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YOASOBIは2020年要注目新人となるか? 「夜に駆ける」Spotifyバイラルチャート急上昇を受けて

音楽

ニュース

リアルサウンド

参考:https://spotifycharts.com/viral/jp/weekly/latest

 Spotifyの「バイラルトップ50(日本)」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「Spotify Top 50チャート」とは異なり、純粋にファンが聴いて共感共有した音楽のデータを示す指標を基に作られたプレイリスト。同チャートを1週間分集計した数値の今週分(1月9日公開:1月2日~1月8日集計分)のTOP5は以下の通り。

1位:YOASOBI「夜に駆ける」
2位:LiSA「紅蓮華」
3位:HALO「LIAR」
4位:Vaundy「東京フラッシュ」
5位:After The Rain「1・2・3」

 前回取り上げたHALOの「LIAR」や、紅白でますます勢いを増したLiSAの「紅蓮華」が上位にランクインするなか、1位に輝いたのはYOASOBI「夜に駆ける」。

 YOASOBIは「monogatary.com」で2019年7月~9月にかけて実施されていたコンテスト『モノコン2019』内の「ソニーミュージック賞」で大賞に輝いた物語を楽曲化するために結成された、Ayaseとikuraによる音楽ユニットで、「夜に駆ける」は11月16日にYouTubeとニコニコ動画でMVが公開された第1弾楽曲。動画のほうは公開から2カ月と少し経っているが、YouTubeとニコニコ動画あわせて210万回を突破している。

(参考:TK from 凛として時雨×ヨルシカ特別鼎談

 楽曲が各配信サービスにアップされたのは12月15日。以降、半月かけてSpotifyオフィシャルプレイリスト『太陽を見てしまった』や『キラキラポップジャパン』に入ったりと、有力プレイリスト入りや歌ってみた・弾いてみた動画などが次々に公開されるなど、動画サイト・SNSで積極的にシェアされてきた結果が、ここに来て現れたのか、1月6日の「バイラルトップ50(日本)」で1位を獲得すると、そこから1位を継続的にキープしている。

 楽曲を手がけているのは、若手ボーカロイドPのなかでも注目度の高いAyase。彼は2018年12月よりボーカロイド楽曲の投稿を開始し、2019年4月に投稿した「ラストリゾート」はYouTube再生250万回を突破。同年11月にリリースしたEP『幽霊東京』の表題曲も、1月2日付けでニコニコ動画の「殿堂入り」を果たしていたり、ボーカルを務めるikuraは、東京海上日動あんしん生命のCMでの歌唱、アコースティックセッションユニット・ぷらそにかでの活動でも注目を集め、個人名義の幾田りらでも2019年11月にミニアルバム『Jukebox』をリリースしている。

 楽曲は、先述のように『モノコン2019』の大賞作品である、『タナトスの誘惑』(星野舞夜 著)を原作としたもの。Ayaseの手がける多くの楽曲に顕著な、妖しく少しアダルトな雰囲気を醸し出すジャズ~フュージョン的な鍵盤のフレージングと、130に近いBPMでリズミカルに鳴るイーブンキックは健在で、バッキングのギターもリズムをしっかりと作り上げる手助けをしている。構成も淡白なAメロ→力技の転調を経て、矢継ぎ早に言葉が繋がっていくBメロ→エモーショナルな鍵盤と歌が絡み合うサビ→ドロップ的に鳴るキャッチーな鍵盤リフの間奏・アウトロと、ボカロ文化圏の要素を含みつつ、ヨルシカやずっと真夜中でいいのに。のように、オーバーグラウンドで活躍する動画サイト発のポップスに近い強度を感じさせる。そこにikuraの柔らかく陽性なボーカルが、時折エフェクトによって変化しつつ、転調にあわせて次々と表情を変えることでキャッチーに聴ける、絶妙なバランス感を持った楽曲といえるだろう。

 今回のバイラルチャート入りは、これらの楽曲やMV、先述した「幽霊東京」のセルフカバー動画などの公開が集中していること、大きなプレイリストに入ったことも理由の一つとして挙げられるが、なにより大きいのはコンテンツとしてのパワーだろう。先に記したような楽曲の持つパワーが凄まじいものであるということが、先週以降にラジオオンエアが増加したことなどからもよくわかるし、椎名林檎のツアー映像や、Maison book girl「闇色の朝」MVなどを手掛けた東京藝術大学在学中の注目クリエイター・藍にいなが手がけた映像や、『タナトスの誘惑』自身の持つ物語としてのポテンシャルが噛み合ったからこその結果なのかもしれない。余談だが、個人的には欅坂46が「避雷針」や「語るなら未来を……」などで見せる世界観ともマッチしているので、この2点が交わる未来も見てみたい。

 先々が楽しみなYOASOBIだが、1月18日には第2弾楽曲の「あの夢をなぞって」(いしき蒼太原作『夢の雫と星の花』)も公開される。この楽曲を待って、彼らが2020年注目の新人足りえるのかどうかをあわせて判断してみるのもいいかもしれない。(中村拓海)