オークションで高額落札されたとたんに、作品シュレッダーで切り刻まれるという衝撃のニュース以来、日本でも一気に知名度があがった感のあるナゾの覆面アーティスト、バンクシー。
本展は、プライベートコレクター秘蔵の彼のオリジナル作品約60点に加えて、世界各国に分散するバンクシーのストリートアートを、テレビ局の美術チームがリアルに甦らせた再現展示が見どころだ。
なぜ再現展示が有効かというと、バンクシーの表現手段である「グラフィティ」は、違法な落書きであるがゆえに、作品が消されたり、撤去されたり、上書きされるなどして、描かれた当初の姿で残っているものは数少ないから。シュレッダーにかけられたあの有名な「Girl with Balloon」(ハート型の風船に手を差し伸べる少女の図)も、かつてはロンドンの各所に描かれていたが、現在残っているものはないという。
というわけで、バンクシーのグラフィティがどんな場所に描かれたのか、周囲の環境も含めて再現された展示は、やはり見ておく価値がある。手榴弾の代わりに花を投げる《Flower Thrower》なんて、パレスチナのガソリンスタンドの壁にデカデカと描かれたものですからね。ぜひ会場で、5mの壁面を仰ぎみて、本当のスケール感を実感してください。
ちなみにこの再現展示ゾーンのパネル解説は、私が担当させていただきました。テキストは図録にも収録されていますが、ぜひ、展示とともにお楽しみあれ!