声優初挑戦で主演に抜擢! 北香那が語る、『ペンギン・ハイウェイ』14歳の“アオヤマ君”の役づくり
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『夜は短し歩けよ乙女』『有頂天家族』などの作品で知られる森見登美彦の同名小説を映画化したアニメーション映画『ペンギン・ハイウェイ』が8月17日より公開された。気鋭のアニメーションスタジオ“スタジオコロリド”の初長編作となる本作では、無限の可能性を秘めた小学4年生の少年“アオヤマ君”が体験する、少し不思議で一生忘れられない、ひと夏の成長が描かれる。
参考:宇多田ヒカルの主題歌に乗せて描かれる“ひと夏の冒険” 『ペンギン・ハイウェイ』SPトレーラー公開
今回リアルサウンド映画部では、主人公アオヤマ君の声を担当した北香那にインタビュー。初挑戦となった声優に対する思いや、年齢も性別も異なるキャラクターの役作りについて話を聞いた。
ーー声優初挑戦とは思えないほど声の演技が上手くて驚きました。もともと声優の仕事には興味があったんですか?
北香那(以下、北):本当ですか!? 声優をやるのは、私の一つの夢だったんです。なので、アオヤマ君役に決まったと聞いたときは、「夢が叶ったんだな」と嬉しくて泣いてしまいました。このお仕事をやっていてよかったなと。
ーーそれほど声優には憧れがあったんですね。いつ頃から声優の仕事をしたいと思っていたんでしょう?
北:私には兄弟がいるので、子供の頃から家でアニメばっかり観ていたんです。ただ、真剣にストーリーを追っていたというよりは、何となく観ていたような感覚で。アニメの声って、とても聞き心地がいいんですよね。キャラクターが話すセリフ自体は、現実世界に置き換えるとかなり違和感が生じてしまいますが、アニメとして観ると全く違和感がなくなる。それが何でなんだろうとずっと気になっていて、声の重要さに気づいたんです。なので、小学生から中学生ぐらいの頃、女優さんのお仕事を始めさせていただいた時期から声優のお仕事はやりたいなと思っていました。
ーーアニメの声に魅力を感じていたと。
北:そうなんです。声優さんの声が大好きで。聞いていて心地よいというか、すーっと入ってくる声ってあまりないので、そこに惹かれていました。声フェチですね(笑)。
ーー初の声優挑戦で主役という大役を担うことになりましたね。
北:本当に夢みたいです。蒼井優さんをはじめ、西島(秀俊)さんや竹中(直人)さん、そして錚々たる声優の方々の中で、自分の名前が一番上で大きく載っていること自体も今だに不思議で……。あまり現実味がないんですけど、すごく幸せですし、これからももっと頑張っていきたいなという向上心にもつながりました。
ーー声を担当した小学4年生の男の子、アオヤマ君にはどんな印象を受けましたか?
北:原作もそうですし台本もそうだったのですが、アオヤマ君は小学4年生といっても、とても大人っぽくて、小学4年生とは思えないような発言もするんです。一方で、“お姉さん”の家に行くときに顔が赤くなったり緊張したり、男の子らしい可愛いところもある。その大人っぽさと子供っぽさのギャップが面白いなと思いました。弟にしたいなって(笑)。
ーーお姉さん役の蒼井優さんとは何かやりとりはあったんですか?
北:実は蒼井さんとはアフレコで一度しか一緒になっていないんです。そこで初めて蒼井さんにお会いしたんですけど、私はガチガチに緊張してしまって。そしたら、蒼井さんが録音の合間にすごくリラックスさせてくれたんです。仕事とは全く関係のない楽しい話をしてくださって、緊張を和らげてくださいました。本当にお姉さんのような存在で、心がふわーと暖かくなりました。
ーーそこで安心感が芽生えたわけですね。作品に対してはどんな感想を抱きましたか?
北:一見、ファンタジーでキラキラしたイメージがあるんですけど、生きることに対しても考えさせられるし、大事な人を大切にしようとも思う、そんないろんな感情が一気に湧いてくる作品だと思います。想像しているよりも、すごく深いお話だなと。でもやっぱり、私はすごく昔の匂いを思い出しました。小学校だったり体育館だったりママのご飯の匂いだったり……そういうものがフラッシュバックして、懐かしい気持ちになりました。
ーー北さん自身、小学生時代はどんな子供だったんですか?
北:私は超やんちゃな女の子でした。ダメって言われたことはやりたいみたいな(笑)。絶対に黄色い帽子を被らなきゃいけない学校に通っていたんですけど、私は被りませんでした(笑)。ちょっと反抗したかったんでしょうね。
ーー今回、性別も年齢も異なる役柄に挑むにあたって、役作りはどのように?
北:20歳の私が小学4年生の男の子と接する機会はあまりないんですけど、アオヤマ君と同じ14歳の妹がいるんですよ。最初は小学4年生の男の子の声のトーンが分からなかったので、妹の学校の授業参観に行って、男の子の声を聞きながらそれをインプットしてアオヤマ君の声を作っていきました。
ーー生の小学4年生の男の子の声を聞いて役を作っていったと。
北:でも、収録では「アオヤマ君を小6だと思ってやって」と言われてしまって。アオヤマ君は大人っぽいという設定だけど、私は最初、リアルな小4の方に近づけて、滑舌もわざと悪くしていたんです。だけど、作った声が高すぎて、喋り方もちょっと子供っぽかったみたいで。なので、収録の段階で調整していきました。
ーー“声だけの演技”は普段のお芝居とは異なる部分も多かったのでは?
北:本当に全然違いました。あらかじめ決まった絵に声をはめなければいけないので、セリフも何分何秒で言い終わらなければいけないと決まっているんですよね。セリフに加えて時間も気にしなければいけなかったので、そこは本当に苦労しました。自分で表情を作るのではなく、アオヤマ君の表情に合わせて声を作るのも難しかったです。
ーー北さんは『バイプレイヤーズ』(テレビ東京系)でのジャスミン役の演技も話題になりましたが、“声の演技”ということで言えばある意味共通する部分もあるように思いました。
北:確かにそうですね。今回のアフレコはちょうど『バイプレイヤーズ~もしも名脇役がテレ東朝ドラで無人島生活したら~』の撮影と同時期ぐらいに行ったんです。『バイプレイヤーズ』のジャスミンは中国人という設定もあり、実は日本人の私がやったら叩かれるんじゃないかなとも最初は思っていたんです。でも、想像以上に『バイプレイヤーズ』を観てよかったと言ってくださる方が多くて、私自身も励みになりました。ジャスミンのような喋り方は普段しないですし、アオヤマ君のような喋り方もしないので、共通点はありますし、アオヤマ君を演じる上での自信にもつながったと思います。今回の経験をとおして、また声のお仕事をできる機会があれば、今後も是非やりたいと思いました。次は是非、女の子の声をやってみたいです(笑)。(取材・文・写真=宮川翔)