1995年3月20日に起きた、オウム真理教、地下鉄サリン事件。その被害者のひとりで今も後遺症に苦しむ、さかはらあつし監督が、オウム(現Aleph)幹部、広報部長の荒木浩に対面する。
偶然にも同郷のふたりは、一緒に故郷を訪れながら対話を交わす。まるで友人同士のようだが、そこには決して消えない緊張感が漂っている。無邪気に小石投げをして遊んだかと思えば、監督は後遺症の苦しみを語り、胸に溜った質問をぶつける。その問いに、たびたび言葉を失う荒木。
シンプルな作りだが、ふたりの表情、荒木の言葉を追うだけでぐいぐいと引き込まれる。ここには大きな闇、理解できない思考回路があるからだ。だがそうなった理由はおそらく、さまざまな偶然の連鎖であり、誰にでも起こるものではないとは断言できない。そこが恐ろしい。
忘れてはならない事件の記憶とともに、大きな余韻をもたらす作品。