オダギリジョー負傷に廃部危機 土屋太鳳『チア☆ダン』第6話で最終回的ムードが漂い始める
映画
ニュース
太郎(オダギリジョー)が事故に遭ってしまうという衝撃的な展開で幕を閉じた先週の第5話。対立をつづけていたチアリーダー部との和解の兆しも見え始めていた中で、まさに一進一退を繰り返す波乱万丈な福井西高校チアダンス部「Rockets」。さらに太郎の不在と重なるように、穂香(箭内夢菜)が練習中に足を痛めてしまい、穂香の父が他の保護者を引き連れて学校に乗り込み、「廃部」を要求してくるのだ。
参考:『チア☆ダン』は“古い常識”を一掃する清々しさ! 部活系青春ドラマとしての王道と革新性
8月17日に放送された金曜ドラマ『チア☆ダン』第6話。ドラマも折り返し地点を越え後半戦に突入した途端に、これまでRocketsを支えてきた太郎が重傷を負って入院し、顧問の不在を理由に何度目かの廃部の危機に。毎週ピンチが訪れるのは連続ドラマの常とはいえ、太郎の妻・今日子(松本若菜)からわかば(土屋太鳳)に託されたノートとそれを読むわかばの脳裏によぎる思い出といい、どうしてだか突然最終回的なムードが漂い始めるのだ。
そんな今週のエピソードでは「父親」の存在というのがひとつ大きなファクターとなっていたと見受けられる。娘である麻子(佐久間由衣)に「9割うざくて1割いないと寂しい」と表現される桜沢教頭(木下ほうか)、娘を心配するあまり娘が見つけた夢をつぶそうとしてしまう不器用な穂香の父親、そして幼い息子が自然とチアダンスを覚えてしまうほど研究熱心な太郎。
チアダンス部の存続の可否を一任された桜沢教頭は、自宅のリビングに飾られている娘・麻子の写真を見て思い悩む。商店街の祭りでチアダンスを踊り満面の笑みを浮かべる麻子と、対照的に浮かない表情をしている高校の入学式での写真。初めは頭が堅いだけだった桜沢教頭は、娘の変化によって彼自身にも徐々に変化が生じつつも、教頭という自身の立場との間に常に揺れていたわけだ。
そんな彼が太郎の病室を訪ねていくシーンで、太郎から語られる教師をしている理由と、Rocketsへの想い。「彼女たちがどこまでも、望むだけ高く飛べるように手助けしたい」。この言葉は教師として、であると同時に、Rocketsの「父親」としての言葉とも取れる。その言葉に心動かされた桜沢教頭は、顧問代理を引き受ける。いわば、太郎からRocketsに対する父性が桜沢教頭に分け与えられたといったところだろう。
それと同時に、太郎という「父性」を失ったことで、自ら成長を続けるRocketsのメンバーたち。とりわけ大きな変化が生まれたのは、感情を表に出すことが苦手な琴(志田彩良)であるのは言わずもがな。彼女がこれまで自分の意思で何も決めることができなかったのは、日舞の家元という親の存在があったからだろう。そして、毎週のように喧嘩をしていた彼女たち全員が、今週のエピソードでは揉め事ひとつ起こさなかったというのも、彼女たちの成長を象徴している。もっぱら最終回直前の雰囲気を漂わせた展開は、一気にRocketsを精神的な成長へと導き、終盤に向けての弾みをつける重要な役割を果たしたということだ。
それはそうと、太郎の入院する病室の窓の下で、Rocketsのメンバーが、すっかり定番となったサンボマスターの「できっこないを やらなくちゃ」を踊るシーン。このくだりを見ると、96年に制作されたイギリス映画『ブラス!』の中で、入院した指揮者の病室の外でブラスバンドの面々が「ダニー・ボーイ」を演奏するという名シーンを想起させる。土屋が主演を務めた『青空エール』や、清水尋也が出演していた『ハルチカ』など、その後様々な作品でオマージュされている名場面が、チアダンスとなってオマージュされるというのは、ちょっぴり新しさを感じるものだ。(久保田和馬)