Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
ぴあ 総合TOP > 白石麻衣が胸に秘めた乃木坂46への熱い思い “グループの顔”として残した功績を振り返る

白石麻衣が胸に秘めた乃木坂46への熱い思い “グループの顔”として残した功績を振り返る

音楽

ニュース

リアルサウンド

 乃木坂46 1期生の白石麻衣が1月7日未明、グループからの卒業を発表した。公式発表によると「3月25日リリース予定の25thシングルの活動をもって活動終了」「正式な卒業日程は現時点では未定」とのことで、本人のブログによると「卒業ライブも出来たらいいなと思ってる」という(※参照:感謝。 | 乃木坂46 白石麻衣 公式ブログ)。

参考:乃木坂46 白石麻衣、多種多様な楽曲に対応できる歌唱力 鈴木雅之とのコラボパフォーマンスを機に振り返る

 グループ最初期から生駒里奈(1期生。2018年5月卒業)と並び、「乃木坂46の顔」としてグループ内外で幅広い活躍を続けてきた白石。“絶対的エース”と呼ばれることの多い彼女だが、実はシングル表題曲にて単独センターを務めたのは約8年の歴史の中で二度しかない。最初にセンターに就任したのが、2013年7月発売の6thシングル『ガールズルール』でのこと。グループ結成以来、そのクールビューティなビジュアルから高い人気を誇っていたが、初めてセンターに立ったのはCDデビューから約1年半後、結成から数えても約2年後と意外と時間が経ってからであることに気づく。それも、デビューシングル『ぐるぐるカーテン』(2012年2月発売)から5thシングル『君の名は希望』(2013年3月発売)までの5作連続で生駒をセンターに置くことで、グループのイメージを固める必要があったからだろう(深夜の生放送など、当時18歳未満だった生駒が出演できない場合は白石がセンターを務めることもあった)。

 その後、6作目で白石が満を持してセンターに就任したときは好意的な声が寄せられ、発売初週で前作より8万枚以上もセールスを上げる結果を打ち出した。今でも必ずといっていいほどライブで披露される「ガールズルール」は、白石の振り切った煽りとともに「乃木坂46のライブ名物」として定着しており、イントロが鳴り響いた瞬間に会場のボルテージが一気に上昇するあの空気感にカタルシスを覚えるファンも少なくないだろう。

 だが、『ガールズルール』以降彼女が単独でセンターに立つ機会はなかなか訪れなかった。13thシングル『今、話したい誰かがいる』(2015年10月発売)、17thシングル『インフルエンサー』(2017年3月発売)の2作で西野七瀬とダブルセンターを務めているが、初めて日本レコード大賞を獲得した『インフルエンサー』のイメージと相まって、この2人が真ん中に立つ姿こそが“一般的な乃木坂46像”なのかもしれない。

 だからこそ、日本レコード大賞受賞後初の新曲となる20thシングル『シンクロニシティ』(2018年4月発売)で白石が二度目の単独センターを務めることとが決まった際には、乃木坂46が本気の勝負をかけにきたことが理解できたはずだ。つまり、白石が単独でセンターに立つときは乃木坂46として大きな勝負に出るタイミングであり、グループにとっても白石センターは無闇矢鱈と披露するものではないという考えもあるのかもしれない。“絶対的エース”は常に真ん中に立つ必要はない。ここぞというときにこそ、その力を発揮すればいいのだから……と。その結果、乃木坂46は『シンクロニシティ』で二度目の日本レコード大賞を獲得し、昨年大晦日の『NHK紅白歌合戦』では欅坂46、日向坂46とともに同曲を披露しているのだから。

 また、白石はグループ内で重要な役割を果たしているだけではなく、率先してグループの外に出ていき、後続たちの道しるべとなってきた。2013年1月にフジテレビの競馬情報バラエティ番組『うまズキッ!』のレギュラーMC、同年3月には女性ファッション誌『Ray』の専属モデルに就任している。彼女のグループ外での活躍は、間違いなく他メンバーのバラエティ番組への躍進、ファッション誌専属モデルへの進出の足がかりになったことは間違いない事実だ。

 さらに、白石はソロ写真集においても先陣を切っており、2014年12月に出版された1stソロ写真集『清純な大人』は初版発行部数10万部を突破。2017年2月発売の2ndソロ写真集『パスポート』は現在までに27度の重版がかかり、累計発行部数38万部の大ヒット作となった。「写真集に強い乃木坂46」のイメージを定着させ、同期メンバーや後輩たちがあとに続きやすい状況を確立させたのは、明らかに白石の功績によるものだ。

