EXILE HIROに聞く、「LDH PERFECT YEAR 2020」と「Love, Dream, Happiness」の真意
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LDH初のカウントダウンライブ『LDH PERFECT YEAR 2020 COUNTDOWN LIVE 2019▶︎2020 “RISING”』を皮切りに、「LDH PERFECT YEAR 2020」がついに幕を開けた。「PERFECT YEAR」は6年に一度のLDH総合エンタテインメントの祭典で、2020年は過去最大級の規模で、一年を通して革新的なエンタテインメントの数々が繰り広げられるという。
リアルサウンドでは、「LDH PERFECT YEAR 2020」を総力特集。その第1弾企画として、EXILE HIROにインタビューを行った。オリンピックイヤーとも重なる「LDH PERFECT YEAR 2020」の壮大な計画から、LDHが掲げる究極のテーマ「Love, Dream, Happiness」の真意まで、詳しく話を聞いた。ビジョナリストとしてのEXILE HIRO像が改めて浮かび上がる、貴重なインタビューとなった。(編集部)
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■“輪の力”を使いこなして、それぞれの夢を叶えてほしい
ーーLDHは今年「LDH PERFECT YEAR 2020」を掲げて、年間を通して様々なエンタテインメントを展開します。2008年「EXILE PERFECT YEAR」、2014年「EXILE TRIBE PERFECT YEAR」に続く「PERFECT YEAR」で、ちょうどオリンピックイヤーとも重なりますが、もともと6年に1度を想定していたのですか?
EXILE HIRO(以下、HIRO):「PERFECT YEAR」の開催周期については、最初から計画していたわけではありません。しかし、先を見越して種を蒔いたプロジェクトなどがおよそ6年くらいかけてLDHのスタンダードなエンタテインメントやビジネスモデルに成長し、また次のステージを目指すという大きな流れができたとは感じています。2008年の「EXILE PERFECT YEAR」では、雑誌『月刊EXILE』を刊行したり、あるいはアニメ/漫画の『エグザムライ』シリーズが本格的にスタートするなど、エンタテインメントの幅が広がり、EXILEのあり方自体が大きく変化した年でした。2009年からメンバーが増えて、EXILE第三章が始まるという流れに至る上でも、「EXILE PERFECT YEAR」は重要な節目になったと思います。2014年の「EXILE TRIBE PERFECT YEAR」は、自分がパフォーマーを引退した直後の開催で、三代目 J SOUL BROTHERSやGENERATIONSといった次の世代のグループが飛躍していくきっかけになりました。その後、2020年という日本にとって特別な年でもあるオリンピックイヤーに僕らもエンタテインメントで日本中を盛り上げたい想いが強く、ちょうどPERFECT YEARも6年周期、ここ数年はEXILE TRIBEだけではなくLDH全体で様々な変化があったので、自然と「LDH PERFECT YEAR」を開催しようという流れになりました。
ーーEXILEからEXILE TRIBEへ、EXILE TRIBEからLDHへ、組織のあり方が変わっていくことでブランドが拡大していくようなイメージを抱きました。HIROさん自身は、そのような変化をどのように捉えていますか。
HIRO:仰るように、僕自身にもEXILEのあり方がEXILE TRIBEになり、EXILE TRIBEのあり方がLDHの輪を作っていったという意識があります。自分の働き方も、EXILEのリーダーからEXILE TRIBEのリーダーになり、それがLDHの輪に繋がったというか……。様々なエンタテインメントの点と点を線にして、線を繋げてどんどん輪が大きくなりLDHの中心になっていったように思います。また、夢の広がりと共に仲間が次々に増えていって、彼らと一緒に成長することで、できることの規模が拡大し、その繰り返しで今のLDHのあり方に繋がっているのかなと……。来年もEXILEの20周年を控えているんですけれど、そんなLDHのあり方と共にLDH PERFECT YEARとEXILE 20周年という節目にEXILE自体も大きく変化することになりそうです。
ーー「LDH PERFECT YEAR 2020」ではどんなチャレンジをしますか?
