Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
ぴあ 総合TOP > ぴあ映画 > 『麒麟がくる』染谷将太は革新的人物像に? 市川海老蔵、豊川悦司ら“信長俳優”を振り返る

『麒麟がくる』染谷将太は革新的人物像に? 市川海老蔵、豊川悦司ら“信長俳優”を振り返る

映画

ニュース

リアルサウンド

 長谷川博己主演のNHK大河ドラマ『麒麟がくる』で描かれる全く新しい明智光秀像が好評を博している。「本能寺の変」で織田信長を裏切った明智光秀の前半生にスポットを当てた本作。過去のどの作品を探しても、こんなにも爽やかで魅力的に演じられた光秀を見つけることはできないだろう。

参考:『麒麟がくる』メインビジュアル

 放送前から豪華なキャストビジュアルも話題になっていたが、長谷川博己演じる明智光秀のビジュアルには「武士の誇りを忘れぬ男」とある。戦に勝つしか生き残る道はない下剋上の時代。主人公の光秀の描き方がこんなにも斬新であるから、これから登場する「尾張の若きうつけ者」織田信長を染谷将太がどう演じるのか。いやがうえにも期待が高まる。

 公式サイトには「革新的な信長像をゼロから構築したいとNHKの方からお聞きし、新しい織田信長を演じられる喜びと同時に大きな責任も感じています」と染谷将太のコメントが掲載されている。戦国武将のなかでもとりわけ人気が高く、大河ドラマだけでも、数々の名優が演じてきた歴史上の偉人、織田信長。明智光秀には、陰湿で根に持つタイプというイメージが染み付いているように、信長といえばカリスマ性があり、独善的。非情で冷酷な面を持ち合わせた人物像が浮かび上がる。

 とくに現在放送中の『麒麟がくる』ではナレーションを担当している市川海老蔵が『おんな城主 直虎』(2017年)で演じた織田信長は、強烈な印象を残した。カリスマ性を超えた威圧感、対峙する相手が言葉を裏読みせざるを得ないほどの目力と緊張感漂う佇まい。徳川家康(阿部サダヲ)を丁寧にもてなそうとすればするほど緊迫した空気を作り出し、強いパワーで相手を圧倒する信長役に市川海老蔵はハマっていた。

 実際のところ、信長自身、南蛮衣装を好んだといわれるが、迫力満点の個性的な南蛮衣装が似合っていたし、つねに注意を払われ、目を奪われる存在であり続けた信長の存在感を市川海老蔵は見事なまでに体現していた。

また、織田信長のハマり役といえば『江~姫たちの戦国~』(2011年)の豊川悦司も挙げられるだろう。主人公の江(上野樹里)にとっては非業の最期を遂げた尊敬できる素敵な伯父である信長公。ミステリアスで、時折見せる冷たい表情に大人の男の魅力が感じられた。女性ファンからは「このまま本能寺の変が起きないでほしい」という声があがるなど、強さだけではない信長の中にある孤独や陰の部分までもが繊細に表現されていた。

 いずれにしても信長役がハマる俳優に共通していえるのは、強さとカリスマ性と精悍な鋭い眼差しが印象的であること。少し前の作品になるが、『利家とまつ~加賀百万石物語~』(2002年)で反町隆史が演じた信長もまた、キリリと引き締まった表情とワイルドな雰囲気が人気だった。

 低くしぼるような声で「……であるか」と言葉を投げかけるのが印象に残り、いかにも鷹狩りが好きそうな野性味あふれるアグレッシブな信長。あくまでも自分の意志で行動し、周囲の声には耳を貸さない俺様的な要素の強い天下人としての風格さえ漂っていた。

 信長に仕えた明智光秀が大きな決断を前に理性を働かせ、逡巡するタイプだとしたら、対照的に織田信長は、心の迷いを見せない大胆不敵な顔つきで豪胆な人物として存在する。若い頃の信長が「うつけ者」と呼ばれたというのも、凡人にはその心の動きなど到底推し量ることなどできなかったからに違いない。

 『麒麟がくる』で長谷川博己演じる明智光秀が武士の誇りを忘れず、広く戦国の世を見渡し葛藤を抱えながらも成長していくのに対して、染谷将太は織田信長という武将をどう演じてくれるのだろう。

 ちなみに、染谷は『江~姫たちの戦国~』で織田信長に最期まで付き添い、本能寺で戦死した小性の森坊丸を演じ、映画『清洲会議』(2013年)では森坊丸の弟で同じく信長の小性だった森蘭丸を演じている。確かな演技力と独特の存在感で歴史上の人物をも自由に演じ分け、ドラマ『聖☆おにいさん』ではブッダ役、映画『空海―KU-KAI―美しき王妃の謎』(2018年)では主人公の空海を演じている。

 今回、この作品で織田信長役に挑むことで、俳優・染谷将太の新しい魅力が発見できるに違いないし、これまでのイメージを塗り替えるような革新的で新しい信長像への期待は高まるばかりだ。(池沢奈々見)