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映画から自分の心を探る学びを
伊藤 さとり
映画パーソナリティ(評論・心理カウンセラー)
PLAN 75
22/6/17(金)
新宿ピカデリー
カンヌ国際映画祭でカメラドール (新人監督賞)に準じるスペシャル・メンションに輝いた早川千絵監督の長編映画デビュー作は、是枝裕和監督が総合監修を務めたオムニバス映画『十年 Ten Years Japan』(2018)の一編『PLAN75』のキャストを一新し、物語を再構築したもの。 倍賞千恵子扮する夫を亡くし子を持たない78歳のミチが、75歳以上の高齢者は自らの最期を選ぶ権利を持てる新制度によって人生の終い方について模索。 冒頭、2016年に起こった相模原障害者施設殺傷事件を彷彿させる言葉を吐く登場人物。高齢化社会においての社会の無関心に警鐘を鳴らす本作は、短編で描けなかった「元気な高齢者に不寛容な社会」について問う作品に。 登場人物の状況をセリフで説明せずに、日常を描くことで観客に想像させるアプローチは映画の力を信じたゆえ。だからこそワンカット、ワンカットが美しい。 さらに若者と高齢者との繋がりの重要さに気づかされる物語になっており、主人公ミチと電話越しで繋がるコールセンタースタッフには、近年の映画で毎回、違う表情を見せる河合優実、市役所職員には若くしてすでに実力が証明されている磯村勇斗と化学反応を生み出すキャスティング。年齢で命の線引きをする危険性にも気づかされる。
22/6/7(火)