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現代最良の映画作家。それがホン・サンスである。 かつてピカソに青の時代や薔薇の時代があったように、いま彼はモノクロームの時代を生きている。監督第3作ではやくも黒白(こくびゃく)映画を撮ったとはいえ、この監督は決して頻繁に黒白を手がけていたわけではなかった。だが『それから』以降急速に光と影の織りなす世界へと接近している。 近年はカラー映画でも、モノクロームの印象を与えるときがある。傑作『逃げた女』はまさにそうだった。淡く枯れた味わいが、格別の余韻を与えてくれた。 今回はストレートな黒白映画なのだが、実に蒼い。ズバリ、青春映画である。 モノクロームの青春映画。だが、ホン・サンスがノスタルジーに耽溺するはずもない。 全3章形式。ある青年の“いま”に、ただ向き合う。3つのエピソードは時系列の入れ替えが可能だ。パズルのように組み立てることだってできる。だが、そこに本質があるわけではない。 それぞれの逸話で、抱擁が描かれる。その抱擁のありように、主人公のアイデンティティがある。このアイデンティティが、青春のシンパシーとなり、映画とわたしたちのシンクロニシティとなる。 雪の中の煙草。 寒空の下の海。 人間が風景となり、景色が生命となる。 そんな光景を、モノクローム時代のホン・サンスは創りあげる。 またしても、名作。しかも、可憐なたたずまいの、これは名画である。