HIRO:「EXILE TRIBE PERFECT YEAR」の時は各グループが一同に集まってライブを開催していましたが、今年は目覚ましい成長を遂げた各グループやアーティストが、それぞれに独自の世界観を作り上げます。基本的には「PERFECT YEAR」のブランドのもと、同じセットで同時多発的にホールからドームまで多くの会場をライブなどで盛り上げ、1年を通してお祭りのような特別なエンタテインメントを発信したいと考えています。これは各グループが成長しなければ、エンタテインメントとしても興行としても成り立たなかったことです。また、季節ごとに「IGNITION」「IMAGINATION」「INFINITY」「BETOND THE BORDER」とテーマを設定しているので、ファンの方には1年を通して新鮮な気持ちで楽しんでもらいたいです。LDHアーティスト全員が、この「PERFECT YEAR」を意識して、それにふさわしいエンタテインメントを実現しようと準備を重ねてきたので、ぜひ参加してみてください。
ーーLDHアーティストの方々にインタビューをしていると、すごく組織というものを意識していると感じます。アーティストが組織を意識することの強みはなんでしょうか?
HIRO:LDHは、人と人との繋がりをとても大事にしています。人々が繋がって輪となり、その輪を意識することで視野も広がりますし、個人としてもより大きなことにチャレンジしやすい環境や状況を作りやすいのかなと。チームの力を使うことによって個人的な夢もより大きいスケールで叶っていくものだと考えています。だからこそ、若いメンバーには仲間の夢を大切にしてほしいと伝えています。若いメンバーにとっては頭では理解していても現実的ではないかもしれないですが……。僕自身がこの世界で様々な経験や体験を繰り返して得た知恵でもありますので、その財産を世代は違いますがLDHの仲間達にはしっかりと伝えていきたいと思います。自分も若い頃はずいぶんと勘違いをしていましたが(笑)。でも、この世界で30年を過ごして振り返ると、LDHがここまで成長できて、僕自身が様々な夢を叶えることができたのは、自分にはない力を持ったメンバーやスタッフ、そしてファンの皆さんといった周囲の方々のおかげです。メンバー同士で夢を語り合い、お互いのために行動するーーそのチームワークこそが、我々の強みなのだと思います。若いメンバーには「LDH PERFECT YEAR 2020」の体験を通して、組織の強みや仲間の大切さを感じてもらい、“輪の力”を使いこなしてそれぞれの夢をどんどん叶えていってほしいです。
ーー「LDH PERFECT YEAR 2020」の一環として、『LDH PERFECT AUDITION』も開催されます。LDHではなぜ、オーディションを重視しているのでしょう?
HIRO:僕自身が新しい才能を求めているということ以上に、成長したLDH所属のアーティストやメンバーの新たな夢を応援するプロジェクト、という意味が強いかもしれません。今のLDHに所属しているみんなの中には、アーティストや表現者として成熟する一方で、新たに若手を育てたり、自身のプロジェクトを始動したいという次の夢を抱いている人が少なくありません。そのチャレンジの機会を設けるのが、彼らへのリスペクトでもあり、LDHが未来に繋がっていくために今、準備すべきことだと考えています。それぞれが自分で見出した才能と、また新しい仲間の輪を作っていくイメージです。様々な経験をしてきましたが、新しい夢を掴むためには新しい風を吹かせることがとても大切で。エンタテインメントとしてお祭り感を演出するというか……。新しい風を吹かせることで、人々の関心が向きやすくもなりますし、そういったことを繰り返して、EXILEは結成から20年近く経った今もドームでのライブが開催できています。今回参加するそれぞれのプロジェクトにお祭り感が出て、キャリアの長いグループやメンバーも今回のオーディションを通じてさらに盛り上がることを期待しています。
ーー『LDH PERFECT AUDITION』は、上の世代のメンバーが次のステージに進むための取り組みでもあると。
