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水先案内人のおすすめ

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ユニークな選択眼!

春日 太一

映画史・時代劇研究家

ボイリング・ポイント/沸騰

ロンドンの高級レストランを舞台に、一夜のドタバタした様子がスリリングに描かれている。 全シーンをワンカット&ワンショットで撮影しており、これが効果的。生放送のように映し出されることで、悪いことが重なり緊張が走り続ける店内の、ピリピリした空気を臨場感たっぷりに伝えていた。 小さいけども厄介なトラブルの数々を、目一杯に詰め込み、てんやわんやの騒動が展開されていく。 開店前から保健所の衛生管理官には評価を下げられるわ、食材は揃わないわ、それでいて大量の予約は殺到しているわ。しかも開店したらしたで、来るのはクセの強い客たちばかり。 この困難に立ち向かうスタッフもバラバラ。キッチンは言い合いばかりだし、料理人とホール担当者は対立。しかも、さまざまな人種で構成されているため、コミュニケーションが通じにくい。これで高級店として大丈夫かと心配になるくらい、レベルの低いスタッフも多い。技量や経験が不足していたり、サボり癖があったり。 その上に、リーダーとして引っ張らなければならない主人公のシェフも家族のトラブルを抱えて、気もそぞろでミスばかり。 ……といった具合に、ワンシチュエーションで濃密に醸成された群像模様が、怒涛の勢いで展開されていく。そのサスペンスフルで緻密なドラマ構成は、さながらシリアス版の三谷幸喜演劇。 一秒たりとも目が離せなかった。

22/7/15(金)

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