ブラックバード 家族が家族であるうちに
『ブラックバード 家族が家族であるうちに』 (C)2019 BLACK BIRD PRODUCTIONS, INC ALL RIGHTS RESERVED
自分自身、あるいは家族が治る見込みのない病気で、その後も苦しみ続けるとしたら、どうすればいいのか。生きるべきか、死ぬべきか。それは答えの出ない問いだ。自分自身なら尊厳死を選ぶかもしれないが、家族を看取ることは苦しすぎる。矛盾した考えになってしまうが、どんな形であれ、家族には生きていて欲しい、と思ってしまう。
本作は、母リリー(スーザン・サランドン)が尊厳死を選び、同意した家族たちが最後の日々を過ごそうと集まったことから始まる。夫(サム・ニール)、娘のジェニファー(ケイト・ウィンスレット)、アナ(ミア・ワシコウスカ)とその家族、学生時代からの大親友で家族同然のリズ(リンゼイ・ダンカン)。リリーは家族や親友に囲まれた生涯を幸せに感じ、最期の別れを告げる。しかし、納得ずくの尊厳死だったはずだが、ある出来事を契機に、家族の決心が揺らいでいく……。
舞台は海辺の邸宅のみだが、それを飽きずに見せ切るのはサランドンを始めとする演技巧者の力量だ。『デッドマン・ウォーキング』(95)でアカデミー賞主演女優賞のサランドンと、『愛を読むひと』(08)でアカデミー賞主演女優賞のウインスレットが初共演。
監督は『ノッティングヒルの恋人』(99)、『恋とニュースのつくり方』(10)のロジャー・ミッシェル。撮影はほぼ順撮りだったそうで、その演出効果も大きいのだろう。デンマークの巨匠ビレ・アウグスト監督の日本未公開作(『サイレント・ハート』)のリメイクということだが、こちらも観てみたい。親の介護を考える世代の方に。