南米アマゾンに住むシュアール族とともに過ごした人類学者が制作したドキュメンタリー。冒頭いきなり、部族の女性が口かみ酒をつくるシーンから始まってドキリとする。
そこから始まる物語は、ドキュメンタリーにありがちな“アマゾンの朝は早い……”みたいなステレオタイプな映像とはまったく異なっていて斬新きわまりない。シュアール族の人々はどのように原生林を歩き、屋根を葺く大きな葉をどのように収穫し、口かみ酒をどのように運びどのように飲み、火をどう起こしどう調理するのかといった、きわめて細かく詳細なデテールに満ちている。アマゾンの映像は無数に撮られているが、これほどまでにミクロな視点で描かれた作品は過去に例がないのではないだろうか。
そして本作はそこから、シュアール族の叡智や幻覚や覚醒など精神世界の中へと足を踏みいれていく。そこにもミクロでリアルな視点はつねに保たれていて、それはまるでガルシア・マルケスの文学のマジックリアリズムを映像化したような感覚も持っている。これまでに観たことのないようなドキュメンタリーであることは間違いなく、最後まで食い入るように鑑賞した。