HIRO:LDH全体にとっても、これは重要な布石になると考えています。自分の後継者というとおこがましいかもしれませんが、上の世代のメンバーがリーダーシップを発揮して自ら引っ張って行く立場になってこそ、さらに新しいステージが拓けると感じています。そのためにも、今後はEXILE TRIBEやJr.EXILEのリーダーの役割を担うメンバーも決めていきたいと思っています。各チームももちろんですが、各チームの輪からさらに視野を広げて、EXILE TRIBEの輪、Jr.EXILEの輪を意識することでLDHの輪をリアルに感じることができますし、その輪を意識しながら物事を進めていくことで本当に強いチーム力が若い世代にまで浸透していくと思います。ここ数年、僕自身がメンバー達と現場にいる時間が少なくなってきているので、直接メンバーと共有する時間も以前より大分減ってしまいました。僕自身から発信される今のLDHの熱さ、ビジョン、戦略などを直接肌で感じる場面が少なくなったのも現実なので、僕が各リーダーに、LDHのビジョンやリーダーとしてのあり方、今まで現場で僕自身が直接発信してきたことを伝えて、僕と現場にいるメンバーとの通訳的役割になってほしいな……と。今後はメンバー一人ひとりに様々な場面で直接伝えていくことももちろんですが、リーダーとなる人達を徹底的に鍛えて育成し、リーダーたちに率先して各チームを引っ張っていってもらいたいと思っています。
■次の「PERFECT YEAR」までには、僕がいなくても大丈夫なLDHに
ーー日本のエンタテインメント業界にとって、2020年はどのような年になると見ていますか。
HIRO:日本が世界から注目される年なので、エンタメ業界にとっても大きなチャンスだと捉えています。自分たちにできることは、しっかりやっていきたいです。もともとLDHは2017年からそれまでの海外展開を整理してLDH USA、LDH ASIA、LDH EUROPEを作り、各支社で様々なチャレンジをしてきました。実際に色々な施策を行って、自分たちの強みだったり、逆に足りない部分を学べたので、その経験を活かしていきたいとは思います。ただ、あまり気張るのではなく、今まで通りのペースで地に足の着いた活動を続けていければ、自ずと良い形で色々なことが実現していくのかなと。日本のエンタテインメントは、これまで国内だけで成立するほど成熟した市場がありますが、だからこそ輸出するのが難しい面もありました。今後は少子化で市場が縮小していくのは間違いなく、そうなるとスケールの大きなエンタテインメントが日本市場だけでは生み出せなくなる可能性もあるので、遅かれ早かれ新たに海外市場を開拓していく必要があるとは思います。それは直接海外で活動するという発想だけではなく、日本にいてもまだまだ取り組むべきこともありますし、市場の広げ方も時代を意識して本末転倒にならないように効率よく行動していきたいと思います。もちろん、これまで支えてくれたファンの方々に楽しんでもらうことが基本にあるので、その期待にはしっかりと応えつつ、より広い視野で新しいエンタテインメントを創造していきたいです。
ーー日本発のエンタテインメントだと、やはりアニメが先んじて世界に受け入れられている印象です。
HIRO:Jr.EXILE世代による『BATTLE OF TOKYO』のプロジェクトは、まさにCGやアニメと生のパフォーマンスを融合するコンテンツにしていきたいと考えています。アニメやゲームなどのエンタテインメントに関しては、LDHではm-floの☆TAKU君が早くから大きな可能性を見出していて、ロサンゼルスの『Anime Expo』というアニメコンペディションで『OTAQUEST LIVE』というイベントを開催するなどしています。生身の人間が歌やダンスで夢を叶えていく姿を見せるという、これまでのLDHのエンタテインメントを中心に置きつつその軸を太く強くしていくのはもちろん、最新のテクノロジーを駆使して新しいものを生み出し、LDHの新しいエンタテインメントの軸として創造することも現在の課題の一つで。また、その延長線上にもマーケットの拡大があると見ています。
ーー新しい試みでいうと、TETSUYAさんが学長になる「EXPG高等学院」の開校も4月に控えています。
