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佐藤信らが横浜の新創作現場から放つ平成の企業戦士の物語

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『会社の人事~歌なき平成の歌 / 令和アンダーグラウンド』

「劇場」や、演劇が上演される“場”が近年、少しずつ変容しているように思う。若葉町ウォーフも、そんな場所のひとつではないだろうか? 『会社の人事~歌なき平成の歌 / 令和アンダーグラウンド』が1月12日(日)から20日(月)まで横浜の若葉町ウォーフで上演される。

若葉町ウォーフは、劇作家・演出家の佐藤信らを中心に運営される民間アートセンター。佐藤と言えば劇団黒テントでの活動で日本の演劇界を牽引してきただけでなく、世田谷パブリックシアターや東急文化村・オーチャードホールなどさまざまな大劇場の芸術監督・プロデューサーをつとめてきた人物だ。そんな彼が仲間たちと4人で2017年に立ち上げたこのスペースは築50年のビルを改築し、小劇場・稽古場・宿泊スペースを兼ね備えている。従来の民間の小劇場ではできなかった、施設の特徴を生かしたアーティスト・イン・レジデンスや、長期滞在型の国際ワークショップなども可能になる場所なのだ。大岡川と伊勢佐木モールの中間という、その立地も面白い。

そんな個性的なアートセンターの新たな主催公演は、「平成を駆け抜けた“おっさん”たちの物語」。大岡川の川縁、時空の歪みに現れたバーに、会社を退く日を迎えた男が迷い込む……まさにこの若葉町ウォーフという場所と、この時代に合わせて書き下ろされた作品だ。作者の犬井邦益は、自分自身企業戦士として働いていた経験があるという。演出と美術は佐藤が担当、出演者には龍昇、塩野谷正幸(流山児★事務所)、大西一郎、丸山雄也(平泳ぎ本店)、服部容子、牧凌平という二世代の俳優が顔を揃えた。

明けて「令和2年」がスタート。新元号にもようやく慣れてきた今日このごろに、改めて「平成」を振り返ってみるのも良いのでは? それも昭和と平成の匂いがしっかりと染み付いた場所で。そんな体験を叶えてくれる公演だ。

文:川口有紀