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水先案内人のおすすめ

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夏目 深雪

著述・編集業

夜明けまでバス停で

高橋伴明が実際にあった、バス停で夜を明かしていたホームレスの女性が男に襲われ死亡した事件をペースに映画化した。インスパイアされ撮ったと言った方が正確だろうか。本当の被害者像なんて本人を知っているのでない限り分からないだろうけど、板谷由夏演じる三知子は弱きを助け強きに歯向かうしっかりした女性で、コロナ禍や実家との折り合い、別れた旦那の残した借金など複数の要因によってなし崩し的にホームレスになってしまう。そしてしっかり者故、知人や友人に助けを求めることができない。 石井裕也監督の『茜色に焼かれる』でもコロナ禍によって追い詰められ風俗で働かざるを得なくなった女性が描かれた。リアリティはあるのかもしれないが、女性が見るとつらい設定であることも確かである。この映画が決して明るい題材ではないのに爽快感があるのは、ヒロインが観客が「自分も一歩間違えばこうなるかも……」という絶妙な設定であること。また、パワハラやセクハラと闘う「今時の女性」が等身大で描かれるからだろう。 ホームレスになってからの板谷が顔も恰好も綺麗すぎるなどの難点はあるが、事件とは違う結末やセクハラ上司に三浦貴大、革命家崩れのホームレスに柄本明など豪華な男優たちの使い倒しも小気味よく、この題材でこんな爽快感のある映画を撮ってしまう高橋監督の手腕に唸らされた。

22/10/8(土)

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