伊藤英明の説法に現役僧侶も太鼓判 『病室で念仏を唱えないでください』は「生きる」を新たな視点で捉える
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2020年1月期は医療ドラマが6作品放送され、毎日のように医療モノが観られる特殊なクールに。なかでも異色中の異色といえるのが、伊藤英明主演の金曜ドラマ『病室で念仏を唱えないでください』(TBS系)だろう。
【写真】僧侶が集った試写会の様子
■善立寺で開かれた試写会&制作発表に僧侶が集結!?
原作は、2012年から「ビッグコミック増刊号」で連載中の救命救急医療漫画。医者で僧侶の主人公が、救命センターの仲間とともに、患者の命と心を救うため、悩み、葛藤、成長する日々が描かれる。
異例尽くしのドラマは、試写会&制作発表会見もまた特別で、足立区・善立寺に僧侶を招いて開催。会見は光が差し込む広々とした本堂で行われ、伊藤、ムロツヨシ、中谷美紀の同学年トークなどで大いに盛り上がった。
一方広間で行われた試写会で、筆者は僧侶の方々の頭越しにドラマを鑑賞するという不思議な経験をすることに。上映がスタートすると、劇中の説法に頷く僧侶の姿もあり、なるほどこれは“現役僧侶に見せられる自信作”という制作陣からのメッセージか、と納得しながら物語に引き込まれていった。
■主人公が救うのは“命と心”――他の医療ドラマと一線を画す斬新さ
物語の主人公は、伊藤演じる松本照円(照之)。彼のように医師兼僧侶、すなわち“僧医”と呼ばれる存在は意外と多くいるのだそう。とはいえ、僧衣を纏った坊主が病院内を走り回る姿は、現実世界はおろかドラマですら観たことのない光景。病院に僧侶がいるのは何となく縁起が悪い気がするし、患者に“あの世が近いのか”と勘違いされるシーンには、思わず笑いが込み上げた。
一見かけ離れた存在に思える医師と僧侶だが、その両方である照円は“生きること”に強いこだわりを持っている。彼の思いは、医療で患者の命を救う(=患者が生きる)ことだけでなく、消えゆく命を目にする家族が、“この瞬間をどう生きるか”そして、“この先、どう生きていくか”を説くことにも通じているのだ。
“人を救うドラマ”といえば、これまで人命救助がテーマとされてきたが、本作によって人を救うのは医療だけではないと気づかされる。照円が空回りしながらも、医師として命を、僧侶として心を救おうとする様をシビアかつユーモラスに映す第一話には、泣き、笑いがたっぷりと。なおかつ身が引き締まるような感覚は、今後もこのドラマの醍醐味となっていきそうだ。
■ムロツヨシは裏切らない! 個性的なキャラを演じる魅力的な俳優陣
僧侶と言いつつ“生臭坊主”の照円は、よく食べ、エッチな袋とじが大好きという人間味溢れる人物。伊藤が連ドラに主演するのは約3年ぶりとなるが、飾らず豪快に笑い、己の道を突き進む照円との相性は抜群。会見で本人も「気に入っています」と満足気だった坊主頭も良く似合い、憎めない僧侶キャラとして愛されそう。
かたや、エリート心臓血管外科医・濱田達哉を演じるのはムロツヨシ。あまりにクールな登場に、「最後までこんな感じでいくの!?」と思ったのも束の間。 “ムロツヨシここにあり”とばかりに個性強めの演技を披露し、視聴者を魅了する。
ほかに、現実主義の女医役に中谷美紀、気弱さがひしひしと伝わるセンター長役に萩原聖人、掴みどころがない整形外科医役に堀内健、あおば台病院、さらにはドラマ自体にも安定感をもたらす理事長役に余貴美子と、ベテランたちがガッチリと脇を固める。一方で、戦力と呼ぶにはほど遠い新人の心臓血管外科医役に松本穂香、照円を冷めた目で見るサトリ世代の後期研修医役に片寄涼太と、フレッシュかつ注目の役者が顔を揃えた。
とはいえ、豪華キャストが扮するキャラクターのバックボーンは謎だらけ。片寄演じる田中玲一については配信版オリジナルストーリー『病室で念仏を唱えないでください~サトリ研修医・田中玲一~』で本音を覗くことができるが、本編でも彼らの真実が垣間見える展開に期待したい。
場面転換が多く、コミカルからシリアス、医療から説法など、相反するシーンへと瞬時に切り替わるのも本作の特徴。魅力的な登場人物がスピーディーに繰り広げる物語を通して、「生きること」を新たな視点で捉えることができる新感覚ドラマが今夜、スタートする。
(nakamura omame)