HIRO:ダンスを通じて教育や社会貢献に携わるという試みは、ÜSAやTETSUYAがずっと力を入れてきたことで、それが一つの成果として形になったのが「EXPG高等学院」だと思います。僕らにとってEXPG STUDIOはとても大切な場所で、そこからGENERATIONSをはじめとした次世代のアーティストが次々と生まれています。今回、学校法人角川ドワンゴ学園N高等学校との提携で、高校卒業の資格が取れる「EXPG高等学院」が開校することで、さらに本格的に教育に携わることができるようになりますので、大きな喜びとともに責任も感じています。ようやくスタートラインに立てたというところですが、いずれは表現者の育成だけではなくエンタテインメント・ビジネスの全てが学べる学校にしていきたいですし、卒業生たちがエンタテインメント業界の表と裏、表現者とスタッフとして両面で次の時代のLDHを創り上げていくような仕組みが作れたらとても嬉しいです。
ーーEXPG STUDIOの生徒の皆さんを見ていると、一生懸命に働いている大人の姿を近くで見ることは、教育の上でもすごく良いことなのだと感じます。
HIRO:EXPG STUDIOの生徒は、普段から憧れの人を近くに感じていて、自分も夢を叶えたいと思っているからこそ、自然と良い生徒になろうとするのでしょうね。あまりの礼儀正しさに、僕が驚くこともあります(笑)。
ーー改めて、LDHがテーマとして掲げている「Love, Dream, Happiness」についても教えてください。この3つは人間、誰しもが求めるものですが、その解釈は多様です。
HIRO:僕たちは綺麗事ではなく、リアルな「Love, Dream, Happiness」とは何かを常に問うようにしています。基本的に、その人の等身大の愛や夢や幸せを追求して、一生懸命に頑張っていけば良いと思うのですが、どれも実現するにはパワーが必要だし、そのためにはビジネスにおいてもある程度は成功しなければいけないし、テーマとして掲げる以上、説得力のある自分にならなければいけません。そういう意味で「Love, Dream, Happiness」は、いつだって自分たちに何かを気付かせてくれるワードであり、全世界で通じる究極の理念だとも思います。10代にとっての「Love, Dream, Happiness」と40代にとっての「Love, Dream, Happiness」は違うかもしれないけれど、それぞれが心の中にそのテーマを掲げていることが、LDHの強さになっているのは間違いないはずです。それに「PERFECT YEAR」というネーミングもそうですけれど、こういうストレートな言葉は真面目に言ったもの勝ちというか、恥ずかしがらずに真剣に取り組んでいけば「やっぱりそうだよな」というところに行き着くんです。僕たちは本当に小さな事務所からスタートしたので、色々な人に知ってもらうために、ストレートでわかりやすい表現を心がけてきました。また、そのようなことの繰り返しでイメージやLDHブランドを確立してきたので世間のイメージが固定してしまった部分もあると思いますが、2020年以降はそのイメージを良い意味で覆して「LDHって本当はこういう企業だったんだ」とLDHの本質を沢山の人達に感じてもらえるように頑張っていきたいです。
ーー最後にHIROさん自身の今の夢も聞かせてください。
HIRO:正直なところ、今は個人的な夢というよりメンバー一人ひとりの表現者としてのブランド価値を高めて、さらなる夢を叶えてもらうこと。そして、上の世代のメンバーのセカンドキャリアや新しい夢が叶うように準備すること。それに尽きると思いますし、その想いが自分自身の今の仕事に対しての原動力になっています。綺麗事ではなく、どうやって夢を叶え続けてしっかりと食べていけるのか、改めて夢を現実的に見極めていきたいです。今をしっかりと務めることで、未来のLDHのあり方が見えてくると思いますし、そんな強い組織を作れたら僕個人としては、一度僕のキャリアをセーブしてリセット。0から今までの知識や知恵で自分のエンタテインメントの表現を追求してみたいという夢はあります(笑)。最近、若い頃に好きだった映画を改めて観ることにハマっていて、昨年末に『ゴッドファーザー』を観たんですけれど、昔観たときの感覚とは全然違って、若い時とは全く違う感覚でめちゃくちゃ感銘を受けたんです。将来的にはああいう濃密な作品を手がけてみたいという欲求は、やっぱりあります。ないものねだりだと思うんですけれど、LDHのことをずっと考えて突っ走ってきて、こうして50歳になってみると、やり残したことも色々とあるなと。次の「PERFECT YEAR」までには、僕がいなくても大丈夫なLDHにしたいです(笑)。