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『アライブ』木村佳乃が見せるサバイバーの姿 がん治療の現在に迫る濃密なドラマに

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リアルサウンド

 薬物療法を専門にがん患者と向き合う腫瘍内科医の“オンコロ先生”こと恩田心(松下奈緒)と、彼女とバディを組む消化器外科医の梶山薫(木村佳乃)の姿を描いたフジテレビ系列木曜ドラマ『アライブ がん専門医のカルテ』。先週の第1話では2人の出会いから幕を開け、忠実な考証で描写された原発不明がん患者の物語と、薫が心に秘密にしている過去が展開。そして1月16日に放送された第2話では、より深くがん治療の現在に迫る濃密な人間ドラマが描き出されていった。

参考:【ほか場面写真多数】ヘッドホンをつける清原翔

 腫瘍内科へ術前化学療法に訪れた乳がん患者の日ノ原(寺脇康文)は、なぜ男性である自分が乳がんになったのかと戸惑いを隠しきれない様子。そんな日ノ原を診察した光野(藤井隆)は彼の母親が乳がんだったことを知り、遺伝性の可能性があると検査を勧める。一方で、心は若い女性の乳がん患者・佐倉(小川紗良)を診察。乳房全摘手術が望ましいという状況をなかなか受け入れられない様子の彼女は、偶然カラオケボックスで会った結城(清原翔)に「自分の運命を恨んだことはありますか?」と問うのだ。

 今回のエピソードのテーマとなっているのは、極めて稀なケースではあるが確かに存在する「男性の乳がん」と、女性にとって大きな決断である「乳房全摘」。前者については劇中でも触れられている通り、乳がんの症例全体の1%にも満たず、その多くが60代前後の高齢の男性に発生すると言われている。リスク因子は劇中の日ノ原のように近親者に乳がんになった人がいるケースや、胸部への過度な放射線照射や、肝硬変などでホルモン代謝が低下することによって、女性ホルモンであるエストロゲン過剰などがあるとのことだ。いずれにせよ「男性は乳がんにならない」という思い込みで受診が遅れ、治療の選択肢が減ることもあるため、劇中で語られるようにより周知される必要があるといえよう。

 また、統計によれば乳がんは女性の約11人に1人の割合で生涯に一度は患うと言われている。30歳から64歳までの女性のがんによる死亡原因の中で最も多く、死亡者数も年々増加(2019年の罹患数予測では92200例。死亡数予測は15100人だ)。乳がんの手術ではがんの大きさなどによって全摘術しか選択肢がない場合もあるが、がんの部分のみを切除する乳房温存術の選択肢もあり、この場合は腫瘍内科での放射線治療を組み合わせるケースが主であり、生存率に差はないというデータも。さらに終盤で薫が心や佐倉に明かすように、全摘術後に再建するという選択肢もあるのだ。

 わずか1時間弱の中で、「乳がん」というひとつのがんをめぐる物語が多面的に描き出された今回。物語の中心として描かれる2人の乳がん患者を軸にしつつ、緩和ケアを受けながら他の患者のためにできることをしようと世話を焼く中年の女性患者(ふせえり)の姿や第1話に引き続き明るく前向きにがんと共生する高坂(高畑淳子)、さらには“がんサバイバー”である薫の姿も織り交ぜながら、がんへの向き合い方の“選択肢”を提示する。さらりと1話だけに収めるのはもったいないほど、今回のテーマは“がん”を描くドラマとして重要なものになったのではないだろうか。 (文=久保田和馬)