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注目すべき女優の1本を
細谷 美香
映画ライター
スワンソング
22/8/26(金)
シネスイッチ銀座
引退したヘアメイクドレッサーが、穏やかだけれど退屈な日々が続く老人ホームを抜け出して、亡き親友に死化粧を施すためにかつて暮らした小さな街へ。ウド・キアーは大きな宝石がついた指輪をつける仕草だけで、人生最後の仕事への覚悟を鮮やかに伝えてくれます。グレーのスウェットにスニーカーだったパットが、自分の足で街を歩き、帽子やスーツを手に入れてカラフルに着飾っていく場面の狭間で明かされていくのは、愛する人との別れや彼の過去。顧客たちを美しくすることで自尊心を与えていたパットの仕事ぶりに、胸がじんわりと熱くなるエピソードもあります。 昔とは違うゲイコミュニティへのノスタルジーを感じさせながらも、パットは頑なな老人ではなく、足取りも重くはありません。ウド・キアーの名演を味わい尽くしながら、どう過去と向き合い最後を迎えるべきなのか、人生の仕舞い方を教えてもらえる作品です。
22/9/3(土)