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「ミッドサマー」アリ・アスター初来日、「別れたほうがいいカップルに薦めて」

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左からアリ・アスター、LiLiCo。

「ミッドサマー」の監督アリ・アスターが来日。本日1月30日に東京・TOHOシネマズ 六本木ヒルズで行われた先行上映に登壇した。

スウェーデン奥地の村を舞台に、90年に一度の祝祭に訪れた若者たちの惨劇を描いた本作。「ファイティング・ファミリー」のフローレンス・ピュー演じる主人公ダニーを中心に、5人の学生たちが白夜に照らされた狂気の祭に巻き込まれていく。

2018年公開の長編デビュー作「ヘレディタリー/継承」で、一躍世界中のホラーファンを虜にしたアスター。この日はスウェーデン出身の映画コメンテーター・LiLiCoがMCとして登壇した。彼女が「よくも私たちが誇る夏至祭をここまでとんでもないものにしましたね……もう夏至祭の季節には帰れません」と本作の壮絶さを物語ると、アスターは「ごめんなさい」と笑って謝罪する。

企画のきっかけを尋ねられたアスターは、「ヘレディタリー/継承」の脚本を読んだスウェーデンのプロデューサーから「アメリカ人が夏至祭の間にスウェーデンの特別なコミューンを訪れる物語」というアイデアを提案されたことを話す。そして「それがすべての始まりです。ただそのアイデアだけでは自分に響きませんでした。実は当時、付き合っていた彼女と別れたばかりで。これを失恋ムービーにしたら……恋愛関係の終焉や人間関係の別離の物語にしたら面白くなるんじゃないか?と思ったんです」と映画の着想を明かした。

本作のリサーチと準備でスウェーデンを何度か訪れたそうだが、撮影はハンガリーのブダペストから車で30分ほどの場所で行われている。LiLiCoが村や祭りの描写が非常にリアルだったことを指摘すると、アスターは「スウェーデンの民間伝承から北欧の伝統、ドイツや英国の夏至祭。そのほかさまざまなスピリチュアルなムーブメントも調べました。一部、ロシアの文化を参考にしている箇所もあります」と説明。その後、脚本を書く段階で調べたものを一度すべて捨て、物語に利用できる部分を抽出したという。2カ月かけてハンガリーの平原に作り上げた村のセットは、スウェーデン北部の農家や宗教的な建物が参考になっていることも語った。

「ミッドサマー」のジャンルに関して「僕はこの映画をホラーだとは一切思っていないんです」と断言する場面も。アスターは「制作中はジャンルのことは考えていません。公開されるときに急に考え始めるもの。ブラックコメディや民間伝承ものなど、いろんなふうに捉えることができる作品です。でも観客の多くはダニーの心情に寄り添って観るはず。彼女の観点からいえば、この映画はおとぎ話、そして何より失恋ムービーに見えるはずです」と続ける。一部で「カップルで観ると別れる映画」とも言われていることについては、「固い絆で結ばれているカップルが観れば、なんの問題もないと思います。ただこの映画は、自分が恋人と別れたときに体験した葛藤から生まれた作品でもあります。もし自分たち2人は一緒にいるべきではないのかも?と考えるカップルがいるなら、『この映画を観て別れた』というレガシーを残してほしい」と冗談交じりにコメントした。

初来日ということで、舞台挨拶では日本に関する質問も。昔から数多くの日本映画を鑑賞しており、溝口健二「雨月物語」、新藤兼人「藪の中の黒猫」「鬼婆」、小林正樹「怪談」、大島渚「愛のコリーダ」といったタイトルに触れつつ、「もっともっとタイトルを挙げることもできます。僕が反応するのは映画のムードや感触。日本のホラー映画には、そういう資質があって、はかなさや謎めいた部分もある。これはほかの国のホラー映画で近年、失われつつあるものです」と親しみを込めて語った。現代の作家では黒沢清、園子温の名前を挙げ、また「ミッドサマー」の準備期間には今村昌平の「楢山節考」「神々の深き欲望」を参照していたという。

本作を「ホラー映画」だと捉え「怖いから観ない」と思っている人々に向けて、アスターは「この映画はホラー映画ではありませんし、怖くもありません。決して怖がらせようとする映画ではない、と言いたいです」と主張。さらに「幻想的な関係性のドラマ、あるいは失恋ムービーと言えます。『この2人は別れたほうがいい』というカップルが周囲にいたら、ぜひお薦めしてください」と笑いながら呼びかけ、イベントを締めくくった。

「ミッドサマー」は2月21日より東京・TOHOシネマズ 日比谷ほか全国でロードショー。

※「ミッドサマー」はR15+指定作品

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