神聖かまってちゃん・ちばぎん涙のラストライブ、の子が30年前に盗んだキラカード返す
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脱退するちばぎん(右)に、30年前に盗んだキラカードを返そうとするの子(左)。(撮影:真島洸)
神聖かまってちゃんが全国ツアー「メランコリー × メランコリー」のファイナルとして昨日1月13日に東京・Zepp DiverCity TOKYOでワンマンライブを開催。この日をもって、ベーシストとして10年以上にわたってバンドを支え続けたちばぎんが脱退した。
ステージにメンバーが登場すると、の子(Vo, G)が満員の観客に向けて「人生でもなんでも終わりは来る。今日は神聖かまってちゃんとしての1つの終わりだ。だからお前ら、終わりの終わりまで俺に衝動をくれ。全部感じ取ってやるから」と力強く言い放ち、「怒鳴るゆめ」でこの4人での最後の神聖かまってちゃんのライブをスタートさせた。とはいえ、彼らの表情には現メンバーでの終わりを感じさせる寂寥感のようなものはなく、4人は普段と変わらないアグレッシブなライブを展開。「るるちゃんの自殺配信」「ゆーれいみマン」「日々カルチャア」と演奏は続き、バンドの放つ爆発的なエネルギーを打ち返すかのようにオーディエンスが腕を振り上げて盛り上がる。
彼らはその後、「夕暮れの鳥」で雰囲気を一転させて沈む夕日のような橙色の光を背に浴びながらメランコリックなサウンドを響かせ、「映画」でダイナミックに空が晴れ上がるような爽快感あふれる演奏を披露。「夕暮れメモライザ」や「毎日がニュース」ではフロア後方の観客も含めて多くの人々が跳ねながら盛り上がり、会場に一体感が生まれていた。前のめりに突っ走るようなスピード感のあるアンサンブルで「レッツゴー武道館っ!」や「肉魔法」が繰り出されると、フロアの熱気もどんどん上昇。の子が何度も「衝動をくれよ!」と煽るのに応えて観客の声も次第に大きくなり、さらにそれに応じるようにメンバー4人のテンションも高まっていく。
会場を静かで厳かな雰囲気に満たした「おやすみ」を経て「夜空の虫とどこまでも」がスタートすると、ステージ後方の黒い幕が開き、メンバーや観客の頭上にレーザーが放たれた。暗いステージ上に照射された無数のレーザーが4人の後ろに模様を描き出し、美しく神秘的な演出にフロアからため息が漏れる。さらにカラフルなレーザーがシューティングゲームのように会場を飛び交う中「Girl2」「バグったのーみそ」「塔を登るネコ」が披露され、の子とmono(Key)はハンドマイクでうれしそうに踊りながら歌った。「ぺんてる」が終わると、ギター1本の伴奏に乗せての子とmonoがフリースタイルラップを行い、そのままの子が「2年」を弾き語りで歌唱。2番からほかのメンバーが演奏に参加し、の子は力強い歌声を響かせた。この曲が終わったところでちばぎんが「最後の曲でした」と告げ、メンバーはステージをあとにした。
どこからともなく発生した、アンコールを求める「ちばぎん」コールが会場中に広がり、これを聞いたの子はステージに戻って「主人公は俺だ! ちばぎんではない!」と観客に釘を刺す。ちばぎんはここでファンに向けて、最後の日を迎えた感慨やこれまで応援してくれた人々への感謝の気持ちを語ろうとするが、その都度の子が横から入ってきて話の腰を折り、なかなかトークが前に進まない。いかにも神聖かまってちゃんらしいグダグダな展開の中、結局ちばぎんは「もう俺、言うことないから!」と言ってメッセージを伝えることをあきらめ、観客に向けて「お前らが見せてくれよ! 『やっぱ神聖かまってちゃんが一番カッコいいよな』ってところをお前らが見せてくれよ!」とシャウト。「天文学的なその数から」やバンドの代表曲である「ロックンロールは鳴り止まないっ」「フロントメモリー」を畳みかけ、アンコールを終えた。
その後も止まない「ちばぎん」コールを受けて、三度メンバーがステージに登場した。の子はこの日の1曲目だった「怒鳴るゆめ」が当初はラストに演奏される予定だったことを明かし、「神聖かまってちゃんは世間的にマジクソなテロリストみたいなバンドだと思われてるけど、もともとは少年少女が夢を追い続けるような曲から始まったから、ちばぎんが『怒鳴るゆめ』を推すのはそういう意味もあるのかな」と自説を展開。これについてちばぎんは「monoくんに『幼稚園のとき一緒だった大島ってやつとバンド組むことになった。そいつが作った音源だから聴いてくれ』って言われて初めて聴いたのが『怒鳴るゆめ』だった」と、19歳の頃のことを振り返りながらこの曲の重要さを説明した。
