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『スカーレット』死してなお浮かび上がる常治の存在感 一方、八郎に迫る三津の思惑はいかに?

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 『スカーレット』(NHK総合)第15週「優しさが交差して」では、結婚を決めた信作(林遣都)と百合子(福田麻由子)がついに川原家への挨拶に向かおうとする。そんな折に、舞い込んできたのが大阪にいる直子(桜庭ななみ)が交際相手の鮫島(正門良規)との間に子供を授かったという喜美子(戸田恵梨香)からの電話。後々語り継がれる「信作、結婚のご挨拶がなかなかできない」の始まりである。

参考:桜庭ななみ、大人の女性を今後どう演じる? 『スカーレット』の“飛び道具”直子役で初めての挑戦

 結局、直子に子供ができたというのは嘘で、砂を詰めたニット帽をお腹に隠して妊娠を装い、子供を理由にすればお金を用立ててもらえるだろうという2人の偽装結婚だった。母屋に砂が落ちていることから直子の嘘を見抜いたマツ(富田靖子)は、怒りに震えて立ち上がり直子の頬を勢いよく叩く。

 川原家に常治(北村一輝)の姿はない。「ジョーさんがいたら」そう話すのは信作の家の大野家だが、マツの姿からは常治の厳格さが見え隠れする。奥の部屋で仏壇の前にいるマツ。喜美子からの「二度とあんな小細工したらあかん。敷居跨がさへんで」という厳しい言葉に謝る直子を見て、マツは優しく微笑む。頼りないながらも直子との結婚を真剣に考えているという鮫島に「許しません。今は」とニッコリ笑うマツの姿は、厳しい常治の意思を継いだかのようだ。

 喜美子、直子、百合子、マツが家族水入らずに縁側でいちごを食べる風景は、第8週「心ゆれる夏」で常治も一緒にスイカを食べていたシーンを思い出させる。「初物七十五日」「初物は東を向いて笑って食え」。常治は「寿命? 伸びんでええわ、そんなもん」とぶっきらぼうに返していたが、あっさりと亡くなってしまった。4人だけの縁側。借金取りにゆで卵を食べさせた、百合子が病院に薬を取りに行かせていたと出てくる思い出話は、貧乏時代の話題ばかり。そんな過去を笑い飛ばす喜美子たち。楽しい思い出、それはいちごを食べている今。常治の死を乗り越え、夜食に真っ白いおむすびを食べられるくらいに豊かな暮らしができようになった川原家を表しているかのようだ。

 一方、才能と優しさが生んだ喜美子と八郎(松下洸平)の溝はさらに深いものに。そこに割って入るのが弟子の三津(黒島結菜)。喜美子に告げる「私も先生みたいな人好きになりたいなぁ」、八郎への「私のこと女だと思ってたんですか?」「大丈夫じゃないかも。5泊もいたら先生のこと襲っちゃうかも」。素直過ぎるが故に、相手の気持ちを推し量ることができない三津は、2人の仲を確実に掻き乱していく。三津は百合子ら川原家からは「ミッちゃん」、喜美子からは「三津」、しかし八郎からだけは「松永さん」と呼ばれている。過去に、八郎は喜美子を弟子とした時に、「川原さんは女。気軽に名前では呼べません」と自身のポリシーを明かしていたが、この苗字呼びがまさか三津との仲にまで及んでくるとは誰が予想していただろうか。

 第16週「熱くなる瞬間」では、喜美子が工房に穴窯造りを決意する。第15週のラストでは夫婦ノートに「新しい作品、作る」と書き記していた喜美子。予告では「あの気持ちを残したい。いつか叶えたい、うちの夢や」と話す姿も。一方で「松永さん、なんか感じ変わった?」と話す八郎と三津の仲はより親密に。喜美子の中で熱くなる作品作りへの思い、八郎の作陶への執着心はさらに乖離していく。(渡辺彰浩)