまさに我々だけではできないところですからね。メディアでのプロモーションを含めて、協力してやっていけたらと。
ーー音楽ファンに広く訴求することを考えると、さらに音楽性を高めていくことも求められると思うのですが。
小野:うん、そうあるべきだと思いますね。
城田:現在はほとんどカバー曲なので、徐々にオリジナル曲を増やしていきたいですね。将来的にはすべてオリジナル曲で構成するイベントも作りたいと思っているんです。またカバー曲についても、通常のダンスイベントで使われる曲はほとんどが洋楽なんですが、WEFUNKに参加しているダンサーの中には「せっかくシンガーが歌ってるんだから、日本語の歌詞がいい」「もっとメッセージ性の強い曲があったほうがいい」という意見も出てくるんですよ。わかりやすいポップスに近い曲であればシンプルにお客さんに喜んでもらえるし、そこから既存のダンスシーンにはない新しい演出も生まれるので。生バンドだからこそ、J-POPも上手くダンスに取り込めるところがあるんですよね。
小野:現在も山下達郎さん、広瀬香美さん、SMAPの曲などで踊ってるんですが、耳馴染みのある曲のほうが盛り上がるんですよね。音楽的にはかなり間口が広いと思います。
ーー『LOST GOVERNMENT』には70年代〜80年代のブラックミュージックのテイストを感じさせる楽曲も収録されているし、40代以上の音楽ファンにもアピールしそうですよね。
城田:そうですね。そういえば去年の12月にCHICが来日したんですが、ぼくらミュージシャンからすれば神様が来日するようなものなので当然見にいくわけですが、若いダンサーのメンバーを誘ったら「シックって誰ですか?」という返事が返ってきたんですよね。普段CHICの曲で踊っているのに、アーティスト本人のことは知らないっていう。そんなこともありつつダンサーと一緒にライブを見にいったのですが、年配のお客さんがみんな楽しそうに踊りながら観覧しているのがかなり新鮮だったみたいで。「自分たちもこういう雰囲気のライブが出来たらいいね」とダンサーに思ってもらえたのが良かったかな、と。

「“知る人ぞ知る、すごいイベントがある”というレベルまでプロモーションしていきたい」(小野朗)
ーーWEFUNKのイベントは学生中心の「WE COLLECTION」、子供が出演する「WE KIDS」、社会人ダンサーが参加できる「WEEKEND HERO」で構成されていて。幅広い世代をダンスでつなぐという役割も担っていきそうですね。
城田:例えば「WEEKEND HERO」では90年代にダンスサークルで踊っていた現在40代の会社員の方々が出演して、若手顔負けのスキルで誰よりも会場を湧かせてしまうということがありました。キッズのレベルもとても高いし、まだまだおもしろいことが出来ると思います。あとは、どんなコンテンツを作っていけるかが大事になってくるでしょうね。
ーー定期的にイベントを開催するだけではなく、WEFUNKオリジナルのコンテンツを打ち出していく。
城田:はい。ダンス人口は増えていますが、プロとして活動する道がなかなか見つからないのが現状だと思います。でも、たとえば劇団四季、宝塚、シルク・ドゥ・ソレイユなどでは、プロのダンサー、ミュージシャンが継続して活躍できている。WEFUNKがそうなっていくためには、できれば常設の会場を持って、同じコンテンツをロングランという形で開催していくのがいちばんいいのかなと。
小野:いまも定期的にミーティングを行っているんですが、パフォーマンスをブラッシュアップして、どんなコンテンツを作っていくかという話も出ていますね。それが進んでいけば、先ほど言ったウチのアーティストとのコラボレーションも意味を持ってくるだろうし。
ーー当然、参加するダンサーのレベルアップも求められますよね。
城田:今年の春のイベントからは、参加希望者が増えてきたので、選考する形を取りはじめました。そのなかで自然とレベルも上がってくると思いますね。WEFUNKのダンサーの中には、ダンスをするだけではなく、振付、演出、そして出演者のキャスティングまでこなす人材もいて。そこから例えばCMの振付など、他の仕事につなげるルートも作っていきたいですね。
ーー2016年はWEFUNKにとってさらに飛躍の年になりそうですね。
小野:既にZepp Tokyoでやれる規模のイベントなのですが、“知る人ぞ知る、すごいイベントがある”というレベルまでプロモーションしていきたいですね。リリースに関してはいまのところ考えてないです。やはり会場で体感してもらわないとおもしろさが伝わらないし、パフォーマンスをブラッシュアップしていくなかで、おもしろいパッケージが出来そうだったら考えようかな、と。
ーー1月31日に行われるZepp Tokyoでのイベント「WEFUNK WORLD FSETIVAL vol.1」」はどんな内容になりますか?
城田:去年はこれまでで最もイベントの数が多く、2500人以上のダンサーが出演してくれたんですけど、そのなかで評判の良かったダンサー達をピックアップして集結させました。さらに全体的な楽曲の構成演出も加わっているので、より良いものになるんじゃないかな、と。集客もWEFUNK史上最も多くなりそうなので、会場全体で、WEFUNKならではの臨場感を味わってもらえるのではないでしょうか。これまでの集大成であり、その後、どういう方向に進んでいくかが見えるイベントになると思いますね。
小野:今回のイベントは、主催がSPEEDSTAR RECORDSで、運営がWEFUNK。手始めにTシャツを販売するなど、新しいことも行っていく予定です。成功しても失敗してもビクターの業績になるので、そこはリスクを背負ってやっていこうと思っています。
(取材・文=森朋之/写真=竹内洋平)
■イベント情報
「WEFUNK WORLD FESTIVAL」
1月31日(日) Zepp Tokyo
OPEN 17:45 START 18:30
■OFFICIAL WEB SITE
http://wefunk-world.com/