 そんな白石に対して、世間一般的には「綺麗なお姉さん」という“静”のパブリックイメージがあるのではないだろうか。それは先のファッションモデルとしての活躍や、化粧品などのテレビCMで見せるクールビューティさによるものが大きいのだろう。しかし、結成時から取材などを通じて乃木坂46を見てきた筆者の印象は少々異なり、「常に熱いものを内に秘めた、仲間思いのいいヤツ」という印象が強いメンバーだった(いや、筆者のみならず彼女をずっと追ってきたファンにとってのイメージもきっと一緒だろう)。

 グループ活動初期、街中やアミューズメントパークなどで撮影をしていた際、女子数名が制服姿だったことからよくAKB48と間違われることが多かった。そんなときでも、白石は率先して「乃木坂46です!」と笑顔で答えていた。しかし、その後「グループ名が定着していない」事実を悔しがっている姿も目にしている。また、結成2周年間近のタイミングには「1人ひとりのソロ仕事が増えてきているから、そういうところでみんながんばっていけば乃木坂の知名度も広がっていくと思うし、まだ乃木坂46のことを知らない人もたくさんいると思うからしっかり広めていきたい」「1人ひとりの乃木坂に対しての気持ちがすごく重要なんじゃないかな。私も個人のお仕事をいくつかやらせてもらっていて、その中ではもちろん私のことを知ってもらうことも大事だけど、私はやっぱり乃木坂46っていうグループをたくさんの人に知ってもらいたい」と発言しており、誰よりもグループに対して熱い思いを持っていることが伺える(※参考:音楽ナタリー/乃木坂46「ガールズルール」特集 – 白石麻衣&生駒里奈が考えるセンター論と乃木坂46の未来)。

 だからこそ、同じグループのメンバーに対して仲間思いな面を見せることも多い。個人仕事のスケジュールがタイトになったここ数年はすべて観ることは難しいと本人も言っていたが、以前はメンバーが出演する舞台には毎回必ず顔を出していた。筆者も何度か会場で見かけたことがあり、それについて尋ねると「できる限りスケジュールを調整して観たいと思っている」と答えてくれた。それこそ、彼女は昨年11月の『乃木坂46 3・4期生ライブ』にも駆けつけている。当日は生放送の音楽番組出演があったため、彼女がライブを観ることができたのは前半のみだったが、そんな状況下でも後輩たちにエールを送りたいと思ったのだろう。その心意気に筆者は胸を打たれた。

 現在発売中の雑誌『乃木坂46×週刊プレイボーイ2019』で白石と齋藤飛鳥の対談を行った際に、白石は24thシングル『夜明けまで強がらなくてもいい』(2019年9月発売)で4期生の遠藤さくら、賀喜遥香、筒井あやめがフロントに立つフォーメーションについて「本当に初期の、生駒ちゃんが真ん中にいた頃と同じような空気感に近いのかも。だから、2列目に私や松村(沙友理)がいるのがちょっと懐かしかった」と発言。と同時に、「私たちもこの8年間ですごく成長したと思うけど、4期生もこの1年で堂々としたパフォーマンスができるようになったのを見ると、すごく頼もしいな」と感じたと答えている。こういった後輩たちの成長が卒業の後押しになったことは、先のブログでも綴られているため、このインタビューでの発言は自身の卒業を念頭に置いたものだったのかもしれない。

 この卒業が発表される数日前、リアルサウンドにて筆者が担当した乃木坂46新キャプテン・秋元真夏のインタビューが公開されている(※参考:乃木坂46 秋元真夏 1万字インタビュー「後輩グループも背負っているという責任感が芽生えてきた」)。ここで秋元は卒業生が増えていく現状について、「特になーちゃん(西野七瀬)のような『乃木坂46の顔』としてグループを引っ張ってくれた子がいなくなると、残ったメンバーにはその子の穴を埋めなくちゃいけないという気持ちが芽生えると思うんです」「ただ、その穴に誰かを入れたら必ず当てはまって、埋まったから完成ということには絶対にならないし、以前と同じものにするのは無理だということにも気づいた」と語っている。誰も西野の穴を埋めることはできないし、きっと白石が卒業したあとの穴も同じようには埋められないかもしれない。しかし、今の乃木坂46には西野や白石にも匹敵する将来性に満ちた後輩たちがたくさんいる。昨年11月の『乃木坂46 3・4期生ライブ』を少しでも観ることができた白石には、きっとその明るい未来が見えたことだろう。

 思ってもみない形で(いや、ある意味ではいずれ訪れることを想定していたが)大きな変化のタイミングを迎えることになった乃木坂46。白石の明確な卒業タイミングはまだ決定していないが、この夏は乃木坂46にとって試練の季節になることだろう。しかし、白石が認めた後輩たちが多数在籍する今の乃木坂46だからこそ、その試練を乗り越えられると信じている。(西廣智一)