上白石萌音、“天堂担”として認知! 『恋はつづくよどこまでも』七瀬の貪欲さはどこから生まれた?
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「この先、俺とお前がどうこうなる可能性は0.0001%もない」
運命的な出会いで恋に落ちた相手から、5年も片想いした相手から、やっとの思いで同じ職場で働けるようになった憧れの相手から、こんなふうに「先に断っておく」と言われたら、あなたはどうするだろうか。
参考:上白石萌音×佐藤健『恋はつづくよどこまでも』対談前編 「ズタボロ」と嘆く、天堂の怒りシーンの裏側
火曜ドラマ『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)第2話。循環器内科に正式配属となった新人ナースの七瀬(上白石萌音)。周囲の厚意もあり、晴れて天堂(佐藤健)の「担当」
となることができた。だが、仕事上の諸注意と共に「余計な期待はするな」と釘を刺されてしまう。「どうこうなる可能性は0.0001%もない」と。
だが、七瀬はまったくひるまない。「この世に絶対なんてことはないと思いますし、0.0001って。いくらなんでも、ねぇ。こんな私でも、さすがに0.0001%くらいの可能性は」とまったくひるまない。天堂のドS発言に傷つくことはあっても、全然遠慮しないのだ。
毎日忙しそうに働く天堂に「デートしてますか?」「デート相手に立候補します」と屈託のない笑顔で猛アピール。「0.0001%もない」と言われても0.000001%ならあるかもしれない。限りなく0に近くても、それは0ではない。
初日にドクターに告白し、玉砕したにも関わらずめげずに正式配属でも希望を出す。心電図は逆につけ、注射針を自分に刺し、ドクターの足を引っ張ってばかり。もちろん、実際に同じ職場にいたら「こんな新人いるか?」と、ツッコミどころは満載だろう。
私情を挟まずにビジネスライクに医療サービスを提供する優等生の酒井(吉川愛)から見たら、私情まみれで浮き沈みの激しい七瀬に、イライラしてしまうに違いない。「私は勉強したい。あなたは好かれたい。その違いじゃない?」とチクリと言ってやりたくなる気持ちもわからないでもない。
仕事はあくまでもドライに、自分の役割を真っ当する酒井タイプも、しつこいくらいに人に食らいついていく七瀬タイプも、きっとそれぞれにいいところがあるはず……なのだが、七瀬はいっちょ前に酒井のようにもなりたいともがくから、余計に厄介だ。
だが、その「もっとこうなりたい」の貪欲なエネルギーは、もしかしたら誰の心にもある、最もピュアな欲求なのかもしれない。周囲の目を気にして、傷つかないように、効率よく生きようとするほど、フタをしがちなもの。七瀬を見てイライラしてしまう人は「そんな世の中、甘くない」と、きっと苦い思いをしてきた人なのではないか。酒井も、好き嫌いで仕事を楽しめない事情があり、どこかで七瀬を羨ましく思えばこそ、突っぱねてしまう。
未熟で、幼稚で、不器用で、手がかかって、やたら一生懸命で、まっすぐで……もしかしたら、天堂もそんな七瀬に、かつての自分を重ねているのではないだろうか。そんな思いではきっと潰れてしまう、傷つくのが目に見えているからこそ、「向いていない」と言い放ったのだとしたら……。ドS発言も少し聞こえ方が変わってくる。
実際、患者の神田(金子大地)を助けられなかったという悲しみにくれる七瀬。だが、そこで天堂はいつもの調子で「やめろ」と戒めるのではなく、抱きとめて「みんなそうだ」と背中に当てた手をポンポンとしながら慰める。七瀬を抱きしめながら、一つひとつの壁にぶち当たっていた過去の自分自身を肯定し、そして今も平気な振りをしているが傷ついている純粋な自分に声をかけていたのかもしれない。
恋とは、その人と人生を共有したいと思う気持ち。その人の生き様を応援し、自分自身の生きる活力となる存在となること。そう定義するのであれば、恋する相手を「担当」と呼ぶのはとてもしっくりくる。同じことで傷つき、同じことに喜び、人生の酸いも甘いも味わう、まさに運命共同体になるということ。
物理的に胃袋を掴む=好きな食べ物(甘い物)を贈るのも有効だし、感情を全面に出すことで天堂の中に押さえていたものが共鳴する。そんな細かなジョブがきいたのか、ついに「天堂担だろ」と言わせることに成功した七瀬。来生(毎熊克哉)が仕掛ける、闘争本能に訴える「シュークリーム作戦」も功を奏しそうだ。これは、0.0001%の光が見えたということか!?
現実は厳しくて、しんどいことばかりだからこそ、そんな日々の連続が、やがてかけがえのない絆を生むところを見せてほしい。イライラしながらも七瀬にエールを送ってしまうのは、そんとなピュアな想いが実を結んでほしいと願わずにはいられないからかもしれない。
(文=佐藤結衣)