の子が観客に向けて演説をするように「ちばぎんみたいに金はないけど幸せを手に入れた人もいると思う。monoくんみたいに離婚して地獄に落ちた人もいると思う。この中にも、人生に成功した人も失敗した人もいっぱいいると思う。でもどんだけ成功しても、どんだけ失敗しても、死は平等にやってくる。今日ここに来れずに死んだ人も10人くらい知ってる。死ぬ前になったら『あれをやっておけばよかった』って、どんだけやっても絶対に思うんだよ。それを変えるのは今しかねえんだよ! お前なりのやり方で衝動をバーストさせてくれ!」と煽り、いよいよ現編成での最後の1曲に。ちばぎんによるタイトルコールでスタートしたのは「23才の夏休み」だった。の子はマイクから離れてステージの中央で歌い、オーディエンスはの子と一緒に盛大に合唱。たくさんの人々の歌声に包まれながら、の子はファイルのようなものを手にしてちばぎんをステージ中央に呼んだ。
の子はこのファイルが、自宅で探して見つけた、幼稚園の頃に集めていた「SDガンダム外伝」のシールのコレクションであることを説明。当時ちばぎんの誕生日会で家族がビンゴゲームをしている間に、ちばぎんの部屋に忍び込んで「キングガンダムII世」と「邪獣王ギガサラマンダー」を盗んでいたことを告白し、見つかったそのうちの1枚「邪獣王ギガサラマンダー」と、見つからなかった「キングガンダムII世」の代わりの「バーサル騎士ガンダム」を30年ぶりに彼に返すと話した。そして観客が「23才の夏休み」を合唱し続ける中、この曲の「君が僕にくれたあのキラカード その背中に貼り付けてやるよ」という歌詞の通り、の子はちばぎんの背中に思いっきりシールを貼り付け、「俺が昔ちばぎんから授かった熱い魂は返した!」とシャウト。胸を打つ思いと、「2枚もパクってたのかよ」という驚きとが一体になって、ちばぎんは笑いながら泣き崩れる。の子はちばぎんに「泣いてんじゃねえ! ダイブしろ!」とけしかけ、フロアに飛び込んだちばぎんに続いて自らも泣きながらダイブ。会場を感動で包んでラストナンバー「23才の夏休み」は終了した。
しかし、このライブを終わらせたくないの子は「怒鳴るゆめ」を歌うように観客に促し、再び会場中が大合唱に。曲がアウトロを迎えても「終わらせねえぞ! 終わらせねえぞ!」と必死で叫び、メンバーに何度も何度もラストのキメを繰り返させた。ようやく曲が終わると、の子はしみじみと「ケンカしたりいろいろあったけど、思い出ってのはいつもきれいでズリいな」と吐露。さらにちばぎんに「奥さんを大切にしろよ。お前は不器用。俺とお前は正反対じゃん? もっと甘えていいんだよ」と語りかけ、これにちばぎんは「ほら、神聖かまってちゃんにはずっと甘えん坊がいたからさ?」と笑って返した。最後にちばぎんが「今日来てくれた人も配信で観てる人も、スタッフさんも全員で神聖かまってちゃんで、みんなでここまでやってこれて幸せでした。この神聖かまってちゃんで今までできてよかったと思います。ありがとうございます」と挨拶。それを見たの子は「何しんみりしてんだ! 叫べや! 精神開放しろ!」と絶叫し、最後にメンバーと観客が一緒にシャウトをして締めくくることになった。それでも演説をやめないの子を、ちばぎんが肩車をしてステージから退場。音楽ナタリーのインタビューでこの日のライブについて「『4人でやってきた集大成を見せてやる』という気持ちはない」と語っていた彼らだったが、エモーショナルで感動的なシーンからグダグダな展開まで“神聖かまってちゃんらしさ”をすべて詰め込んだこの公演は、結果的にこの4人での集大成的なライブとなった。
神聖かまってちゃん「メランコリー × メランコリー」2020年1月13日 Zepp DiverCity TOKYO セットリスト
01. 怒鳴るゆめ
02. るるちゃんの自殺配信
03. ゆーれいみマン
04. 日々カルチャア
05. 夕暮れの鳥
06. 映画
07. 夕暮れメモライザ
08. 毎日がニュース
09. レッツゴー武道館っ!
10. 肉魔法
11. おやすみ
12. 夜空の虫とどこまでも
13. Girl2
14. バグったのーみそ
15. 塔を登るネコ
16. ぺんてる
17. 2年
<アンコール>
18. 天文学的なその数から
19. ロックンロールは鳴り止まないっ
20. フロントメモリー
<ダブルアンコール>
21. 23才の夏休み ~ 怒鳴るゆめ