広瀬アリス、『トップナイフ』で発揮するコメディエンヌぶり 天海祐希とのやりとりに要注目!
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毎話2人の患者が登場し、その特殊な病状や境遇にメスを加えることによって、天才脳外科医たちの抱える心の問題をも逆照射していく『トップナイフ-天才脳外科医の条件-』(日本テレビ系)。第3話では、「自分は死んでいる」と言い張る男と関西弁に取り憑かれてしまった男、その珍しい患者の病に迫りながら、深山(天海祐希)と黒岩(椎名桔平)における子どもや家庭の存在、あるいは幸子(広瀬アリス)の恋模様などにも焦点が当てられていく。
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第3話の主題となるのはずばり、何気ない日常の尊さや、人と関わることの美しさだった。
何を観ても、何を食べても、何も感じることがない。そうすると生きている実感がなくなり、自分は死んでいるのだと思い込んでしまう。そうして死者の目線を持ってしまった男は、「生きていることに意味はあるのか?」と医者たちに問う。「自分のためだけに人生を費やす。あれが、生きていたと言えるのか?」とも。そんな男が、何気ないお笑い動画を観て、笑みを浮かべる場面。何も感じないことが死んでいることの証左なのであれば、裏を返せば、何かを観て笑ったり、何かを食べておいしいとかまずいとか感じたりすること、そのすべてが「自分は生きているんだ」と実感させてくれる瞬間だということができる。
彼女へのプロポーズを計画する男が言う「近くで誰かの息遣いが聞こえる。それだけで幸せになる」という言葉も象徴的なセリフだった。「人と関わること」、その幸福感の原初的な部分に立ち返らせてくれる場面だ。そうした患者たちの生き様に触れることによって影響を受けていく天才脳外科医たち。
家族を捨てて孤高に第一線で活躍してきた深山、恋に悩みこれからの成長が期待される幸子。そうした相反するふたりの女性が物語の中心に置かれ、脳神経外科医としてだけではなく、ひとりの人間としての生き様が問われていくのが本作の特徴的な点でもある。幸子は深山のことを、憧れの上司というよりは少しナメている描写もあるからこそ、対等な立場として今後どのように影響を及ぼし合っていくのかが気になるところだ。
深山と幸子は、そのキャリアだけでなくキャラクターにも正反対な部分が垣間見える。言うなれば、何にも動じず、ひとりで生きていくと決めてしまっている“静”の深山と、恋に心をざわつかせ、簡単に人の意見を聞き入れる“動”の幸子という対比が見られるのだ。その対比はまた、天海祐希と広瀬アリスというはまり役な女優が演じているからこそ立体感を増す。天海はわかりやすいところで言うと『女王の教室』(日本テレビ系)からたびたび表出してきた冷静沈着な姿をここでも見せ、広瀬の場合はボケとツッコミのアクションによって物語に軽さと動きを与えている。そのふたりの演技の緩急によって生まれる物語のドライブ感。とりわけ広瀬のコメディエンヌ的立ち居振舞いは、医療ドラマ特有の固さを和らげる存在としても機能するだろうし、さらには、“静”の深山の心をどう動かすかという、その物語の行く末を担っていると断言してもいいほど重要なものに違いない。 (文=原航平)