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謎解きからアクションまで 『シロクロ』は『あな番』以降の日曜ドラマの魅力を凝縮

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 清野菜名と横浜流星という二大アクションスターによるアクションシーンや、突飛な設定、誰が黒幕か分からない日曜ドラマ『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』(読売テレビ・日本テレビ系、以下『シロクロ』)。以前もこの枠では、『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(以下、『3年A組』)、『あなたの番です』(以下、『あな番』)、『ニッポンノワール-刑事Yの反乱-』(以下、『ニッポンノワール 』)など注目作品が並ぶ中、今作も回を追うごとにさらに謎が深る『シロクロ』にはどんな魅力があるのか、日曜ドラマの過去作と比較して考察してみたい。

参考:【ほか場面写真多数】清野の手を握る横浜

 日本テレビ系列で毎週日曜日22:30から23:25に放送されている「日曜ドラマ」は2015年に新設され、これまで日本テレビが持っていた、女性向けの水曜ドラマ、ファミリー層向けの土曜ドラマがあり、配信や映画、舞台への派生などのストックコンテンツであるドラマを充実させたい考えから、「映画ファンも楽しめるエンターテインメント」をコンセプトに立ち上げた第3のドラマ枠。

 2019年に入り日曜ドラマが注目されるきっかけとなった『3年A組』は、菅田将暉演じる高校の担任教師が、クラス全員を人質に教室に立てこもり、生徒のイジメ問題を通して人のあり方について訴えた学園ミステリー。なぜ教師が異常な犯行に及んだのか、そしてイジメの実行犯探しを通じ、身近な社会問題であるSNSにおける無責任な声に対し、その関わり方についてテレビの向こう側に訴え、特に一番の当事者である若い層の間で話題となりSNSで拡散、今の日曜ドラマの人気に繋がっている。『シロクロ』でも動画サイトで発信されるミスパンダの行動に様々な声がネット上を飛び交い、シロとクロの審判も投票で決める場面も出てくるが、『3年A組』で問題定義したものが『シロクロ』では社会制裁としてさらにエンターテインメント化しているところが色々と考えさせられる。

 無邪気さにカモフラージュされたミスパンダという存在を、アンチヒーローとして視聴者がどう捉えるか。またコアラ男の誘拐事件も、そうした世論が同情するように仕組まれた罠だと考えると、「踊らされる人たち」という意味では、根底にあるテーマは似ているのかも知れない。また、いつもはひ弱なダメ教師を演じる菅田が、特撮ドラマばりのアクションを見せるギャップの格好良さも反響を呼んだ。こうした謎解き、社会的制裁、そして本格アクションという構成が、『シロクロ』でも引き継がれている。

 『あな番』は、マンションの住民会で起きる「交換殺人ゲーム」の謎解きと真犯人を追求していく。最近では珍しい2クールあるドラマだけに、多くの登場人物の考察ができる面白さと、1クールの最後に主人公の妻が殺されるなど衝撃的な展開に、SNS上では考察ブームが巻き起こった。真実が暴かれていくごとに主人公が辛い現実と向き合う、この展開は『シロクロ』でも今後の鍵となるだろう。また、横浜が2クール目からマンションに入居してきた大学院生として登場。主人公の翔太(田中圭)の相棒となり、AIを駆使し謎を解いて行くのだが、人見知りで謎の行動も多く、純粋な男なのかサイコパスなのか分からないキャラで、一瞬だけ見せた敵を一掃する空手の達人ぶりに彼の背景の謎がさらに深まった。おそらく横浜の特性を活かしたいためのシーンだったのだろう。このドラマに出演したことで、横浜が空手の猛者でアクション俳優としても認知されるきっかけに。このキャラが『シロクロ』の直輝役の過去と言っても不思議ではなく、チラ見せだったアクションが思う存分堪能できる。

 『ニッポンノワール』は、犯罪に巻き込まれるも記憶がない刑事が、次々と驚異的な事実に直面していく話で、前2作に比べSF的な要素があり、現実社会の常識では考えられない設定にしたことで考察ファンを混乱させ、これまでと差別化を計っていた。近年のドラマの中でもトップクラスのアクションが満載なのも特徴的で、SFチックな分、魅せるアクションで楽しませ、そして最後は特撮映画の世界となり視聴者を驚かせた。このドラマを挟んだことにより日曜ドラマがシフトチェンジしたことで、いつ『シロクロ』の展開が現実離れしてもおかしくない。また、『3年A組』と世界観を共有し、出演者が同じ役で登場したことでも話題となるが、『シロクロ』には『あな番』で共演した田中圭も横浜の父親役として友情出演し、「日曜ドラマティックユニバース」ができつつあるのも面白い。

 『シロクロ』は、『あな番』以降の日曜ドラマの魅力を凝縮したような作品だということが系譜を知ると分かる。それを踏まえた上で、表向きは可愛い女性ヒーローものにしたというエンターテインメントの面白さと、究明しようとしている真実は果たして主人公を幸せにするのか分からない、でも視聴者は真実を知りたい、そのダークヒーロー特有の葛藤が『シロクロ』の面白さだと思う。また、たとえ主人公のやり方が間違っていても、テレビ離れの原因ともなっているコンプライアンスやSNS上での反響にあえて挑む制作側の姿勢が、今の日曜ドラマが愛される理由ではないだろうか。 (文=本 手)