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水先案内人のおすすめ

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夏目 深雪

著述・編集業

響け!情熱のムリダンガム

18年の東京国際映画祭で『世界はリズムで満ちている』のタイトルで上映された作品だが、実は当時予備審査員をしていた私が大推薦した作品だった。予備審査で一度観てしまうと英語字幕のみとはいえ、再見するのは珍しいのだが、この作品は会期中に大スクリーンでムリダンガムの演奏を堪能した。 打楽器ムリダンガム職人を父に持つピーターはスターの追っかけに夢中。ある日、ムリダンガム奏者の巨匠アイヤルの演奏を聞き感動し、弟子入りを願うが楽器職人は卑しいカーストでアイヤルの弟子たちに一蹴される。めげずに通い続け、ついに弟子入りを果たしたピーターだったが……。 まずそれぞれのキャラが立っていて魅力的。カーストや因習などと闘う主人公が、音楽に目覚めるまではパッとしない普通の青年なのがいい。アイヤルもピーターに弟子入りを許すなど寛容なところもあるが、頑固さで一度はピーターと決裂する。ピーターを陥れようと画策する悪役のヴィニートの変化も注目してほしい。 何よりも、映画祭時タイトルでもある「世界はリズムで満ちている」という世界観がいい。リズムにカーストも因習も関係ないので、ピーターのサクセスストーリーは理に適っているわけだ。ピーターがムリダンガムを叩き始めた途端、リズムは勝手に世界の色を変え、加速し、様々な人や物と共鳴する。その世界観をA・R・ラフマーンの音楽が体現する。ラストの聴衆を熱狂の渦に巻き込むピーターの演奏は必見!

22/10/3(月)

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