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『IT/イット』『ソウ』のホラー最前線製作チームが贈る 『アナベル 死霊博物館』でパワーアップしたシリーズの醍醐味

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 アメリカ中で幽霊や悪魔を調査する心霊研究家のウォーレン夫妻(パトリック・ウィルソン&ヴェラ・ファーミガ)。東に悪魔があれば祓いに行き、西に幽霊屋敷があれば調査に向かう。そんな生活を送っているうちに、「これはウチで引き取っておきましょう!」と、全米中の激ヤバ心霊グッズが家に集まってしまった。中でも呪われたアナベル人形の威力は凄まじく、触れたら即心霊現象という逸品だ。他にもデンジャラスな呪われし品々が目白押しなので、夫妻は家の地下に死霊博物館を作って心霊グッズを封印。そして今日も今日とて夫妻は出かけることになるのだが……2人の間には娘のジュディ(マッケナ・グレイス)がいた。夫妻は学生のメアリー(マディソン・アイズマン)にジュディのベビーシッターを任せる。しかし、そこにメアリーの悪友ダニエラ(ケイティ・サリフ)がやってきた。無難にお留守番を終わらせたいメアリーは「この家は激ヤバだから、下手なことはしないように」とダニエラに厳しく言い聞かせる。が、ダニエラはある目的から死霊博物館へ足を踏み入れ、あろうことかアナベルの封印を解き放ってしまう! もう取り返しはつかない。悪夢の始まりとなる。家中の心霊グッズが暴走を始め、怪奇現象は起きまくり。人形は勝手に動く! 鎧武者はブツブツ言い始める! 変な人が家にいる! 謎の怪物が庭を歩き回る! 果たして3人は無事にお留守番を終えられるのか!?

【動画】『アナベル 死霊博物館』予告映像

 『死霊館』(2013年)シリーズ、まさかのスピンオフである。『死霊館』シリーズとは、実在するアメリカの心霊研究家ウォーレン夫妻を題材に……と、細かい説明を始めると非常に長くなるので、ここはザックリで終わらせたい。簡単にいうと、幽霊屋敷シリーズである。最大の特徴は「血がブシャー!」「見終わったあとにゲンナリ……」的な要素よりも、とにかく瞬間的な「ビックリ」に重きが置かれている点だ。不気味で静かな“待ち”の時間から、絶妙なタイミングで……叫び声が響く! 勝手に物が動く! 幽霊が全力疾走してくる! ……と言った“ギャー!”が発生。この“来るぞ、来るぞ、ギャー!”な、遊園地のオバケ屋敷的な体感が『死霊館』シリーズの醍醐味だ。

 そのオバケ屋敷感覚を突き詰めたのが、本作『アナベル 死霊博物館』(2019年)である。同じスピンオフでも、ややダーク方向に寄せていたこれまでの『アナベル 死霊館の人形』(2014年)、『アナベル 死霊人形の誕生』(2017年)とは異なり、完全にアトラクション方向にステータスを全振り。106分、とにかくあの手この手でビックリを仕掛けてくる。ちなみに製作はジェームズ・ワン。かつてデス・ゲームものの金字塔『ソウ』(2004年)を作り上げ、『ワイルド・スピード SKY MISSION』(2015年)で観客を号泣させ、『アクアマン』(2018年)を怒涛のノンストップ・アクションに仕上げた才人にして、サービス精神の塊である。監督・脚本を務めたゲイリー・ドーベルマンは脚本家としてワンと仕事をするほか、ワン案件以外でも『IT/イットTHE END “それ”が見えたら、終わり。』(2017年)にも脚本で参加しており、ホラーの最前線に立つ人物。この2人がサービス精神を爆発させているのだから、こうなるのも当然だ。ついでに実話という体裁も完全に吹き飛んだが、それはもういいだろう。

 そして本作を固めるのは4人の少女だ。心霊能力者の母の血のせいか、幽霊が見えるジュディ。彼女はその力ゆえに孤独と恐怖に苛まれている。そんなジュディを力強く励ますのがメアリーだ。真面目で、華やかで、常にポジティブ。それでいて嫌味がないのが凄い(演じるアイズマンは『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』(2017年)でもヒロインを務めている)。そして悪友のダニエラだ。死霊博物館を解放するトラブルメイカーだが、ただの「余計なことをする人」には収まりきらない、憎めなさがある。この人間の少女3人のワチャワチャを見ているだけでも楽しい。とは言え、やはり本作で最も目立つ少女はアナベル人形その人だろう。今やアナベルは単なる1ホラー映画のキャラクターを超えて、かつてジェイソンやフレディ、レザーフェイスやジグソウがいたポジションに鎮座している。ホラー映画界のビッグスターらしく、観客の期待に応えるように、今回も堂々とした存在感を発揮。数ある心霊グッズを従えて、少女3人に執拗な嫌がらせを敢行する。なおアナベル人形は実在する呪いの人形であり、実際に人が何人か死んでいる。ただ今のところワンが原因不明の奇病にかかったとか、そういう話は聞かないので、たぶん今の扱いを嫌がってはいないのだろう。たぶん。

 魅力的な登場人物と、サービス精神の塊である作り手。この2つの要素だけで、本作は成功が約束されていると言えるだろう。舞台はビックリするくらい家の中だけだが、106分間、何度も“ギャー!”と絶叫できるし、時には笑ってしまうこともある。そして、見終わったあとはスッキリ爽快。冬の夜に家族や友達でギャーギャー叫びながら見たい1本である。オバケ屋敷に行きたいけど遊園地に行くのが寒くて大変という人には、是非オススメしたい1本だ。

(加藤よしき)