『娘は戦場で生まれた』に片渕須直、森達也、想田和弘、小島秀夫らコメント
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ドキュメンタリー映画『娘は戦場で生まれた』に寄せた著名人のコメントが到着した。
『第92回アカデミー賞』長編ドキュメンタリー賞にノミネートされているほか、『第72回カンヌ国際映画祭』最優秀ドキュメンタリー賞を受賞した同作は、医師を目指すハムザと出会い夫婦となったワアドが、家族や愛すべき人々の生きた証を映像として残すために、いまだ解決を見ない未曽有の戦地シリアの現状を映し出したもの。2人の間に生まれた娘は、自由と平和への願いを込めて「空」を意味する「サマ」と名付けられたという。2月29日から公開。
今回コメントを寄せたのは、片渕須直、小島秀夫、赤江珠緒、中川敬(ソウル・フラワー・ユニオン)、安田菜津紀、安田純平、丸山ゴンザレス、原一男、森達也、想田和弘、ピーター・バラカン、池田香代子、長有紀枝、望月優大、綿井健陽、玉本英子。
片渕須直のコメント
人生のすべての価値を奪われて死んだ我が子の名を、母親は大きな声で唱える。たしかにここにいたのだと。その街で彼は生命を救おうとし続け、彼女は撮り続ける。二人の間に生まれた子どもに謝りながら。あなたは選んでここに生まれたのではない、というそこも、私たちが住むのと同じ世界の一部。
小島秀夫のコメント
世界の脆さと命の尊厳。死者と子供たちの誕生。空爆や包囲攻撃が日常になった戦場の内側で、母親(ワアド)から空(サマ)という名の娘への強い意志が語られる。死に包囲されながらも、母親は娘の為に映像を遺し続ける。彼女は、追い詰められても撮影を止めない。眼を背けたくなる我々は、だからこそ逃げずに観るしかない。それが“戦場に生まれなかった我々”の出来ること。彼らが生まれた故郷(アレッポ)は破壊されても、彼らが守り抜いた空(サマ)は周り続ける。
赤江珠緒のコメント
シリア、アレッポ、アサド政権、空爆で子供が犠牲に、、、当時ニュース原稿に頻発した言葉たち。これは、そんな断片的な情報が一気に繋がる凄まじい映画だ。「非人道的な事は国際社会が許さない」そう胸を張って言える時代に私達は生きているのだろうか。
中川敬(ソウル・フラワー・ユニオン)のコメント
アサドとプーチンによる無差別爆撃続くシリア・アレッポで、娘を産んだ母は命懸けでカメラを回す。死と隣り合わせの子どもたち。極限状況で際立つ愛。生の証。尊厳。映画史上かつてなかった圧倒的人間賛歌の100分。映画は、シリアを見捨てようとする世界へ、観ろ!と叫ぶ
安田菜津紀のコメント
「サマ、私のこと、許してくれる?」
子どもを生んだ母親たちに、そんな罪悪感を強いる。
それが、この国で起きている戦争だ。安田純平のコメント
戦場でも人は笑い、夢を抱く。しかし、それを粉砕する圧倒的な暴力と無関心。今も続くこの地獄を我々は知らねばならない。
丸山ゴンザレスのコメント
後悔して、絶望するけど、後悔しないし、諦めない。ジャーナリストとして共感できる矛盾である。終結を待たずに結論をつける辛さは、現場に立つ者が味わう苦痛である。
原一男のコメント
人の愚かさの究極の形態が戦争である。理不尽な殺し合いをストップする力は、子を産み、育てる母(父も含めて)の我が子への愛である。メッセージはシンプルだが、この愛は無限大でやがて奇跡を呼び込むだろう。
森達也のコメント
世界はなぜ私たちの惨状を見過ごすのか。私たちを見捨てるのか。ワアドの叫びが観終えた今も消えない。正直に書けばドキュメンタリー制作に関わる一人として、この作品には嫉妬する。それほどに凄い。一人でも多くの人、そして世界の指導者たちすべてに見せたい。この映画を突きつけたい。
想田和弘のコメント
「時には武器を取り戦争するのも必要だ」と思っている人に観てほしい。これが戦場の現実だから。戦争は卑怯で、理不尽で、残酷で、虚しく、不幸だ。破壊するだけで何も生み出さない。砲弾の降る中で生活することがどういうことなのか、この映画を観て体感してほしい。
ピーター・バラカンのコメント
新聞やテレビの戦争報道では見えてこない現場の実態が凄まじいのに動揺しないワアドとハムザの姿に感激しつつハラハラしっぱなし。必見の力作です。
池田香代子のコメント
政府が自国市民の上に樽爆弾を落とす。この恐怖と怒りはニュースでは伝わらない。私は何度も椅子から飛び上がりそうになった。1度だけは、意想外の喜びで。
長有紀枝のコメント
シリアの人のために、今、何かしたいと思ったら、迷わずこの映画を観てほしい。すべては、彼らの絶望と希望を知ることから始まるから。
望月優大のコメント
子どもたちはわかっている。すべてを察し、大人の表情に変わっていく。空爆の轟音から、舞い上がる白煙から、地下室の教室から、街から消えた友達から、もう動かなくなった兄弟の体から。今向き合うべき傑作だと思った。
綿井健陽のコメント
映画の原題は『FOR SAMA(サマのために)』。お腹の中にいるサマに話しかけるように、生まれたばかりのサマに聞かせるように、そして、サマがこの映画をいつか観られるように、一人の母親はずっと撮影し続けた。サマの存在と母親の想いがカメラに全て乗り移り、シリア市民の数々の生と死を映像に刻んでいく。この映画は、サマが監督、母親がカメラマンだ。
玉本英子のコメント
内戦は武装諸派の対立と捉えられがちだが、実際には、隣人や同級生たちが殺しあうという悲惨なものだ。中東の「どこか」ではなく、日本で同じことが起きたら、と自分に引き寄せながら、この映画を見つめてほしい。