75歳以上のお年寄りに自ら生死を選ばせる制度“プラン75”が施行された近未来の日本。ホテルの清掃員として働くミチは、ある日、高齢を理由に解雇されてしまいます。住む場所も失いそうになった彼女は、その制度の申請を検討。 一方、役所でその申請を一手に引き受ける公務員のヒロムなどの若者たちは、なんの疑問もなくお年寄りからの申込みを処理する日々。ところがあるきっかけで、その制度自体に疑問を持ち始めます。 こんな制度があっては絶対にいけないし、そもそもそれを描きたいわけではない作品ですよ。でもね……怖いこと聞いちゃったんですよ。これを観た人の中に「この制度があった方がいいんじゃないか」って言う人がいたって……。 それも、ひとりやふたりじゃない話。それ、絶対に間違ってますし、この作品の本質を見逃しているんですよ。この作品で描いているのは、そんな悪法がまかりとおってしまい、その状況に慣らされて無関心だった人々への批判です。 日本って、とにかく「他人に迷惑をかけたくない」という気持ちが先に走っている人が多いと思うんです。確かに他人に迷惑かけるのは最悪。でも、それがどうして死ぬことにつながる？　しかもそれを国が推奨してるってことは、国のために死ぬってこと？　まったくもってナンセンスですよね。 75歳で現役バリバリなんて人、当たり前の世の中だからこそ、歳を重ねた人はその見識を若い人に活用してもらい、若い人はそれを敬う世の中であるべきなのに。 表面的なことだけでとらえるのではなく、この物語のような世界にならないためになにが必要か、なにが今足りてないから「この制度が必要なのでは？」と考える人が出てくるのか、深く考えてもらいたいです。

22/7/10(日)