KOTORIは大きな羽を生やしてどこまでも飛んでいけるーー『REVIVAL TOUR』ファイナルワンマン公演を終えて
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KOTORIが、2ndフルアルバム『REVIVAL』リリースに伴い、2019年10月20日越谷EASYGOINGSでの公演を皮切りに開催した『REVIVAL TOUR』。同ツアーが2020年1月10日にマイナビBLITZ赤坂にてファイナルを迎えた。
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開演時間を過ぎ、電車の音や朝の目覚めを思わせる小鳥のさえずりなど、生活感漂うサウンドに合わせ、KOTORIのロゴが前面に押し出された美しい映像が流れ始めた。映像が途切れ、幕は下がり切ったままメンバー4人のシルエットに切り替わり、細川千弘(Dr)によるドラムのいななきから一曲目の「YELLOW」は始まった。朝を思わせるオープニングBGMから朝を歌う同曲につなぐ演出や、横山優也(Vo/Gt)の気取らない率直な歌声、佐藤知己(Ba)の空間全体に広がっていくベース、上坂仁志(Gt)の軽やかさも力強さをも操るような心地よいギター、グルーヴを生み出すパワフルな細川のドラムでKOTORIの世界観を作り上げ、4人の姿はシルエットのままに演奏を終える。気圧された会場を目覚めさせるように幕が上がり、KOTORIの4人の姿が現れ、息つく暇もなく横山の〈世界を変えるのさ〉という歌声から「ライジング」が始まった。フロアの拳とボルテージが一気に上がり、「1995」では横山が「俺たちの時代だー!」と歌い、次の「unity」では、以前よりもインストパートが強化された現在のKOTORIを見せつけた。
会場の興奮も冷めやらぬうちに「涙があふれそう」では、疾走感にあふれるリズムに温かみとせつなさが相まったメロディと歌詞を乗せて届け、続く旧知のナンバー「シャンプー」、「僕たちは青春のど真ん中ー!」というおなじみのMCから始まる爽快なロックナンバー「Blue」、ストレートなロックアンセム「EVERGREEN」を奏でると、横山がフロアを見渡し「最高!!」と叫び、ガッツポーズをする場面も見られた。
その後雰囲気は一変し、アルペジオと切ないメロディが特徴的な「トーキョーナイトダイブ」で会場を魅了。すると細川のドラムが間髪なく入り、暖かみのある冬のバラード「オリオン」、夏の情景に思いを馳せた「海」、壮大で率直なラブバラード「ラブソング」と胸を締め付けるようなミドルテンポのロックバラードを続けて披露した。
しっとりとした空気になったところでライブが始まって初めてのMC。横山が、オープニングから「YELLOW」までのパートについて「最初やばかったっしょ!! 外タレかと思ったんじゃないすか!?」と言って会場を沸かせると、前回のツアーファイナルとの違いとしてドラムの細川が正式加入した点について言及し、観客からはお祝いの拍手が生まれた。確かに今回のライブでは細川のドラムソロや生み出すグルーヴが目立ち、KOTORI躍進のキーマンが彼であることを感じさせた。
短いMCをはさんだところで普段のライブではアップテンポのAメロから始まる「ラッキーストライク」を、今回は音源通りしっとりとしたサビから始めた。その後アップテンポなイントロがかきならされると会場のボルテージは一気に上昇。さらに横山が〈誰かの自慢になれたらな〉という歌詞の〈誰か〉を〈お前〉に代えて一人一人に訴えかけるようにアツく歌いあげると、その勢いのまま「ドラマ」、「ファーストインパクト」を力強く奏でた。
ライブも中盤を迎えたところで、バックスクリーンが降り、美しいBGVとともにKOTORI初のインスト曲「Eve of the revival」を以前よりも底上げされた演奏力でエモーショナルに奏でる。そのまま「REVIVAL」に続くとBGVはアルバム『REVIVAL』のロゴに。楽曲はだんだんと壮大に展開していき、「気づいてほしい、わかってほしい、いつか知ってほしい、それだけ、それだけ」と後半にたたみかける部分はKOTORIの音楽や、その他素晴らしい音楽と出会うことを切に訴えかけるようであり、「音楽はいかにして生き得るのか」という今回のツアーの主題のようにも思えた。続く「雨のあと」は10月から始めたという佐藤のトランペットが印象的なイントロから始まった。右手でベースを弾き、左手でトランペットを抱え吹くのだから驚きだ。さらにBGVでMVの世界観を再現する粋な演出も。そして、「彗星」では横山がギターをアコギに持ち替え、彗星や宇宙を表現したBGVに合わせて演奏。「Eve of the revival」からここまでのパートは今回のツアーやアルバムのテーマを表した最も重要なシーンであったと感じる。
これこそがKOTORIという静から動への展開がたまらない郷里への思いを歌った「RED」、「高鳴る胸に鐘を鳴らせ」で熱のこもったパフォーマンスをみせると勢いそのままに「ジャズマスター」「さよなら」へ。KOTORIも会場もテンションが最高潮になったところで「最高なときって知ってます?! 今です!!」との横山の叫びから「素晴らしい世界」が始まると、フロアはドラムのリズムに合わせ跳ね、会場全体が揺れた。大きな盛り上がりを見せてこの”神パート”を終えた。
そして「もう1曲一緒に歌ってください!」という横山の叫びとともに始まった「Dive into your Dreams」を歌い終えると、横山は絶対的な確信を持って「これが俺が求めてたやつです。俺たちならいける! どこまでもいける! 皆を連れていく! いや、てかついてきて!!」とMCの中で最も強く訴えかけた。そう言い放ち始まる「羽」はなんと頼もしい音を奏でるのだろうか。さらに大きく羽ばたいていくKOTORIに振り落とされないように私たち自身も羽を生やし、ついていかなければと強く思わされる。そして「遠き山に陽は落ちて」で下校時間の音楽におなじみの「遠き山に日は落ちて」をオマージュした哀愁ある旋律と2ビートの疾走感あふれるドラムで本編を締めくくった。
アンコールではファンと歌い上げる「4号線」から始まり、「19歳」では〈あれからもう1年〉という歌詞を〈7年〉に変えて歌い、KOTORIが結成してからの時間の経過とともに、日常や自分自身の心情を歌うバンドから、それらだけではない音楽そのものを歌い背負うバンドへの変化も感じさせた。そして、「ちょっとやっぱあと一曲やる! これやったら絶対帰る曲!」といい、それぞれの場所へ帰っていくファンとKOTORIの合言葉のような「遠き山に陽は落ちて」と、本編を締めた曲で再びライブ全体を締めた。
横山が上京して初めて訪れたライブ会場でもある、マイナビBLITZ赤坂でツアーファイナルを終えたKOTORI。ライブ中のMCでは、昨年も開催したKOTORI主催のサーキットフェス『TORI ROCK』の開催も告知された。大小かかわらずどんな場所でも通用する力を持ち合わせていることを知らしめた彼らはより大きくなっていくだろう。KOTORIはあらゆるものを吸収して自分たちだけの音楽に昇華し、新しいフェーズへと突き進んでいく。だからこそ、彼らは最新の音楽が一番かっこよくて目を離さずにはいられない。KOTORIの音楽がこれから多くの人々に衝撃を与え、新たな歴史を紡いでいくことを確信した夜だった。(及川百合香)