ボナール、ヴァロットンら、ナビ派が描く子どもたち 「画家が見たこども展」が開幕
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三菱一号館美術館では『開館10周年記念 画家が見たこども展 ゴッホ、ボナール、ヴュイヤール、ドニ、ヴァロットン』が、6月7日(日)まで開催されている。
19世紀末にパリで起こった芸術運動のグループ、ナビ派。親密さや素朴さを追求したナビ派の画家たちにとって、「子ども」は最も身近でいて深遠な芸術のインスピレーションの源になった。
同展では、そんなナビ派の画家を中心に、画家たちが見た「子ども」の姿を、油彩・版画・素描・挿絵本・写真など約100点を通して展覧することができる。
ナビ派の中でもボナール、ヴュイヤール、ドニ、ヴァロットンに焦点を当て、フランス、ル・カネにあるボナール美術館全面協力のもと、三菱一号館美術館をはじめ国内外の美術館が所蔵する作品を展示。加えて、日本では滅多に見ることのできない欧米の個人コレクター所蔵品も並ぶ。
展覧会は、プロローグ「子どもの誕生」から始まり、「路上の光景、散策する人々」「都市の公園と家庭の庭」「家族の情景」「挿画と物語、写真」、そしてエピローグ「永遠の子ども時代」の全6章で構成。
プロローグ「子どもの誕生」では、ポール・ゴーガンやフィンセント・ファン・ゴッホらの作品を紹介。19世紀以前まで重要視されていなかった「子ども」を画題としてとりあげ、力強い色彩や単純化された素朴な表現で描き出した作品は、その後に続くナビ派の画家たちに大きな影響を与えた。
ナビ派の中でも最も日本美術に影響を受けたというピエール・ボナール(1867〜1947)は、4枚のリトグラフを屏風仕立てにした《乳母たちの散歩、辻馬車の列》で、街中で遊ぶ子どもたちの姿を描いた。また、妹夫婦の子どもたちを好んでモデルとし、幸福な家族の情景を描いたり、子どもの挿絵本なども手がけたりしている。
生涯独身で子どものいなかったエドゥアール・ヴュイヤール(1868〜1940)は、パリの街中にいる子どもや公園で遊ぶ子どもたちをモチーフとして取り入れたほか、姉夫婦の娘がいる親密な室内の光景を度々描いた。
フェリックス・ヴァロットン(1865〜1925)は、公園で遊ぶ子どもたちを観察して描いたほか、パリの街をモティーフにした木版画にしばしば子どもが登場。ヴァロットンらしく、子どものシニカルな面も捉えている。
ボナール、ヴュイヤール、ヴァロットンの3人には自身の子どもはいなかったが、モーリス・ドニ(1870〜1943)は9人の子どもに恵まれ、子どもたちの肖像を理想化された家族の光景として描いた。また、子どもたちの活動にも関心を抱き、塗り絵アルバムや楽譜の挿絵、物語の挿絵本なども手がけている。
4人の画家以外にも、やわらかな色彩で少女を描いたアリスティード・マイヨールや、ピクニックに興じる少女たちを美しく描いたアルフレド・ミュラー、「彫刻家のナビ」と言われ、長女の肖像を手がけたジョルジュ・ラコンブらの作品も見ることができる。
そしてエピローグ「永遠の子ども時代」では、ボナールの晩年にフォーカスし、純粋な子どもの魂へ回帰したような自由闊達な作品を紹介。ボナールの描く「子どもの世界」の到達点を見ることができる。
街路や公園、家庭の室内など、日常の風景の中でさまざまな姿を見せる子どもたち。ナビ派の画家たちが多様な眼差しで捉えた「子どもの世界」を味わってみてほしい。
【開催情報】
『開館10周年記念 画家が見たこども展 ゴッホ、ボナール、ヴュイヤール、ドニ、ヴァロットン』6月7日(日)まで三菱一号館美術館にて開催
【関連リンク】三菱一号館美術館
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