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映画のうんちく、バックボーンにも着目
植草 信和
フリー編集者(元キネマ旬報編集長)
グレース・オブ・ゴッド 告発の時
20/7/17(金)
ヒューマントラストシネマ渋谷
新聞記者たちがカトリック教会の神父による幼児性的虐待を暴いた『スポットライト 世紀のスクープ』(第88回アカデミー賞作品賞と脚本賞を受賞)は実にショッキングな映画だった。 『スポットライト』はボストンで起きた事件だったが、本作『グレース・オブ・ゴッド』はフランス。現在も裁判が進行中の「プレナ神父事件」を題材にしている点が生々しく、『スポットライト』以上に衝撃的だ。 妻と子供たちと共にリヨンに住むアレクサンドルは、幼少期に自分を性的虐待したプレナ神父が今でも子供たちに聖書を教えていることを知り、過去の出来事の告発を決意する。 一人の勇気ある告発者から端を発し、結果的に80人以上もの被害者が名乗りをあげる。そして、プレナ神父が教区を変えながら長年にわたって少年たちに性的暴力を働いていたという驚くべき事実が白日の下にさらされる。 フランスのみならずヨーロッパを震撼させたこの衝撃の事件に挑んだのは、『スイミング・プール』『婚約者の友人』などスタイリッシュな映像で常に映画ファンを魅了し続けるフランソワ・オゾン監督。ベルリン国際映画祭では銀熊賞を受賞した今作は、オゾン初の事実を元にした社会派ドラマだ。 しかし、聖職者や学校の先生にはなぜこうも“変態性欲者”が多いのだろうか。
20/7/13(月)