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宮野真守、森久保祥太郎、福山潤……音楽活動も活発なベテラン声優たちのラップ表現

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 『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日系)以降、すっかりポピュラーな歌唱法として定着しつつあるラップ。ヒップホップをルーツに持たない歌手やアイドル、アーティストの間でも曲を展開させる歌唱法の一つとして取り入れられ、本格的なものからゆるいものまで様々なラップを聴くことが出来る。その波はアニメ/声優界隈でも例外ではなく、『ヒプノシスマイク』を始め、avex×GCRESTの声優ラッププロジェクト『Paradox Live』の始動など話題が尽きない。アーティストとしても活動するベテラン声優が1月にリリースした新曲は、奇しくもラップが共通して取り入れられており、どれも個性に溢れていて実に聴き応えがある。

宮野真守「LAST DANCE」

 宮野真守の「LAST DANCE」は、自身が桜川九郎役で出演するアニメ『虚構推理』のエンディングテーマ。ビッグバンドジャズのサウンドがグルーヴィーで、中盤に登場する流れるようなラップが何ともセクシーだ。こうしたジャズの後ろノリのグルーヴはリズムに乗るのが難しいものだが、これまで自身の楽曲だけでなくキャラクターソングでも随所でラップを聴かせ、KREVAが音楽監督を務めた舞台『KREVAの新しい音楽劇 最高はひとつじゃない』への出演経験もある宮野だけに、見事に歌いこなしている。

 またラップに限らずゴージャスできらびやかな世界観の中で聴かせる、甘い声で艶めかしく誘うようなボーカルも特筆すべき点だろう。作詞を宮野の3rdシングル曲「君へ…」以降、多くの楽曲に参加する元LILのボーカル=由潮。EXILEやJUJUなど手がけるJ-POPのヒットメーカーで、4thシングル曲「REFRAIN」から宮野楽曲に参加する作曲・編曲のJin Nakamura。宮野とは10年以上の付き合いで、宮野の魅力を存分に理解する二人だからこその楽曲と言えるだろう。

宮野真守「LAST DANCE」MUSIC VIDEO
buzz★Vibes「Calling U」

 また、森久保祥太郎がボーカルで参加しているbuzz★Vibesの「Calling U」は、冒頭からスピーディーなラップを聴かせていて、実に格好いい。これまでソウルやファンクなどのブラックミュージックをベースにした楽曲を多く手がけており、前回のシングル曲「ZETSUBOU FUNK」はTVドラマ『カフカの東京絶望日記』オープニングテーマとして、超絶ファンキーなサウンドに乗せてユーモアたっぷりの歌詞をハイトーンボーカルで聴かせていた。

 今回の「Calling U」は森久保自身が主人公のオーフェン役を務めるTVアニメ『魔術士オーフェンはぐれ旅』オープニング主題歌で、初のアニメタイアップ曲となる。ラテン調の跳ねたビートとメランコリックなピアノやギターを取り入れた哀愁を漂わせたサウンドが印象的で、森久保のラップは主人公のオーフェンのように熱く切れ味が鋭い。作曲と編曲を務めているSinnnosukeは元SOUL’dOUTのトラックメイカーで、森久保と同様のベテランというだけあって、こういったラップ曲はお手の物といったところだろう。

buzz★Vibes「Calling U」(1cho.ver)(TVアニメ『魔術士オーフェンはぐれ旅』OP主題歌)

声優におけるラップは個性と技術の見せ場に

福山潤『P.o.P -PERS of Persons-』

 そして、1月8日に2ndアルバム『P.o.P -PERS of Persons-』をリリースした福山潤は、自身が作詞に参加した「パース・オブ・パーソンズ」でラップを聴かせている。イントロからギターが激しく唸りを上げるロックチューンで、四つ打ちのビートが心地良く響くナンバー。力強い歌声から一転、サビでは爽快なメロディを聴かせている。ラップは他のメロディとは違った低音の声で、まるでがんじがらめになった鎖を引きちぎって立ち上がるような力強さがある。

 同曲の作曲・編曲を手がけたJUVENILEは福山の1stシングル曲「KEEP GOING ON!」からお馴染みで、RADIO FISH「PERFECT HUMAN」を手がけたことでも知られる気鋭のサウンドプロデューサー。RAP作詞のRYUICHIも同シングルのC/W曲「ランプジェンガ」の作詞を手がけ、1stアルバム『OWL』収録の「もしも」もその2人が手がけている。また歌詞は、福山本人と共にTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDの松井洋平が共作で参加。2ndシングル曲「Tightrope」、3rdシングル曲「dis-communicate」、2ndアルバム『P.o.P -PERS of Persons-』では多くの曲の歌詞を福山と共作している。

 ラップの魅力は、声色や声のキレ、フロウ、ライミングなど多々ある。声優は滑舌も良いからだろうか、三者とも声のキレが抜群だ。こうした楽曲が歌えるのは、声優としてアーティストとしての経験値の高さがあればこそだろう。またフロウやライミングに関しても、強者揃いのクリエイターたちがバックアップすることによって、まったく違った個性を発揮していて聴き応えがある。楽曲に関しても三者三様であり、それぞれ違った魅力に溢れている。そういった点で声優におけるラップというものは、ある意味で個性と技術の見せ場と言えるかもしれない。ことアニメのタイアップ曲においては、ラップパートが放送では流れないことも多く(buzz★Vibesは頭からラップだけれど)、その声優自身の心情が表れていることもある。もちろん声優の歌や楽曲の魅力はそれだけではないが、楽曲の神髄を楽しむための1つのポイントとして着目するのも面白いのではないだろうか。

■榑林史章
「THE BEST☆HIT」を経て音楽ライターに。オールジャンルに対応し、インタビュー本数は延べ4,000本。現在は日本工学院で講師も務める。