観たシーンを次の瞬間から見事に忘れてしまう映画がある。次から次へと予測不能の衝撃的なシーンが続き、意識がひたすら前へ前へと向かうからだ。
本作はまさにその代表例だろう。どんな展開が待ち受けるのか、まったく予想がつかない。ジェットコースターにシートベルトを着けずに乗っているようなスリルとスピード感。観終わった後、心地よい放心状態に陥った。
舞台は日本。殺し屋レディバグ(ブラッド・ピット)はマリア(サンドラ・ブロック)から指示を受け、ブリーフケースを奪うために東京発の超高速列車ゆかり号に乗り込む。すぐに目当ての品は見つかり、次の停車駅の品川で降りようとするが…。京都に向かって超高速で走る車両の中で次々に発生するトラブル、そして殺人。二人組の殺し屋タンジェリンとレモン、メキシコで一番の殺し屋ウルフ、猛毒を使う暗殺者ホーネット、謎の女子学生プリンスなど一癖ある登場人物が織りなすコミカルなやり取りに笑いながらも、すさまじい暴力シーンに圧倒される。剣の達人役の真田広之の存在感も大きい。
東北に向かう設定だった伊坂幸太郎のベストセラー『マリアビートル』を大胆に翻案。ハリウッドらしい派手なアクション大作だ。